メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2010年 12月号(No.162)
  • ITプロジェクトを成功に導くビジネス分析のための知識体系
    BABOK®の概要と活用のポイント

ITプロジェクトを成功させるためのポイントは、構想・企画段階における現場からの要求洗い出しと、正しいソリューションの提案にあります。その手法であるビジネスアナリシス(BA)を体系化したBABOK®Business Analysis Body of Knowledge®:ビーエーボック)と呼ばれる知識体系に注目が集まっています。今回はBAの基礎的な概念を整理しながら、BABOK®活用のポイントについて考えてみましょう。

経営やビジネスの課題を
解決に結びつける新たな知識体系

 経営やビジネスの課題を明確にして、ITをはじめとするソリューションに橋渡しするビジネスアナリシス(BA)。この経営とITのギャップを埋める作業において、注目を集めているのがBAの知識体系BABOK®です。
 BABOK®をまとめ、普及啓発活動を行っているのは、カナダのトロントに本部を置く非営利団体IIBA®(International Institute of Business Analysis)。現在では、2008年12月に設立されたIIBA日本支部をはじめ、全世界で90の支部が活動しています。
 BABOK®が注目されるようになった背景には、経営に貢献するシステムを構築するにあたり、要件定義以前の“超上流”の重要性が高まっていることがあります。そこで求められるのは、ビジネスの課題を要求事項の観点から把握し、組織がその目標を達成した“あるべき姿”への明確な道筋です。BABOK®は、そのためのプロセスを、ITプロジェクトを開始する前の超上流工程(IT構想・企画段階)に取り込むために有用だとされています。
 それでは、様々なビジネスプロセスや情報システムへの要求を分析し、ソリューションを選定するビジネスアナリストは、どのようにしてBABOK®を活用すればいいのでしょうか。

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BABOK®の6つの知識エリアと
ステークホルダーの見極めの重要性

 BABOK®では、「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」、「引き出し」、「要求マネジメントとコミュニケーション」、「エンタープライズアナリシス」、「要求アナリシス」、「ソリューションのアセスメントと妥当性検証」、「基礎コンピテンシ」の知識エリアが定義され(図参照)、その中でBAの前提となるスキルをまとめた「基礎コンピテンシ」を除く6つの知識エリアには、具体的なタスクが記述されています。
 この中で、BAへのアプローチとアクティビティ(活動)を決定する方法が記述されているのが「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」です。ここで最初のポイントとなるのが、事業やプロジェクトの実行への関与や、それにより影響を受ける可能性の高い利害関係者、ステークホルダーの見極めです。BABOK®では、その対象をシステムのエンドユーザや、企業の外にいる顧客だけでなく、特定の業務に詳しい専門家や、運用サポート担当者、外部サプライヤー、テスト担当者まで幅広く想定しています。従来のITプロジェクトでは、キックオフ後に当初は想定していなかった部署からの要求対応が生じるなど、ステークホルダーの見極めの甘さが進行のネックになることが少なくありませんでした。
 BABOK®では一般的に分析対象になりそうなステークホルダー候補をあらかじめリストアップすることで、各領域でその必要性をチェックし、ステークホルダーをバイネーム(名指し)で決めていくことができます。

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真のニーズを引き出し
ビジネス課題の解決策を提案

 次にポイントとなる知識エリアが「引き出し」です。ここで求められるのは、ステークホルダーのニーズを明確にし、その結果を文書化すること。ステークホルダーから寄せられる要求が、すべてビジネス強化につながる真のニーズであるとは限りません。ビジネスアナリストは積極的なインタビューを通じて、これらの中から本来の要求を引き出さなくてはなりません。BABOK®にはその準備、引き出しのアクティビティの主導、結果の文書化、結果の確認などに関するタスクが記述されています。
 こうしてステークホルダーから真のニーズを引き出しながら、BAの核心「ビジネスの分析と、そこから明らかになった課題解決」を実施します。対象になる知識エリアは上記図で中心に示した3つのエリア「エンタープライズアナリシス」、「要求アナリシス」、「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」です。
 ここでは現状の課題を把握し、その解決のためのあるべき姿を定義するためのタスクが記述されています。続いて、様々な要求に優先順位を付けて体系化し、あるべき姿に変えるためのソリューションを定義します。さらに提案されたソリューションや導入済みのものについてパフォーマンスや有効性をアセスメント(評価)する方法について記述されています。ここで最もビジネスニーズに適合するソリューションを決定し、同時に既存のものについても評価します。
 最後の「要求マネジメントとコミュニケーション」エリアには、要求情報の管理について記述されています。引き出し活動などにより得られた要求は、様々な要因により変化していく可能性があります。そこで例えば過去の要求情報のトレーサビリティを確保して再利用に備えるなどの活動が欠かせません。また、一度ステークホルダー間で合意した要求を維持するためのコミュニケーションも、このエリアの重要テーマです。
 以上の6つの知識エリアにおけるタスクを実行するためには、様々なスキルが必要です。その対象は分析思考や問題解決、ビジネスの知識、コミュニケーション、ソフトウェアアプリケーションの活用など幅広く、これらが「基礎コンピテンシ」にまとめられています。

BABOK®とPMBOKの両輪で
ビジネスを強化するITを実現

 プロジェクトマネジメントが普及・定着した背景には、1987年に発行された「PMBOK」があります。PMBOKは、プロジェクトにおける言語を標準化することで、メンバー間のコミュニケーションの円滑化を実現しました。同様に、BABOK®の普及にも大きな期待が寄せられています。北米では現在、PMBOKを策定したPMIとBABOK®のIIBAが合同イベントを開催するなどの普及活動が積極的に展開されています。
 PMBOKのPMP資格と同様に、BABOK®にもCBAPRという資格認定制度があります。2011年からは、中級者向けのCCBA資格試験が実施される予定です。さらにIIBA日本支部では、現在は英語のみの資格試験を日本語化する準備を進めており、BABOK®をより身近に活用できる環境整備にも期待がかかります。

説明図

BABOK®の6つの知識エリアと基礎コンピテンシ
出典:BABOK®2.0 翻訳IIBA日本支部

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