メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2010年 6月号(No.157)
  • ビジネス目標の達成支援で求められる
    組織機能の“見える化”を起点にした全社的な人材育成のPDCAサイクル確立

人物写真

株式会社スキルスタンダード研究所
代表取締役社長
高橋 秀典氏

経営やビジネスへの貢献が、これまで以上に求められている企業のIT戦略。その策定や遂行にあたっては、情報システムの企画や構築、運用を担当する人材のマネジメントがカギを握ります。情報システム部門が企業経営を支える戦略的な部門として、適正な人材配置や人材育成などのマネジメントを推進していくうえで、何が重要になるのでしょうか。今回は、多くの企業でITスキル標準や情報システムユーザースキル標準の導入を支援してきた高橋氏に、情報システム部門に求められる人材戦略強化のポイントについて伺いました。

高橋秀典(たかはし・ひでのり)氏プロフィール
1993年日本オラクル株式会社入社。研修ビジネス責任者としてオラクルマスター制度を確立させ、システム・エンジニア統括・執行役員を経て2003年12月にITSSユーザー協会を設立。翌年7月にITSSやUISSを企業で活用するためのコンサルティングサービスを提供するスキルスタンダード研究所を設立。関西電力株式会社、 三菱UFJ証券株式会社、株式会社リクルート、アメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)、プロミス株式会社などのコンサルティングを成功に導く。 UISSやITSS策定などIT人材育成関係の委員会委員を歴任し、2006年5月にIPA賞人材育成部門受賞。著書に「UISSガイドブック」、「IT エンジニアのためのITSSV2がわかる本」など。
URL:http://www.skills.jp/ (新しいウインドウが開きます)

スキルを議論する前に
組織の“あるべき姿”の共通認識を醸成する

 「経営戦略に合致したIT戦略の策定や遂行、ビジネスソリューションの提供などに向けて人材戦略を強化するためには、まず、自社の情報システム部門としてのあるべき姿を、組織の機能として定義し、見える化する“機能モデル”の策定が不可欠です。例えば“ビジネスとの整合性確保”という機能に対して、“事業部門へのヒアリング”や“業務分析”、“運用ガイドラインの整備”といった具体的な機能にまで落とし込み、網羅する。必要な人材のイメージやスキルを議論する前に、組織力向上という視点から自社に必要な機能を整理し、経営層や情報システム部門の要員など、関係者全員に共通認識を持たせることが、必須のアプローチだといっても過言ではありません」
 高橋氏はまず、情報システム部門の人材戦略強化に向けた第一歩が、経営戦略や事業計画に基づく組織機能の明確化だという点を強調します。ポイントは、個人がどうなりたいかではなく、組織として何を目指すかという視点。高橋氏は、この組織視点がなければ、人材戦略を支える人材の適正な配置や育成といったマネジメントのPDCAサイクルを回すことが困難になると語ります。
 「人材戦略は企業としての戦略であり、目的はあくまで組織力の向上です。従来の課題は、その考え方や施策を関係者が納得できるように具体的に説明できなかったことにあります。例えば情報システム部門の要員に対して、ビジネスに貢献するIT戦略策定やIT企画のスキル向上を促しても、個々の人材は、自分が何をすべきかを理解できないケースも少なくありません。機能モデルを起点に組織として必要な人材像やスキル、マネジメント施策を関連付けていくことが、この意識ギャップを解消し、継続的なPDCAサイクルを運用していくうえで非常に有効だということです」
 高橋氏が指摘する、機能モデル策定を中心に置いたアプローチは、ITベンダー向けのITスキル標準、ユーザー企業向けの情報システムユーザースキル標準(UISS)のいずれにも採用されています。高橋氏がUISS導入を支援した多くの企業においても、説得力の高さにより関係者のコンセンサスが得やすいという有効性を実証。機能モデル自体も、各要員の責任範囲を組織機能レベルで明確にできること、アウトソーシングすべき機能の切り分けや、社外ベンダーとの役割分担を明確化できる点が高く評価され、活用されているといいます。

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他部門との人事ローテーションも想定した
人材育成の全社的なPDCAサイクル確立

 プロジェクトに応じた人材の適正配置やアウトソーシングの有効活用によって組織力の強化を図るためには、情報システム部門要員が保有する現状スキルを明確に把握することが不可欠です。UISSは、こうした組織の視点から自社に適した人材体系を効率的に構築できる手段ですが、個人の視点から、あるべき姿に向けたキャリアパスを描くこともできます。
 ところが、情報システム部門の要員は、必ずしも本人の希望で配属されるわけではありません。高橋氏は、こうした要員のモチベーションを高めるためにも、他部門へのキャリア変更も可能な仕組みを構築すべきだと語ります。
 「他部門への異動を希望する要員に対し、現状の仕事が将来に結び付くことをイメージできるキャリアパスを用意することが、モチベーションの向上という面で非常に有効です。また一方では、現状の仕事を続けたい要員、現状の仕事を続けたいが他部門の業務を経験したいと考える要員がキャリアパスを描ける仕組みも整備する。全要員の自発的なスキル向上への取り組みに向けて、情報システム部門の中だけでキャリアパスを描くことを考えるだけでなく、企業全体のキャリアパスが必要となります。これにはUISSを拡張し、全社で人材育成のPDCAサイクルを回すことを考えることが重要です」
 高橋氏によれば、UISSを導入し、他部門へのローテーションも可能な人材育成の仕組みを運用している企業はまだ少ないとのこと。また、最初から個人の視点も取り入れた全社的な人材育成の仕組み構築に着手すると、作業も膨大になるといいます。そこで、情報システム部門の組織視点による人材戦略のPDCAサイクルを回すことを優先し、その後個人視点も取り入れた全社の仕組みと融合させていくアプローチが有効になります。全社的な人材育成のPDCAサイクル確立は、ビジネス目標の達成支援という面でも、重要な意味を持ちます。
 「情報システム部門の業務を経験した人材が利用部門にいる、逆に利用部門での業務を経験した人材が情報システム部門に戻ってくるという流れを作ることは、経営やビジネスという観点で、非常に重要だといえるでしょう。こうした流れができれば、情報システムの活用主体である利用部門とのコミュニケーションが円滑になり、利用部門の実情を反映できるようになります。情報システム部門という閉じた世界ではなく、利用部門や人事部門も巻き込み、企業全体で効果的な人材育成を推進してほしいと思います」

説明図

人材育成の強化に向けたアプローチと“スキル標準”の位置付け
出典:株式会社スキルスタンダード研究所

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