メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 6月号(No.167)
  • 経営トップのリーダーシップと継続的な改善の取り組みが
    BCPの実効性と企業価値を高める

人物写真

株式会社インターリスク総研
研究開発部 マネジャー・主任研究員,MBCI
BCI日本支部代表
篠原 雅道 氏

東日本大震災により、改めてクローズアップされたBCP策定とBCMS構築。企業や自治体などの組織が災害等の非常事態に遭遇したときに、円滑な事業の継続を図るためには、どのような仕組みを構築し、どのように運用すればよいのでしょうか。多くの企業でBCMのコンサルティングを手がける篠原雅道氏に、今回の震災において事業継続性を確保した企業の例を紹介いただきながら、BCP/BCMS構築のポイントを伺いました。

篠原 雅道(しのはら・まさみち)氏プロフィール
1992年4月三井海上火災保険株式会社(現・三井住友海上火災保険株式会社)入社。1996年11月株式会社インタリスク(現・株式会社インターリスク総研)設立に伴い出向。1997年4月からはロンドン事務所長として、コンサルティングと欧米のリスクマネジメントに関する情報収集等に従事。帰国後BCMコンサルティング事業を日本でいち早く立ち上げ、BCIジャパンアライアンス、新型インフルエンザ対策コンソーシアムを設立。事業継続協会(BCI:The Business Continuity Institute)日本支部代表、特定非営利活動法人 事業継続推進機構 副理事長としてBCMの普及・啓発活動にも従事。経済産業省BCP国際標準化委員会委員及びBCP策定ガイドライン委員会委員、内閣官房情報セキュリティ委員、内閣府中央防災会議「企業等の事業継続・防災評価検討委員会」委員、厚生労働省企業向け新型インフルエンザ対策ガイドライン改定委員会委員、日本情報処理開発協会BCMS技術専門部会委員長なども務める。
URL:http://www.irric.co.jp/ (新しいウインドウが開きます)

想定外の事象にも対応できる
結果事象の考え方

 「東日本大震災では、BCPの実効性が改めて問われることになりました。海外からは内部監査の観点での日本企業の事業継続対策が注目を集めています。従来からBCPを策定し、訓練や教育を継続的に実施してきた企業は、今回の震災においても一定の成果を残しています。例えば、茨城県と鹿児島県に工場を持つ従業員500人規模の企業は、茨城工場が被災する事態に陥りましたが、鹿児島工場での代替生産にいち早く切り替えることで、危機を乗り越えています。この企業では、事業継続に必要な資源を確保する手段を事前に準備していたことが直接的な成果につながりました」
 篠原氏はBCPを有効に機能させるためには、経営トップの意識とリーダーシップが重要であることを指摘します。前述の企業も、経営トップが平常時から社員に事業継続の意識を高めてきたからこそ、緊急時にもしっかりと対応できたというわけです。
 「BCPの考え方は、『原因事象』と『結果事象』の2つに大別することができます。日本企業の多くがこれまで採用してきた原因事象の考え方は、個別の地震、火災、感染症などのリスクに対して対策を講じるものです。これに対し、海外で一般的な結果事象の考え方は、リスクにとらわれず、事業継続に必要な経営資源を確保する手段から検討するものです。例えば、本社機能が麻痺した際の行動、キーパーソンの選定、原材料が調達できなくなった時の対応などをすべて考慮したうえで想定外の事象に備えるものです。東日本大震災を機に日本でも結果事象の考えが根付くはずです」
 今回の震災では、企業間の連携によって事業の継続性を確保した例もありました。篠原氏は、非常時は競合企業を含めた協業が有効で、連携企業に製造を委託したり、情報システムの一部を設置したりすることも検討すべきであると強調します。
 「平常時から横連携を意識し、競合企業と良好な関係を構築しておくこともBCPの一環です。例えば、部品メーカーが被災すると、完成品メーカーにまで影響が及ぶことは避けられません。ある部品メーカーでは、製造ノウハウの一部を完成品メーカーに公開し、緊急時の対応を委託しています。経営者の理念や戦略による側面はありますが、サプライチェーンの維持や社会的な供給責任を果たす観点から、こうした対策を講じることも選択肢の1つとなります。特にオンリーワン製品を製造する企業や、人命に関わる製品を扱う企業は、社会や国民に影響を与えることを意識すべきでしょう」

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組織の文化にBCMを組み込み
継続的な改善を実施する

 篠原氏は、BCPの策定では経営トップがコミットすることが重要であると指摘します。
 「私がコンサルティングを手がけた従業員3,000人規模の事業者では、プロジェクト会議に経営トップが必ず出席し、陣頭指揮を執りました。こうすることで全社的な意識が高まり、導入がスムーズに進みました。従業員のモチベーションを維持するために、経営トップが定期的にコメントを出すことも大切です」
 BCP策定時において、リスクや優先順位を見極めるための「事業インパクト分析(BIA)」を実施しますが、そこでのポイントは目標復旧時間(RTO)や投資対効果を考慮した資源の配分です。さらに、BCPの有効性を維持するためにはマネジメントシステムとして継続的に運用することが重要になります。
 「事業継続マネジメントシステムBS25999-2では、組織の文化にBCMを組み込み、PDCAサイクルによって継続的に管理することを“仕組み”として規定しています。また、平常時にPDCAサイクルでマネジメントシステムを維持し続けることが、緊急時の対応につながるといった意識で管理しています。BS25999-2では、原材料の供給先を含めた取引先についても、BCMの確認を求めるとしていることもあり、取引先と合同で訓練を実施するべきでしょう」
 また、緊急時の対応に関しては、事業部ごとのBCMが重要であり、全社を統括する緊急対策本部は、組織としての意思決定、経営資源の配分やコーディネーションに徹するべきと篠原氏は語ります。従業員が的確に行動するためには、リアリティのあるシナリオを作成し、日頃より緊張感を持って訓練を実施することが必要です。
 篠原氏は最後に、今回の震災で得られた教訓をBCMS構築にフィードバックすべきだと語ってくれました。
 「新型インフルエンザが発生した際にも、BCPを策定したものの、継続的な改善に結びつかないケースが多くありました。インフルエンザの危険性は今でも解消されているわけではなく、継続的な取り組みが必要です。また、今後起こりうる電力不足による影響に対しても、十分な電力が調達できなかった場合の対策を検討することが不可欠です。企業としてできることは何か、社会的責任を果たすうえで実行すべきことは何かを考え、すべてのステークホルダーへの影響を考慮しながら、マネジメントを確立していく必要があります。そして、組織としてリスクを一元管理していく姿勢が重要です。そのことが結果的に企業を強くし、産業を強くし、国家を強くすることにつながります」

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説明図

組織の文化にBCMを組み込むBS25999-2
出典:株式会社インターリスク総研

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