メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2010年 4月号(No.155)
  • ITを活用した環境情報の可視化と
    サンプル評価による課題の洗い出しがCO2削減に向けた全社的な取り組みを加速

人物写真

デロイト トーマツ リスクサービス株式会社
シニアマネジャー
吉丸 成人氏

改正省エネ法や東京都など各自治体条例の施行により、“CO2排出量報告と削減の義務化”の流れが加速しています。ところが、多くの企業では法令遵守の重要性を認識しながらも、具体的な取り組みについては模索している状況のようです。企業は自社に必要な施策をどのように見極め、活動を推進していけばよいのでしょうか。今回はリスクマネジメントの観点から、多くの企業でグリーンIT推進を支援している吉丸氏に、企業に必要な考え方やIT活用のポイントを伺いました。

吉丸成人(よしまる・なると)氏プロフィール
外資系システム・ネットワークインテグレーターを経て、2004年から有限責任監査法人トーマツにてシステム、セキュリティー、BCPやクラウドコンピューティング等のシステムリスクや、地球温暖化対策、グリーンIT等、環境とITに関する助言とコンサルティングを行っている。2009年度より現職。公認内部監査人(CIA)、公認情報システム監査人(CISA)。
URL:http://www.tohmatsu.com (新しいウインドウが開きます)

第1ステップとしてCO2排出を経営リスクと認識し
サンプル評価によって課題を洗い出す

 「CO2の排出量管理については、まず特定の事業部門などをサンプルとして、できるだけ早期にエネルギー使用量とCO2排出量の取得、集計、評価というPDCAサイクルのC(Check)までの作業を進めるべきです。もちろん業種や業態によって差はありますが、この作業を実際に行ってみることで、改正省エネ法などの規制対応に必要な作業負荷の大きさをはじめて実感する企業が少なくありません。そして、サンプル評価を基に、報告義務を果たすためのデータ入力や集計の工数、人為的なミスが発生する可能性が高い作業などを特定することで、自社が講じるべきA(Action)を見極めていくことが重要です」
 吉丸氏は、規制対応において企業全体でのエネルギー量の把握や管理が急務の課題となる中で、あえて特定部門でのサンプル評価に早急に着手すべきだという点を強調します。この背景には、必要な作業工数の大きさに対する理解が不十分なため、具体的な準備作業に踏み切れない企業が多いという実態があります。漠然と全社的な仕組みのあり方を模索するのではなく、まずサンプル評価を通じて実務作業上の課題を洗い出し、取り組みを一歩先に進める指針を明確にすることを優先すべきだということです。
 こうした取り組みの前提となるのが、新たな法規制が企業経営に及ぼす影響度の大きさと、それに対する正しい認識。吉丸氏は、加速する“CO2削減の義務化”という流れに対して、従来とは異なる視点が求められることを指摘します。
 「例えば、東京都環境確保条例などで義務付けられたCO2排出量の削減率を達成できなければ、不足分を補う排出量取引のコストが発生し、利益率の低下を招く可能性があります。経営的な観点では、そうした状況を回避することに加え、3年後や5年後の正確な排出量取引コストを見込んでおくことが不可欠です。法令遵守にとどまらず、CO2排出がコスト化につながる経営的なリスクだと認識し、リスク低減のために必要な施策を見極めるという考え方が必要になります」
 また欧米諸国と同様、日本国内でも環境に配慮した商品提供や正確な情報開示を求める消費者の声が高まることで、環境問題を発生させた場合に不買運動に発展するといった不確実性のリスクも増大傾向に。吉丸氏は、多様化するリスクに対する的確なマネジメントの推進が、最終的には企業に大きなメリットをもたらすと語ります。
 「グリーンコンシューマーと言われる消費者のバイイングパワーの拡大は、見方を変えると、環境負荷やCO2排出量を確実に削減し正確な情報を開示することが、企業の選択基準で大きな比重を占めるようになっていることを意味します。そこに投資価値を見出すことが、今まさに求められている発想だといえるのではないでしょうか」

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取り組みのポイントは
環境情報の可視化と証憑管理とのリンク

 法規制や社会的要請を重要な経営リスクと認識し、対応に必要な作業工数を見極める。吉丸氏は、こうしたステップを踏むことで、必然的にBIなどのITツール活用という方針に行き着くと指摘します。
 「各拠点の担当者がExcelで情報を入力して、それを本社サイドで集計する方法を検討している企業も多いようですが、私どもはその作業工数を100拠点あたり約1人/月と試算しています。ところが、コスト削減を重要な経営課題に位置づける現状において、この選択肢は現実的とは言えません。複数の自治体への報告、CO2排出量が多い部門を特定するモニタリングの仕組みが必要だと考えれば、ITを活用して情報を可視化し、作業の効率化とスピードアップを図ることが必然的な流れだと言えるでしょう」
 また、経営的な視点からのモニタリング機能を生かすには、職場の貢献度を評価する新たな評価基準を明確に提示することも前提条件。IT活用による情報の可視化は、従業員の自主的な活動を促すうえでも有効な手段となります。
 「日本企業の従業員は、課題認識さえ共有できれば、自ら解決策を考える能力を備えています。この点は海外企業と比べても優れており、省エネ活動の大きな原動力となります。従業員が、自らの職場のCO2排出量を把握し、削減に向けた活動を促すきっかけを与えるためにも、IT活用による情報の可視化が重要です」
 さらにCO2削減の義務化で企業に求められるのが、第三者検証にも耐え得る情報を提供できる管理体系の整備です。吉丸氏は最後に、社内外の監査に対応する必須条件が証憑管理とのリンクだと指摘し、次のように話してくれました。
 「改正省エネ法の報告義務だけに着目すれば、正確な情報取得と集計作業の効率化が企業の注力すべき取り組みとなります。ところが、自治体条例などのCO2排出量の削減義務、さらに将来的な有価証券報告書への記載などを想定すれば、第三者が検証できる裏付けも必要です。会計監査と同様、情報と証憑を紐付けて管理できる仕組みの整備も、考えていくべきだと思います」

説明図

省エネ法・都条例 集計/報告のコストと工数(試算)
出典:デロイト トーマツ リスクサービス株式会社

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