メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 5月号(No.166)
  • グローバル展開を円滑にする業務プロセスの標準化とデータ連携の自動化で
    付加価値が高い生産システムを実現する

人物写真

株式会社クニエ
マネージングディレクター
加藤 忠康 氏

製造業では、変化する顧客ニーズに迅速に対応するため、様々なシステムで構成される生産システム全体を「見える化」し、経営判断をはじめとした様々な意思決定に活用することが求められています。こうしたことを実現するためには、業務プロセスの標準化と、製造機械とシステム間のデータ連携が不可欠です。今回は、自動車関連、ハイテク機器等、多くの製造分野でコンサルティング実績が豊富な加藤氏に、生産システムの効率的な導入のポイントについて伺いました。

加藤 忠康(かとう・ただやす)氏プロフィール
東北大学工学部卒。戦略系コンサルティング会社を経て、1998年日本アーンストアンドヤング・コンサルティング(現 株式会社クニエ)入社。10年以上に及ぶコンサルティング経歴の中で、ハイテク、自動車関連、電機・機械、消費財メーカーを対象に、新製品開発プロセス改革、調達改革、需要・供給管理、物流改革、グローバルサプライチェーン改革等に関するコンサルティングに多数従事。専門領域は、サプライチェーンマネジメント(需要・供給管理、物流管理、販売管理)、戦略的調達。
URL:http://www.qunie.com/ (新しいウインドウが開きます)

生産システム導入のポイントは
業務プロセスの標準化

 「ビジネスのグローバル展開において、日本企業と欧米企業での大きな違いは、業務プロセスの標準化を実現しようとする目的意識の強さです。欧米企業は、スケールメリットを常に意識し、標準化を維持するための組織作りやルール作りに注力しています。また、権限を集約するなどにより個別化を防ぎ、標準化を維持する枠組み作りにも余念がありません。彼らは標準化によってスケールメリットを得られるものと、各エリアのマーケット特性に合わせてローカライズすべきものを明確に区別し、大きな成果を獲得しています。こうした観点から、日本の企業も標準化の実現を強く意識する必要があります」
 加藤氏は、標準化に対する意識の違いと有効性を語ります。業務プロセスを標準化すれば、海外進出した際に国内と同様のプロセスで管理ができ、製造コストの削減につながります。さらに、新たな拠点へのスケールアウトも容易になります。
 一方、業務に様々な工夫が凝らされている日本の製造現場では、標準化した生産システムはなじみにくいといった声があります。また、入力の工数が増えるなど負荷が高まることに対して、現場からの拒否反応も少なくありません。
 「日本の製造現場は、技術は自分で工夫して身につけるという意識が伝統的に強くあります。これは、製造現場のみならず、設計部門でも営業部門も同様で、日本企業はノウハウを共有化して組織全体を底上げしていく意識が欧米と比べて弱いというのが私の実感です。こうした問題を解決する方法の1つは、標準化を推進する担当者を、企業がしっかりとバックアップすることです。標準化を推進する担当は、現場から孤立しやすい傾向にあります。そこで、人事的な評価も含めてサポートすることが大切です」
 現場の能力が高い日本の製造業は、「独自の工夫」を重ね改善を続けてきました。こうした改善による個別化は標準化を進めるうえでは妨げになる可能性があります。そこで、独自の工夫を「新しい標準」とすることで、競争力強化の源泉とすることができます。

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自動化とM2Mの推進で
高い生産性のシステムを構築

 「日本の製造業が付加価値を高めていくためのキーワードの1つが自動化です。少子高齢化などで労働力が低下していくなかで、機械の依存度は高まっています。近年、製造機械の高性能化も進み、複雑な作業にもフレキシブルに対応できるようになりました。そのため、今まで人間でなければできなかった工程も機械でカバーできるようになり、今後は設備装備率が上がっていくと予想できます」
 製造現場の機械化が進むと、今まで人を介していた作業がマシン対マシンの「M2M」による情報のやりとりが様々な領域で増えていくと加藤氏は指摘します。
 「ある先進的な建設機械の企業では、海外で稼働している建設機械の状態を定期的にチェックし、送信、日本でモニタリングする仕組みを構築して、メンテナンスやサポートに活用しています。これまで人間が介在して行っていたオペレーションを機械同士が通信することで補完するようになっています。生産現場においてもこうした自動化がさらに進展していくはずです。このようなトレンドをいち早く取り込むことが、日本の製造現場の生産性をさらに高めるポイントだと思います」
 また、海外展開するにあたり、日本の製造拠点はマザー工場としての役割が強く求められるようになります。そのためには、最先端の生産システムの立ち上げや技術開発を進めると同時に、新しい生産工程を標準化して海外に輸出していく機能も求められます。こうした製造拠点の標準化を強力に推進することで、新たなビジネスチャンスが生まれると加藤氏は強調します。
 「日本のあるメーカーは、門外不出としてきた自社の生産プロセスや管理手法を情報システムとセットにしてパッケージ化し、エンジニアリングサービスとして海外に販売する事業を始めています。今後、製造のノウハウをサービスとしてパッケージ化して輸出するモデルは、増加していくでしょう。従来の“ものづくり”の枠にとらわれない柔軟な発想がますます重要になります」

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目的意識の明確化とコミュニケーションで
生産システムの早期定着を実現

 日本の製造業はこれまで、現場の優秀な人材の創意工夫に支えられて発展してきました。製造現場への定着やシステム利用者の教育は重視すべきポイントです。現場への浸透を図っていくうえで、目的を明確にすることと、現場とのコミュニケーションを積極的に続けていくことが重要であると加藤氏は指摘します。
 「新たな仕組みを導入することに対し、製造現場は拒否反応を示すことがよくありますが、システムの導入目的を明確化し、導入することによるメリットを現場に浸透することができれば、定着・運用はスムーズに進むでしょう。QCD(Quality, Cost, Delivery)の改善を日々実践している製造現場は、やみくもに反対しているわけではありません。メリットを認識できれば抵抗感はなくなるはずです。また、ERPの入力が煩わしさは、ツールを活用するなどしてオペレーションを簡略化し、現場で得られるメリットを強調することで比較的スムーズに受け入れられると思います」
 一方、海外拠点への展開では、現地の製造担当者に対する教育に工夫が必要です。日本の製造現場では、「暗黙の了解」といったことにより、あるレベルから教育を始めることができます。しかし海外では、こうした感覚は通用せず、1から10までもれなく教育しなければなりません。そのためにも文化の違いを意識しながら積極的にコミュニケーションを図っていくことが重要です。
 「人材の流動性が高い海外は、業務の標準化やマニュアル化に長けています。グローバルに対応していくうえでは、手順書を作成するなどして作業内容を明確化し、誰がその作業を担当しても一定水準が保てるように工夫することです。製造現場には、宝となる情報や財産が眠っていると思いますので、まずはドキュメント化による見える化・コミュニケーションから始めて下さい」

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説明図

M2Mの拡大
出典:社団法人 電気通信事業者協会ホームページ記載データをもとに株式会社クニエが分析

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