メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2010年 11月号(No.161)
  • 意思決定の精度向上と競争力強化の源泉となる
    データ品質の向上

人物写真

株式会社テックバイザージェイピー
代表取締役 栗原 潔氏

多くの企業で、企業の競争力強化に向けたデータ分析が行われています。しかし、分析するデータそのものの品質管理については、まだ手つかずの状態になっているケースが少なくありません。社内にあふれる膨大なデータを適切に管理することにより、どのような効果が生まれるのでしょうか。今回は、データ統合やデータウェアハウス、BI(Business Intelligence)などの分野でのコンサルティング経験が豊富な栗原氏に、企業の競争力を高めるデータマネジメントのポイントを伺いました。

栗原 潔(くりはら・きよし)氏プロフィール
1958年東京生まれ。東京大学工学部卒業。米マサチューセッツ工科大学(MIT)計算機科学電子工学科修士課程修了。日本IBM、ガートナージャパンを経て、2005年6月より独立し株式会社 テックバイザージェイピーを設立、ITコンサルタントと弁理士業務を並行して行う。専門分野はエンタープライズ・システム、ビジネスインテリジェンス、ソフトウェア特許等。弁理士。技術士(情報工学)。著書に『グリーンIT コスト削減と温暖化対策を両立する』
(ソフトバンククリエイティブ)、訳書に『戦略的データマネジメント』、『ライフサイクルイノベーション』(ともに翔泳社)など
URL:http://www.techvisor.jp (新しいウインドウが開きます)

全社的な取り組みが不可欠な
データマネジメント

 「企業に蓄積されるデータを活用して業務改善や経営改革に役立てるBIが、改めて注目を集めています。ところが、データそのものの品質への意識が不足し、十分に対応できていない企業が少なくありません。その典型的なケースが、データマネジメントはテクノロジーの問題という誤った理解から、情報システム部門だけが担当しているというものです。データマネジメントにおいては、たしかに情報システム部門が大きな役割を担いますが、すべての問題がテクノロジーだけで解決できるわけではありません。データの多くはビジネスの現場で生成され、各部門のユーザが利用するものです。正確なデータ入力を心がけ、データの流通過程で加わる情報についても正しくコントロールするなど、全社的な協力がなければ適切なデータマネジメントは実現しません」
 情報処理において古くからある言葉にガーベージイン、ガーベージアウト(garbage in, garbage out)というものがあります。これは誤ったデータを入力すると、どれほど優れたプログラムでも正しい結果は出てこないということです。逆に言えば、データそのものの品質を高めることにより、着実な成果を得ることが可能になります。栗原氏は特に経営層に向けて、データマネジメントはテクニカルな課題としてだけではなく、企業経営に直結するビジネスの課題として認識すべきだと強調します。
 「データは企業の資産であるという認識はあるものの、実際にはその管理に十分な予算が配分されていないことが多くあります。要員についても、担当者が本来の業務をこなしながら、データマネジメントを推進することは難しいといわざるを得ません。今以上にデータ品質の向上に経営資源を振り分けることが、競争力強化につながると思います」

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現実的な目標を設定し
業務プロセス改善などでデータ品質を高める

 多くの企業では各部門でシステムを構築した結果、様々なデータが分散して入力され、利用されています。例えば同じ顧客のデータが、複数のシステムに登録されているケースもあります。さらに、同じ顧客データであっても各部門で必要なデータが異なるため、記録項目や形式が異なります。それらのデータを1つにまとめたマスターデータとして管理し、各部門で使えるようにすれば、効率的な管理が可能になります。例えば顧客の住所が変わった場合、1回の修正で済み、漏れもなくなります。ところが、現実的には規模が大きな企業であれば数百もあるシステムのデータ統合は容易なものではないと、栗原氏は語ります。
 「たしかに全部門の要件を反映した、全社的なデータ標準化を行い、共通の設計に基づいたデータベースを構築することは理想です。しかし、毎日大量のデータが各部門で作成、更新され、部門間をデータが移り渡っている状況において、全社的共通データベースを構築することは、あくまで教科書的な理想だと考えています。まず現実的な目標を定め、そこに着実に近づけていくことが重要です」
 栗原氏は現実的な目標として、顧客コードや製品コードを統一することから始めることを推奨します。そこでポイントとなるのが、組織文化改革やプロセス改革などを踏まえながら取り組むことだと語ります。
 「データの大部分を入力、使用しているのはIT部門以外のユーザ部門です。組織文化面では、業務の最適化のためにデータ品質がいかに重要か、共通認識を持つ必要があります。そのため、勉強会の開催や、全社的なデータ品質向上運動などを実施することも有効です。外国で行っているマスター入力作業のデータ品質に課題があったグローバル企業の日本法人では、その改善策として担当者を日本に呼んでミーティングを行い、そこでデータ入力の重要性を理解させることで、品質向上につなげました。このように、実際に顔を合わせ、フォローするという日本的な取り組みも有効なことがあります」
 プロセス面では、正確な入力を心がけ、同時に同じデータを2人で入力して付き合わせる、二重チェックするなどの方法やルール作りが有効です。ここでのポイントは、できるだけ入力に近い場所で間違いを排除することです。データは様々な部門にコピーされていくため、できるだけ初期段階で訂正することで負荷を軽減することができます。

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ツール活用でデータの現状を定量化
トップのリーダーシップで体制を整備

 全社的なデータマネジメントの取り組みを進めるうえで、ツールを活用することも有効であると、栗原氏は指摘します。例えばデータプロファイリングツールを使用することで、部門ごとのデータの正確性などが把握でき、課題を定量化できます。そこを基点に具体的な改善目標を定めて取り組めば、日本企業が得意とする製品の品質向上で培ってきた文化を生かすことができます。ところが、データマネジメントにおける改善では、従来の品質向上運動とは異なる側面も認識しておかなければなりません。
 「日本の改善運動はボトムアップ、現場主導で行われてきましたが、データマネジメントは、逆にトップダウンで行う必要があります。例えば顧客マスターを作るために顧客コードやフォーマットを変えようとしたとき、現場がその意義を理解していないと積極的には取り組めません。そこでリーダーシップを発揮して全体最適化の一環で、経営課題として取り組む必要があります。データ品質を高めることによって、意思決定の精度向上と競争力強化につながります。データの発生源に特にフォーカスし、総合的なアプローチで取り組んでいただきたいと思います」

説明図

企業データの「教科書の世界」と「現実の世界」
出典:株式会社テックバイザージェイピー

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