メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 5月号(No.166)
  • 生産システムのグローバル展開を見据えた
    ERP、MES、FAシステムの効果的な連携と活用のポイント

経済環境の構造的変化などにより、日本の製造業は生産拠点と販売拠点の海外シフトを急速に進めています。海外で日本国内と同一品質の製品を効率的に製造するためには「業務の標準化」が重要です。また、生産システムの最適化を図るためには、ERP※1、MES※2、FA※3システムのシ―ムレスかつ効果的な連携が求められます。そこで今回は、製造現場の「見える化」を実現するためのポイントを整理してみましょう。
※1 ERP:Enterprise Resource Planning
※2 MES:Manufacturing Execution System
※3 FA:Factory Automation

グローバル対応を踏まえて
業務プロセスの標準化を図る

 日本の製造業を取り巻く環境は、まさに変化の過渡期にあります。新たな市場を求める多くの企業が、従来では想像もつかなかったスピードでアジアの新興国を中心としたグローバル戦略を推し進めています。経済産業省が発表した「海外事業活動基本調査」によると、製造業の海外生産比率は年々上昇する傾向にあり、2008年度で17.0%に達しています。業種別の海外生産比率で見ると、自動車を中心とした輸送機械が39.2%で最も高く、次に情報通信機械が28.1%で続いています。こうしたグローバル化は生産のみならず販売にまで波及し、日本企業は製造と販売の両面から新たな対応を迫られています。
 製造拠点のグローバル展開をスムーズに進めるためには、日本の製造現場でこれまで培ってきた生産ノウハウを、どのような形で海外に展開していくかがポイントになります。スムーズな展開を実現するためには、まず現状の生産管理手法を管理要件の視点から整理し、業務プロセスの標準化を図ることが重要です。標準化を行ったうえで、業務を支えるITシステムをグローバル環境に対応させることが成功への近道と言えます。
 ところが、海外展開を急ぐあまり、業務の標準化が十分でないまま、拠点の立ち上げやシステム化を進める企業が見られます。このような方法では製造プロセスの個別化を招きやすく、各国の拠点に展開したシステムを集中管理する段階になって「スムーズに連携ができない」といった問題が起こりかねません。こうしたことを未然に防ぐためにも、システム化を進める前の段階で、製造現場を含めた業務プロセスの標準化を綿密に実行する必要があります。
 標準化のメリットは、管理工数の削減だけにとどまらず、ナレッジメリット、スケーラビリティの向上にも貢献します。例えばある国、ある地域で需要が急速に拡大し、その拠点の生産キャパシティが不足に陥ったとします。このような場合でも、業務の標準化ができていれば生産に余裕のある拠点に製造の一部を移管することで十分にカバーできます。しかし標準化ができていなければ、拠点を拡大したスケールメリットを生かすことができず、ビジネスチャンスの喪失にもつながりかねません。製造拠点をグローバル展開する際には、「何を実現したいか」を明確に意識したうえで、標準化を進めることが重要です。

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優先順位や情報の粒度を明確化し
ERP、MES、FAシステムをシームレスに連携

 グローバルレベルで企業合併やM&Aが進むだけでなく、ビジネス環境の変化に合わせた事業再編が加速したことにより、ビジネスプロセスを再構築する企業が増えています。こうした企業の多くが、ERPの新規導入・リプレースを進めています。自社のビジネスプロセスを再検証し、環境変化に強い企業体質に改善することは、ビジネスを展開するうえで大きなアドバンテージになります。
 生産システムの最適化を図るためには、全社的な視点からの業務の標準化を実現するERPに加え、製造現場までを対象にした垂直方向の統合、つまり ERP、MES、FAシステムのシームレスな連携を実現することがポイントになります。
 効果的な連携を実現するには、利用目的に合わせて情報の「粒度」を最適化することが重要です。例えばERPとMESの連携において、財務諸表作成・報告するための製造原価管理を目的とした場合と、業務の無駄の削減、重複作業の削減、機械の稼働時間の最適化など現場レベルの作業改善までを目的とする場合では、最適な粒度が異なります。目的を明確化しておかなければムダが生まれるなど、本来のメリットを享受できません。
 MESとFAシステムとの連携においても、同様のことが言えます。例えば、不良品の発生を現場に知らせることを目的とするのであれば、不良品を発見した時点でアラームや警告ランプで不良品の発生を知らせる簡易システムで十分です。しかし、不良品発生比率を拠点ごと、発生時間ごとなどに比較したり、生産ラインごとに分析したりする用途であれば、MESとFAシステムとの緊密な連携が必要になります。このように、生産システムの最適化を図るためには、利用目的を明確化することが重要になります。

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ワンストップ導入とテンプレートの活用で
標準化をスムーズに実現

 製造現場の「見える化」を実現するERP、MES、FAが連携したトータルシステムを構築するにあたり、導入するソリューションだけでなく、構築支援ベンダーの的確な選定が早期立ち上げのポイントになります。導入コンサルティングから設計、開発、保守までをワンストップで応えられるベンダーであれば、個別導入では得られないメリットが得られます。
 1つは、コスト削減とスピード化です。コンサルティング、設計、開発を個別に進めると、フェーズごとにナレッジの引き継ぎが必要となり、ナレッジトランスファーにかかる時間とコストの発生が避けられません。しかしワンストップ導入であれば開発工程が途中で分断されることなく、コストも最小化できます。
 2つめは、整合性の確保です。複雑なシステムを長期間かけて導入する場合、設計から開発、開発から導入、導入から運用・保守へと、フェーズが移行するたびにコンセプトに「ブレ」が生じることがあります。ワンストップであれば、フェーズ移行に際しても整合性の維持が可能となり、影響を最小限に抑えることができます。
 3つめのメリットは、責任範囲を明確化できることです。開発と保守で役割分担を切り分けてしまうと、設計や開発の段階で、保守業務まで意識が届きにくくなるデメリットがあります。導入時・導入後に深刻なトラブルが発生した場合、ベンダー間の調整と対応に時間がかかる可能性も少なくありません。
 また、パッケージやテンプレートの活用は、導入期間の短縮につながり、結果的にコスト削減に貢献します。スクラッチ開発のシステムをグローバル規模で複数拠点に展開するとしたら、そのシステム群の標準状態維持に相当な労力を費やすことになるはずです。しかし、テンプレートやパッケージで標準化を行っておけば、コードの仕様や業務プロセスなどの維持が容易となり、多拠点に展開したシステムを長期間にわたって最適な環境に保つことができます。このように、様々なノウハウを凝縮したパッケージやテンプレートは短期導入やコスト削減だけでなく、標準状態を維持する役目も果たします。

※本記事は、株式会社クニエの加藤忠康氏への取材内容をベースに構成しました。

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説明図

業務プロセス標準化のメリット
出典:株式会社クニエ

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