メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2010年 5月号(No.156)
  • 考え方や価値観の共有度を高めるコミュニケーション・マネジメントが
    チームとしての成果を生み出す

人物写真

プラネット株式会社
代表取締役社長
中嶋 秀隆氏

プロジェクトを円滑に進めるうえで大きな原動力となるのが、メンバー間の良好なコミュニケーションです。様々な部門のメンバーが参画する全社的なプロジェクトや、相互に顔を合わせる機会が少ない“バーチャル・チーム”によるプロジェクトが増大するなかで、その重要性がこれまで以上に高まっています。今回は、多くの企業でプロジェクト・マネジメントの技法研修やコンサルティングを手がける中嶋氏に、PMBOKの知識エリアの1つである「コミュニケーション・マネジメント」推進のポイントを中心に伺いました。

中嶋秀隆(なかじま・ひでたか)氏プロフィール
プラネット株式会社代表取締役社長。国際基督教大学大学院修了。京セラ(海外営業)、インテル(国際購買マネジャー、法務部長、人事部長)など、日米の有力企業に約20年間勤務。その後、PM研修を軸に独立。現在、日本およびアジア地域のビジネスパーソンを対象に、プロジェクト・マネジメント技法の研修、コンサルティングを行っている。
URL:http://www.planetkk.net/ (新しいウインドウが開きます)

メッセージの伝達や理解を妨げる
“ノイズ”を除去し、共通認識を醸成する

 「バーチャル・チームを含め、プロジェクトでは考え方や価値観の異なる、様々な地域や国のメンバーで構成するケースが増大しています。したがって、プロジェクト・コミュニケーション・マネジメントは、いわゆる“阿吽(あうん)の呼吸”が通用しないという前提で推進しなければなりません。具体的には、プロジェクトの目的や合意事項を必ず文書化する。共通の知識や価値観の共有度合いを高めるために、メンバーが理解できる言葉で記述していくことが、PMBOKでいう“ノイズ”を除去し、コミュニケーションを促進する重要なポイントだと言えるでしょう」
 中嶋氏はまず、コミュニケーションの前提が共通認識の醸成であり、暗黙の了解に頼るのではなく、明文化することが重要であると語ります。中嶋氏によれば、世代の違いで考え方や価値観が大きく異なっており、プロジェクトの進め方についても、例えば米国式で学んだ人材と、日本式になじんだ人材の間で、発想の違いが際立っている状況にあるといいます。
 「例えばロジカルな思考といっても、私の経験では、米国と日本ではビジネスやプロジェクトを進める思考パターンが異なります。米国は、1つの課題に一定の決着を付けてから次へ進むという“ブロック積み上げ型”ですが、これに対して日本では、すべての課題に目を配りながら結論に至る“鳴門巻き型”です。こうした違いがあるままプロジェクトを進めても、互いに悪印象を抱くことになり、チームワーク醸成が困難になる。自分たちのやり方を守ることに固執するのではなく、相手を理解することによって異文化の“ノイズ”を除去し、チームとして成果を上げることに注力すべきです」
 中嶋氏が指摘する“ブロック積み上げ型”とは、例えば製品の仕様、納期、サポート、価格といったテーマごとに課題解決策を1つずつ明確にしていく思考パターンです。一方の“鳴門巻き型”は、仕様の議論が完結しなくても、仕様が影響を及ぼす納期、納期が影響を及ぼすサポートなど、象限の異なる議論に速やかに移行していく思考パターン。どちらが正しいということではなく、その違いを理解しなければ、コミュニケーションを阻害する要因になってしまうということです。
 「PMBOKでは、『距離』などをメッセージの伝達や理解を妨げる要素を“ノイズ”と定義していますが、例示した“ブロック積み上げ型”と“鳴門巻き型”のような思考パターンの“異文化のノイズ”や、国の違いによる“言語のノイズ”があることを認識しておくべきです。つまり、コミュニケーション・マネジメントでは、複雑に絡まりあった様々なノイズを除去していかなければなりません。そのためには、例えば発言の際には議長の了解を得る、質問は簡潔にといった会議進行の基本ルールを明文化し、会議の席上に掲示しておくといった施策も有効です」

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会議を状況説明ではなく、合意形成を実現する
コミュニケーションの場として位置づける

 プロジェクト・マネジメントを推進していくうえで、会議はメンバーの合意形成を図るコミュニケーションの場です。中嶋氏は、日本企業の会議において、まだ改善の余地があると語ります。
 「議論するテーマと時間配分を明確にした質の高い会議を心がける必要がありますが、まだ状況説明に時間を費やしてしまう会議が少なくありません。合意形成を実現する場として会議を位置づけることがポイントになります。それにはファシリテーターが会議の最初に、会議が終了した時点で何を達成しているかを明言することが重要です。そのためには、会議の目標を明確にしたアジェンダ(議事進行表)を作成し、プレゼンテーション資料をあらかじめ用意しておく。対面の会議やビデオ会議といった形態にかかわらず事前に会議を設計し、必要な資料を準備しておくことを、徹底するべきです」
 さらに、中嶋氏は会議の成果と今後の取り組みを明確化しておくことが必要だと強調します。
 「会議の終了時点では、Who(誰が)、What(何を)、by When(いつまでに)というアクションリストを作成することも重要です。プロジェクトはアクションの集大成であり、決定したアクションが実行されなければ遅延につながります。対面やバーチャルに限らず、成果に重点を置いた会議を重視すべきです」
 プロジェクト・マネジメントは、人が介在することで複雑さを増します。中嶋氏は、その点を強調したうえで、最後に次のように話してくれました。
 「プロジェクト・マネジメントでは、これまで“クリティカル・パス法”や“WBS(Work Breakdown Structure)”などの、ハードスキルが注目を集めてきました。ところが現実には、そのハードスキルを生かすためには、プレゼンテーションや会議ファシリテーション、リーダーシップといったソフトスキルが不可欠になります。PMBOKの第4版に “人間関係のスキル”が追加されたことも、そのソフトスキルの重要性が、これまで以上に高まっていることが背景にあります。特にエンジニアの方には、プロジェクトを自らの成長の機会と捉え、こうしたソフトスキルの習得を目指してほしいと思います」

説明図

異文化のノイズ(思考パターン)
出典:プラネット株式会社

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