3その1

フィールドエッジ
って何?・その1
AIが守ってくれる、
私たちの生活

三菱電機エンジニアリング株式会社 小林基彦

異常気象やゲリラ豪雨。他人事ではなくなった洪水被害への対策。そんな「きょうの水防」のために開発されたのが「フィールドエッジ」。水防にAI?ちょっと不思議な組み合わせだけど、どんなつながりがあるの?三菱電機エンジニアリング株式会社の小林基彦氏が優しく説明してくれました。

今回お話を伺った方

三菱電機エンジニアリング株式会社 メディアシステム事業所 郡山支所社会空間ICT課長 小林 基彦

小林 基彦

  • 三菱電機エンジニアリング株式会社
  • メディアシステム事業所 郡山支所
  • 社会空間ICT課長

1 フィールドエッジ
とは?

フィールドエッジとはどんなシステムですか

ひと言でいえば「AIによる監視システム」ですが、相手は私たち人間ではなく、自然なんです。主に河川の監視画像から、その水位をリアルタイムに計測してくれるというものですね。

ここ数年、ニュースなどで「ゲリラ豪雨」という言葉を耳にする機会も増えたと思います。フィールドエッジはそういった異常気象や台風の影響によって変化してしまう河川の状態を、安全かつ確実に知らせてくれます。

私たちの生活や財産への被害を最小限に抑えるためには、早期の避難命令がなにより大切です。そのためには、従来と異なる方法で正確な情報を提供してくれるAIの力が必要だったんです。

従来の監視システムとは、どんな違いがありますか

これまでも河川水位を監視する装置というのはありましたが、それは河川の中に直接設置しなくてはならないタイプのもので、激しく河川が氾濫したときなどは、装置自体が流されてしまい計測ができなくなるなどの事象が起きていました。その点フィールドエッジは100メートル以上先までの河川状況を検知センサとAI技術によって見極めることもできる「非・接触型」です。堤防やポールにも固定できますし、設置場所の自由度がすごく高いんです。この差はとても大きいと思います。

フィールドエッジを安定した場所に設置できるということは、長期的に過去データを得られるということでもあります。ゆくゆくはそれを天候の情報などと連動すれば、未来予測の分野にも役立てるのではないかと思っています。

CHECK!

フィールドエッジは、AIによる監視システム。河川の監視画像から、その水位をリアルタイムに計測してくれる。

2 AIについて

AIはフィールドエッジの中でどのように働いていますか

フィールドエッジの機能には、三菱電機のAI技術「Maisart(マイサート)」が大きな役割を果たしています。人間でいえば、レンズのついた検知センサが「目」にあたる部分、黒い計測処理部が「脳」にあたる部分で、後者に「Maisart」が導入されているんですね。

「Maisart」は私たちが与えた膨大な量の「教師データ」を元に、自分で考え、結果を導く能力があります。もし風の影響などで検知センサが揺れてしまったりした場合も、AIが平常時の画像と比較することでデータを補正しますので、外乱に対して間違いの少ない安定した観測結果を連続的に弾き出してくれます。とても人間には真似のできない仕事です。

技術者から見たAI

これは私個人の発見であり驚きだったのですが、この製品に携わるまでのAIのイメージというのは、映画や小説の中に登場する「万能ロボット」というものだったんです。自分はフロッピーディスクや監視カメラを担当していた人間なので、AIは未知の領域。実際に向き合ってみると、「ロボット」のイメージは早くに覆されました。決して万能ではないし、なかなか結果を出してくれないことにギャップを感じましたね。でも、それは同時に「結果が出たときの喜びや発見が非常に大きい」ということでもありました。

フィールドエッジができるまでには、研究チーム一丸となった「教師データ」の収集や野外での実証試験というのを何度となく繰り返しました。机上の理屈だけで考えるのではなく、人間側がたくさんの経験を積まなければ、AIはよきパートナーにはなってくれません。AIの成長とともに、人間もいっしょに成長していかなくてはならなかったんです。

CHECK!

まだ「万能ロボット」ではないAI。よきパートナーになってもらうには、人間の成長も必要。

3 AIに学ばせる

どんな「教師データ」が使われていますか

具体的には全国10河川以上に検知センサを設置して、数万枚の画像を収集しました。私たちはAIに「それが水なのか、水でないのか」ということから教えていきました。

人間であれば、目の前に広がる風景が、川なのか、地面なのかというのは、これまでの経験から感覚的に判断できると思いますが、何も教えていないAIにはそれすらもわかりません。人間の赤ちゃんが犬と猫の区別をつけられないというのと同じで、AIにしても「経験」がないと何も判断することができないんです。

しかしさまざまな研究開発の結果、フィールドエッジのAIは「人間以上の目」を獲得できたとも言えます。

たとえば私たちの目には、夜間の川というのはすべて真っ黒に見えてしまい、正確な水際の位置を判断するということは難しいですよね?でも、フィールドエッジの目にはそれができるんです。
フィールドエッジの知覚センサに搭載された「高感度フルハイビジョンセンサ」や「光学20倍のズームレンズ」は人間の目を超える解像度を持っていますから、あとはその目を有効に活用するための脳、つまりはAIに、よりよい「経験」を与えてやればよかったというわけなんです。

ときには「ひっかけ問題」も

「教師データ」には偏りも禁物です。たとえば氾濫した河川の画像ばかりを教えてしまいますと、静かな河川の数値に狂いが出てきたりもします。ですから、昼、夜、快晴、雨天など、あらゆるシチュエーションのデータ、ときには「川の水に濡れて黒くなった夜間の護岸」のような意地悪なデータを「ひっかけ問題」のように教えていきました。

こうした「学習のさせ方」は三菱電機情報技術総合研究所とともに試行錯誤していったものです。ただ闇雲に大量の教師データを与え続けてもダメだったんですね。

人間の子どもだって、いくら教材がよくても先生がダメなら勉強は進みませんよね?また、私たちの製品開発において「できの悪い子ほどかわいい」は絶対に通用しません。とはいえだんだんとAIが結果を返してくれるようになると、不思議な愛情が芽生えてきたのも事実なのですが。

三菱電機エンジニアリング株式会社 小林基彦

CHECK!

AIに必要なのは、優れた「教師データ」と「学習のさせ方」。よりよい「経験」を与えてあげる。

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