メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2010年 4月号(No.155)
  • 新たな環境規制への対応で求められる
    正確な情報管理の仕組みとIT活用のポイント

日本が世界に向けて表明した「国内の温暖化ガスの排出量を2020年までに1990年比で25%以上削減する」という目標に対して、現在、具体的な対応策を巡る議論が進められていますが、CO2排出量の報告や削減義務など、企業活動に影響を及ぼす環境関連の法規制への対応はすでに実行段階を迎え、重要な経営課題の1つに位置付けられています。今回は、改正省エネ法や各自治体条例への対応を中心に、そのための仕組み作りのポイントやIT活用の有効性について整理してみましょう。

環境関連の法規制強化で求められる
正確な情報管理の仕組み

 企業に対するCO2排出量の削減や報告を義務付ける法規制が相次いで施行され、2010年4月以降、多くの企業がその対応に向けた本格的な活動に着手することになります。例えば、2008年6月に改正された「東京都環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)」では、一定規模以上の事業所を対象にした「温室効果ガス総量削減義務」の適用を開始。対象となるオフィスビルなどには、「第1計画期間」と位置付けた2010〜2014年度に、基準年度比で8%の削減義務が課せられます(基準年度は2002〜2007年度の中で、連続した3年間の平均排出量)。
 東京都以外の自治体でも、CO2削減の中長期計画書の提出や毎年の進捗状況の報告を義務付けた条例や施策が、2010年4月から順次適用されます。
 また、2010年4月から施行された「改正省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」では、従来の省エネ法で年間エネルギー使用量(原油換算値)の届出やきめ細かいエネルギー管理と報告を義務付けていた対象を、工場・事業場から、本社、工場、支店、営業所などを含めた企業全体に拡大されました。年間のエネルギー使用量が1,500kl以上の企業には、2010年度から定期報告書と中期計画書の提出、エネルギー管理の統括者と企画推進者を選任した全社的な管理体制の推進が義務付けられています。
 こうした環境関連の法規制は、企業全体のエネルギー使用量の正確な把握や管理、集計、報告を義務付けられている点で共通しています。これまでも、多くの企業がISO14000の認証を取得し、環境マネジメントを推進してきましたが、ここ数年の法規制強化の流れは、手順や承認手続を明確にしたプロセスの確立に加え、企業に正確な情報管理の仕組みを構築することを求めています。
 また、法規制以外でも、企業に正確な情報管理の仕組みを求める流れは、国際的にも加速しています。例えば、機関投資家で構成されるNPO団体のCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、世界中の上場企業にCO2排出量や地球温暖化に対するチャンスとリスクに関する質問票を送付し、その回答を報告書にまとめ、情報を開示しています。同様の動きとして、公認会計士協会と大手監査法人のメンバーで構成されるCDSB(クライメート・ディスクロージャー・スタンダード・ボード:気候変動情報開示標準化審議会)は、企業の社会貢献の度合いを判断する基準として、有価証券報告書にCO2排出量や温暖化に対するリスクなどを盛り込んで開示、報告するためのフレームワークを公表しています。
 国内では、2009年に日本の公認会計士協会がCDSBと同様のフレームワークを提言。2013年には海外拠点も含めた連結対象のCO2排出量を有価証券報告書に記載する制度の適用が検討されています。

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コスト削減や効率化を図るうえで
不可欠なIT活用

 こうした流れの中、正確な環境情報管理の仕組みを構築するうえで、IT活用が有効な選択肢となります。具体的には、次のような要件を満たす必要があるためです。

複数の情報取得先と報告先への対応

 エネルギー使用量の取得先と報告先が多岐に渡る状況において、企業は自社の実態に即して必要な情報を取得し、報告義務を果たしていかなければなりません。例えば、エネルギー使用量を正確に把握するベースは、電気やガスなどの毎月の検針票。ところが、貸しビルに入居している拠点では、電力会社との直接契約による検針票に加え、ビルオーナーから按分データを取得し、集計する必要があります。
 また、拠点単位での集計作業以外にも、報告先も東京都や神奈川県といった都道府県レベルから、横浜市、名古屋市、広島市などの市レベルまで多元化。企業は自社が事業を展開している自治体ごとに条例の有無を確認し、該当する条例のフォーマットに合わせて報告書を作成しなければなりません。
 こうした複雑化した状況に対応するとともに、経営的な観点では、集計や記載のミスで非難される事態を避けるために、人為的なミスを極力排除できる情報管理の仕組みを構築していく必要があります。

モニタリングを通じた優先課題の明確化

 CO2削減の義務を果たしていくためには、どの部門や拠点が売上や利益に対してCO2を多く排出しているかを特定し、優先度の高さに応じて改善策を講じていく必要があります。そのためには、企業は複数の部門や拠点を統合的にモニタリングできる情報管理の仕組みを構築しなければなりません。

従業員の自主的な取り組みを促す情報提供

 CO2排出量の削減に向けた省エネ活動で大きな比重を占めるのが、消灯やエアコンの設定温度の遵守徹底を図る、職場単位での自主的な取り組み。それを促すためには、部門単位でのCO2排出量や自主的な取り組みによる削減効果などを具体的な数値として提供することが重要になります。

第三者検証に耐え得る情報と証憑の提供

 東京都環境確保条例のように、CO2排出量の削減を義務化した法規制では、第三者による客観的な検証が可能な情報管理が不可欠です。特に重要になるのが、管理している情報が正しいことを証明するための、検針票や電力量メーターの写真といった証憑を紐付けることができる仕組み。第三者検証はサンプル抽出による監査が基本ですが、コスト削減という観点からは、会計監査同様、入力されている情報と、その裏付けとなる証憑を照合する作業をできるだけ効率的に進めることが重要になります。

中長期のコストを予測できるシミュレーション機能

 東京都環境確保条例で義務化されたCO2排出量の削減を達成できない場合は、排出量取引でその不足分を補填しなければなりません。経営的な観点では、そのコストを予測できるシミュレーション機能が様々なリスクを回避する重要な要素となります。

説明図

東京都環境確保条例の削減義務率
出典:大規模事業所に対する「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」関係資料(東京都環境局)

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