メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 8・9月号(No.169)
  • IFRS対応における企業の基本的な考え方と
    実務レベルの取り組み

現在、金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議により、日本国内における国際会計基準(IFRS:International Financial Reporting Standard)の適用方針について議論が進められています。これまでは、早ければ2015年3月期からの強制適用というロードマップが示されていましたが、2011年6月には金融担当大臣が「2015年3月期の強制適用は考えていない」「強制適用であっても5〜7年程度の十分な準備期間の設定を行う」というコメントを公表。仮に強制適用の結論が出た場合でも、その時点からの活動開始で十分に間に合うような準備期間が確保されそうです。その一方で、IFRSの原則主義に基づく会計処理判断や資産負債アプローチ、公正価値重視といった基本的な考え方を短期間で理解するのは困難なことも事実です。今回は、IFRS対応で必要となる企業の取り組みを実務レベルの観点から考えてみましょう。

自社の経営方針に基づき
対応方式や移行方針を策定

 すでに120ヵ国以上が採用しているIFRSは、2017年以降に日本国内で強制適用される可能性が高まりました。対象となる上場企業にとっては、まだ十分に時間があるといえそうですが、正式決定後の作業をスムーズに進めるためには、IFRS自体を理解する事前の準備を怠らないことが重要です。
 IFRSの強制適用を前提にした準備作業は、次の3ステップに整理できます。
ステップ1:基準学習
 IFRSの特徴である原則主義、資産負債アプローチ、公正価値重視といった基本的な考え方や、概念フレームワークの理解が必要です。この理解がなければ自社への適用検討は進められません。なお、基準学習は座学だけではなく、次ステップのインパクトアセスメントと合わせて、ワークショップ形式で実施することが有効です。
ステップ2:インパクトアセスメント
 各基準と現行実務の差異を把握したうえで、どのように基準に適用させることがベターかという適用指針を検討し、それに伴うビジネス、業務プロセス、情報システムに与えるマクロレベルの影響を把握します。対象にするのは、親会社に加えて、各基準で影響の大きい子会社です。この子会社に関する検討も踏まえて、移行フレームワーク・ロードマップを作成します。
ステップ3:移行計画の策定
 インパクトアセスメントの検討結果に基づき、業務プロセスの見直し、内部統制の検討、ITの変更要件整理、連結パッケージの要件整理などを行い、移行計画を策定します。また、並行してグループアカウンティングポリシーも作成します。経理部門担当者の養成が困難な場合には、シェアードサービスの立ち上げも検討対象となります。
 こうしたステップを経て、各企業は自社の経営方針に基づき、次のIFRS対応方式、IFRSへの移行方針を決定していきます。
IFRS対応方式
方式@:各国基準の財務諸表をIFRSに変換
 会計処理は各国基準にて実施し、連結段階でIFRSに組み替えます。組み替えには子会社の個別サイドで行うケースと、親会社が一括して行うケースの2通りがあります。この方式のメリットは、ITの変更等に伴うコスト負担が少なく済むことです。ただし、連結資料収集の負荷が大きい、連結処理に時間がかかり経営判断が遅延する、基準・業務プロセス・情報システムが多岐に渡り管理負荷が大きいというデメリットが生じます。
方式A:全子会社がIFRS対応の財務諸表を作成
 連結対象のすべての子会社が、IFRSによる会計処理を実施する方式です。同時に、各社の個別財務諸表は、各国基準で作成します。子会社も会計基準をIFRSに統一することで、グループ全体で業務プロセスと情報システムの標準化を実現(グローバルテンプレート)。連結経営管理の迅速化と質の向上が図れます。一方では、子会社の負担が増大します。各子会社は、IFRS対応の財務諸表に加え、自国基準に基づく個別財務諸表を作成しなければならないほか、IFRSに習熟した経理要員を育成する必要があります。
IFRSへの移行方針
 インパクトアセスメントの結果を受けたグループとしての対応方針で、次の3ケースが想定できます。
ケースT:最低限の対応
 IFRSへの組み替えは連結決算時に親会社で対応します。組み替えに必要となる情報は連結データ収集時に各社から収集しますが、会計方針の統一が必要なものは見直しを実施し最低限のIT変更などを実施します(IFRS対応方式@)。導入負荷やコストは小さいものの、会計基準・業務プロセス・内部統制・ITが多種・複雑化することにより、オペレーションコストが現状より増大することを理解しておく必要があります。
ケースU:ケースVを最終目標に中長期的に移行(段階移行)
 グループの経営体力に応じて、特に重要な子会社からステップバイステップで移行を進めます。具体的にはグループアカウンティングポリシーを作成し、業務プロセスの見直し、内部統制の検討、ITの変更要件整理、連結会計システムの要件整理などを実施し、移行計画を策定。ここではプロジェクト長期化に伴うマネジメントの整合性確保、二重投資の抑制が求められます。
ケースV:統一化されたグループ管理基盤の導入(グループ管理統一化)
 IFRS移行を契機に、グループ全体の業務プロセス・内部統制を統一し、ITもグローバルテンプレートを新たに展開します(IFRS対応方式A)。

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複数会計基準を想定した
主要IT要件とは

 IT要件は、企業として明確にしたIFRS対応方式や移行方針、さらにはグループアカウンティングポリシーに基づき定義していきます。IFRS対応での主要IT要件は次の3つに整理できます。
(1)個別基準への対応
 IFRSの導入に伴い、各個別基準に対応したシステムで改修が必要となるケースが発生します。内容は業種によっても異なりますが、特に影響が大きいのは、固定資産、開発費、収益認識、金融商品などです。個別基準対応でのシステム改修の負荷とコストおよび実現可能性を見極めたうえで、連結グループ全体でのIFRS対応方針を策定し、連結システムの見直しに結び付けていく必要があります。
(2)連結システムの見直し(注記情報の作成・収集機能も含む)
 注記情報の作成・収集機能も含め、グループ全体での連結システム運営の見直しが必要です。具体的には、IFRS対応方式と合わせた検討を進めていきます。子会社が作成・提供する連結用データは確実に増加するため、連結作業負荷の増大に加え、新たな内部統制の組み込みも求められます。連結データ作成を極力簡素化させる工夫が重要です。
(3)複数会計基準への対応
 IFRSの強制適用対象は連結財務諸表で、単体財務諸表は日本基準が当面存続されます。したがって、IFRSと日本基準の2つの会計データが必要となるケースが発生します。パッケージソフトなどを活用すれば、複数元帳機能により決算業務の効率化が実現可能ですが、応分のコスト負担も発生します。なお、複数基準の会計データの作成・管理プロセスを新たに設計する場合には内部統制も課題となります。

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説明図

IFRS対応の作業リスト
出典:三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)

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