メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2012年 3月号(No.174)
  • 日本企業固有の“現場力”強化で競争優位の確立と
    付加価値を生むIT活用を推進

企業が競争優位を確立するためには、明確なビジョンや合理性が確保された経営戦略の策定と、戦略の実行を担う現場の力が不可欠です。その実現に向けて、特にポイントとなるのが、日本企業に固有の優位性と位置づけることのできる“現場力”の強化。そこで今回は、戦略コンサルタントとして20年以上にわたり多くの企業を支援してきた遠藤功氏が提唱する“現場力”の重要性を紹介しながら、付加価値創出につながる現場での活動推進やIT活用のポイントを考えてみましょう。

日本企業の経営上の優位性は
“現場力”の強さ

 “現場力”とは、製造や営業、アフターサービスといった現場の従業員1人ひとりが、日々のルーティンワークをこなすだけでなく、自ら率先して知恵やアイデアを生み出すことでコストや品質、納期などの問題を解決していく組織能力のこと。この“現場力”の重要性が、加速するビジネスのグローバル化を背景に、確実に増大しています。
 グローバル戦略の視点に立つと逆に際立ってくるのが、日本企業に固有の特性や優位性。他社には簡単に真似のできない高い技術力などと同様に、現場力も海外企業に対して、日本企業が経営上の優位性と捉えることのできる、特徴的な能力の1つです。現場から生み出される「実践知」こそ日本企業の競争力の源泉です。
 一般的に“現場”という用語は、企業内における特定の部署や部門を指しますが、現場力を駆使する目的は、特定部門の最適化ではありません。目的はあくまで企業全体としての組織目標の達成にあります。そのためには、企業としての方針や戦略に対する深い理解と当事者意識、経営との一体感が不可欠です。例えば、遠藤氏は著書『現場力を鍛える』の中で、現場力の強い企業に共通するポイントを、次の5つに整理しています。

 @「結果を出すのは自分たちだ」という強い自負・誇り・当事者意識を現場が持っている
 A現場が会社の戦略や方針を正しく理解・納得し、自分たちの役割をきちんと認識している
 B結果を出すために、組織の壁を越えて結束・協力し、知恵を出し合う
 C結果が出るまで努力を続け、けっして諦めない
 D結果を出してもおごらず、新たな目標に向かってチャレンジし続ける

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個人に依存する“点”ではなく
組織全体で生み出す“面”の力がポイント

 遠藤氏によれば、現場力とは、コアコンピタンスという果実を得るための土壌となる“根源的組織能力”のことを指します。単一の要素による組織能力ではなく、複数の要素能力が混在して作り上げられる基盤となる能力であり、主に次の5つの要素能力で形成されます。

問題解決力
 現場力の中核能力。顧客への価値提供に直結する現場では、コスト、品質、スピード、安全、サービスなど、オペレーションに絡む問題が次々と発生します。これらの問題を主体的・効率的・効果的・継続的に解決できているかどうかが、現場力を測る大きなバロメーターになります。

連結力
 機能横断的な取り組みに素早く着手できる能力。現場力を阻害する大きな要因が組織の壁、部門の壁であり、この壁を乗り越えて仕事がスムーズにつながることで顧客への提供価値の最大化につながります。連結力の強さは、現場力の品質を決める極めて重要な要素になります。

俊敏力
 意思決定や実行、情報共有など、企業活動のあらゆる側面で俊敏に判断し、行動する能力。スピード感を伴うことに加え、最適なタイミングを図る能力が求められる、オペレーションの品質を規定する重大な因子となります。

臨機応変力
 日常的に発生する市場、競争、技術、内部環境などの変化に対して、現状に即した最適な判断ができ、適切な対策を講じられる能力。大胆にチャレンジする一方で、必要なことは必要なときに柔軟に変更する臨機応変力が現場力を高めます。

粘着力
 組織としての粘り強さ、愚直さを示す能力。一度始めた良い取り組みを、人が入れ替わっても粘り強く継続させることができる能力は、現場力を底辺で支える重要な要素になります。

 これら5つの要素能力品質を高めていく際のキーワードが、“徹底”と“執着”。現場力は個人に依存する“点の力”ではなく、組織全体の品質を指す“面の力”であり、永続的に伝承・維持・強化しなければならない普遍的な組織能力です。

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現場力の強い組織が
“見える化”の仕組みを生かすことができる

 現場力の重要な構成要素である問題解決力の前提は、組織としての問題発見力です。この問題発見力を高める際に有効な仕組みの1つに“見える化”があります。
 “見える化”という用語に対する関心は、2000年代の半ば頃から急速に増大しました。背景には、IT活用の範囲拡大に伴う情報の爆発的な増大がありました。必要な情報、正確な情報をタイムリーに確認できない状況に対して、多くの企業が危機感を抱いていました。
 こうした中、多くのITベンダーからも様々な製品が提供されるようになり、すでに経営管理や生産管理、環境マネジメントなど、多くの用途で導入されています。ところが、用語やツールとしての認知度は高まったとはいえ、必ずしも使いこなせているわけではないという状況があることも事実です。
 “見える化”の仕組みを有効に活用するためのポイントは、大きく2つあります。1つは、“見える化”すべき対象を現場起点で見極めること。もう1つは、“見える化”の取り組みを組織・機能横断的な問題解決の取り組みとして位置付けることです。

現場起点で対象を見極める
 問題発見のための仕組みと考えれば、どのような情報を、どのようなタイミングで“見える化”すべきかを最も理解しているのは、現場のオペレーションを担う従業員であることは明らかです。ところが、問題発見、問題解決を加速するためではなく、管理強化のために“見える化”が行われているケースも少なくありません。何のための“見える化”かを常に意識することが大切です。

組織横断的な“見える化”の仕組みを構築する
 一方、“見える化”の仕組みで問題が発見されたとしても、「問題発見者=問題解決者」とは限りません。多くの場合、問題解決には複数の部門が連携して取り組む必要があり、さらに、問題発見から解決に至るサイクルは、継続的に運用していかなければ、仕組みを機能させることにはなりません。ITだけに頼るのではなく、人間系も含めて部門間の情報共有やコミュニケーションをいかに円滑に図るか。こうした部門横断、機能横断的な取り組みの中で、“見える化”の仕組みを位置づける必要があります。

※本記事は、ローランド・ベルガーの遠藤功氏への取材および同氏の著書を参考に構成しました。
参考文献:遠藤功著『現場力を鍛える』『現場力復権』(いずれも東洋経済新報社)、『経営戦略の教科書』(光文社新書)/遠藤功・山本孝昭著『「IT断食」のすすめ』(日本経済新聞出版社)

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説明図

現場力を形成する5つの要素能力
出典:株式会社 ローランド・ベルガー

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