メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2010年 5月号(No.156)
  • プロジェクトを成功に導くコミュニケーション・マネジメントの
    重要性と推進のポイント

限られた予算やスケジュールという制約の中で企業の目標を達成するプロジェクトに対して、多くの企業がコミュニケーションの重要性を認識しています。ところが現実には、言ったことが伝わっていない、聞いたことを正確に理解していない、という状況がスケジュールの遅延などにつながるケースも少なくありません。今回は、「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第4版」の内容も参考にしながら、プロジェクトの目標達成に向けて求められる、コミュニケーション・マネジメントの重要性と推進のポイントについて考えてみましょう。

円滑なコミュニケーションで求められる
マネジメントのプロセスと遂行のスキル

 「コミュニケーションは、プロジェクトの成否を決める最大の要因の1つとして認識されている」―。プロジェクトの円滑な推進に有効な知識を体系的に整理したPMBOK(Project Management Body of Knowledge)の最新版にはこう記述されています。
 2008年に発行された「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第4版」(日本語版は2009年発行)では、“一貫性と明確化”という方針に基づき第3版を更新し、プロセスの再構成やデータ・フロー図の追加などが行われていますが、プロジェクト・マネジメントで重要な「人間関係のスキル」(付録G)が追加されたことも、第3版との大きな違いの1つです。冒頭の一文は、そのスキルの1つである「コミュニケーション」の項に記述されたものです。
 「人間関係のスキル」に含まれているのは、コミュニケーションのほか、リーダーシップ、チーム形成活動、動機付け、影響力、意思決定、政治的風土と文化に対する認識、交渉という全部で8つのスキル。いずれも、チームの共通認識や一体感を醸成するためのコミュニケーションに関わるスキルだと解釈できます。
 理論体系ではなく、プロジェクトの実践を通じた知識体系だという点がPMBOKの大きな特徴です。そこにコミュニケーションに関連したスキルと重要性が改めて明記されたことは、見方を変えると、多くの企業がコミュニケーションに起因する課題に直面している状況を表しているといえるでしょう。
 コミュニケーションに起因する課題の多くは、“言ったはずだが相手に伝わっていない”、“聞いたはずだが真意を理解していない”といったメンバー間での行き違い。行き違いが積み重なると、作業の遅延やコストの超過につながる事態にもなりかねません。
 こうした事態を回避するためには、プロジェクトの遂行能力ともいえる人間関係のスキルに加え、情報を必要とするメンバーを特定する、正しい情報を的確な手段で伝達する、相手が理解していることを確認する、課題解決策の合意を形成するといったプロセスのマネジメントが重要になります。PMBOKで、それに該当するのが、知識エリアの1つである「プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント」。構成要素は、「ステークホルダー特定」、「コミュニケーション計画」、「情報配布」、「ステークホルダーの期待のマネジメント」、「実績報告」という5つのプロセスです。
 例えばコミュニケーション計画は、プロジェクトの影響を受ける人や組織(ステークホルダー)が求める情報を明確にし、「コミュニケーションへの取り組み方を定義するプロセス」のこと。「誰が、いつ、どのような情報を必要とするか、またその情報を誰が、どのように提供するか」などを決定していくプロセスです。
 また、これらの決定事項を明記する文書が「コミュニケーション・マネジメント計画書」。PMBOKでは、一般的に記述される内容として、「伝達すべき情報」や「その情報を配布する時期と頻度」、「情報伝達の責任者」、「情報伝達の手段や技術」などを挙げ、「プロジェクトの状況確認会議、プロジェクト・チーム会議、電子会議、電子メールで使用するガイドラインやテンプレートを含める場合もある」としています。
 ここで理解しておく必要があるのが、PMBOKは「基礎的なプロジェクト・マネジメント参考書」という位置付けであり、「記述されている知識を常にすべてのプロジェクトに一律に適用すべきであるということを意味するものではない」ということ。メンバーに提供すべき情報の内容や記録として残す文書、会議の開催頻度などは、プロジェクトを推進する企業が自ら明確にする必要があります。

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チームワークを醸成し
情報伝達手段のメリットを生かす

 PMBOKに限らず、コミュニケーションの重要性が再認識されている背景には、広範囲の拠点を対象にした全社的なプロジェクトの増大があります。プロジェクトの目的はコンプライアンスや環境負荷軽減といった社会的な要請への対応、意思決定の迅速化など様々ですが、多くの企業が重視しているのが、業務や情報の標準化、共通化。結果として、部門や企業を横断した様々なメンバーがプロジェクトに参画するようになり、これまで以上に個々のメンバーが共通の目標に向かって結束するための、円滑なコミュニケーションの重要性が高まったということです。
 また、メンバーが相互に顔を合わせる機会の少ない“バーチャル・チーム”によるプロジェクトの増加も、コミュニケーションの重要性を高めています。円滑なコミュニケーションでは、言葉だけではなく、相手の表情や態度を汲み取ることも重要な要素。電話やメール、電子掲示板などの情報伝達手段を利用することの多いバーチャル・チームでは、その実現が困難になるためです。
 ただし、こうしたバーチャル・チームのプロジェクトを支援する技術は進化を遂げており、例えばビデオ会議システムは、企業にとって有効な手段の1つになっています。従来のような従量制の回線ではなく、定額制で高速・広帯域のネットワーク回線に対応したソリューションが増加したことで、通信コストの削減も可能になったほか、機器の小型化により、場所の制約を受けずに手軽に利用できるようになりました。
 バーチャル・チームであっても、重要な課題の解決策を見出すなど、メンバーが一堂に会して詳細に議論し、合意形成を図る会議が必要になることも少なくありません。ビデオ会議システムであれば、遠隔地の複数拠点のメンバーに負担をかけることなく、対面で意見を述べる場を提供できます。企業は出張コストも削減しながら、様々なメンバーの知恵を結集できるというメリットを享受できるということです。
 コミュニケーション・マネジメントでは、こうした情報伝達に利用する手段のメリットを理解しておくことが重要になります。例えばメールは、相手の表情や態度を汲み取れないとはいっても、時間や距離という制約を排除できることが大きなメリット。遠隔地であっても一度に複数のメンバーに情報を伝達できる、他の文書も添付できる、記録を残せる、受信した相手が自分の都合に合わせて内容を確認できるといった特性に着目し、目的や用途を見極める必要があります。
 限られた期限や予算、資源という制約の中で、リスクを排除し、明確なスコープに対する目標をチーム一丸となって達成するのがプロジェクト・マネジメント。企業は、その実現を支えるコミュニケーションの促進に、これまで以上に注力すべきだといえるでしょう。

説明図

コミュニケーション・マネジメント計画書に記述する内容の例
(「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第4版」を基に作成)

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