メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 8・9月号(No.169)
  • IFRSの適用を考える
    〜覚える会計から考える会計へ〜

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三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
金融事業本部 金融第一事業部
金融システムプロジェクト 上席プロフェッショナル
永井 丈夫 氏

IFRSの導入時期や対象範囲は今後の企業会計審議会での審議を見守る必要がありますが、IFRS自体の基本的な考え方の習得や、自社としての対応基本方針のあり方等については事前に検討を進めておいたほうが無難と言えます。仮に強制適用となった場合には、これらが実際の移行計画やグループアカウンティングポリシー作成のベースとなります。今回は、インパクトアセスメントのコンサルティングやIT要件定義などを支援した実績のある永井氏に、IFRS導入で必要になる素養や具体的な実務のポイントを伺いました。

永井 丈夫(ながい・たけお)氏プロフィール
国際基督教大学教養学部卒。三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社入社後、予算、原価、損益、税務、会計等の実務に約20年間従事。この間、会計・原価計算等各業務のシステム化および管理会計の制度設計・システム化を推進。その後、事業部門に転進し、会計パッケージ開発、ERPをベースとした業務要件コンサルティングや、内部統制構築支援コンサルティングに従事。実務経験を通じた顧客視点でのアドバイザリーには定評がある。セミナー・研修会等の講師実績も豊富。

実務の観点からIFRSを理解し
グループへの適用を構想する

 「IFRSの理解を早めるためには、実務的な観点からIFRSの個別基準と自社の実際の会計処理との差異を明らかにしていくことが有効です。つまり、実務上の差異を把握していくことで、結果としてIFRSの概念が見えてきます。最初からIFRSの全体像を把握しようとして、原則主義や資産負債アプローチといったIFRSの特徴、概念フレームワークなどに取り組んで理解しようとするのは困難だといえるでしょう。実務上の差異を把握するためには、基準学習とインパクトアセスメントをセットにしたワークショップ形式で参加者が各自の考えを述べ合う検討会を進めていくことが良いでしょう」
 連結財務諸表を対象としたIFRSは、影響範囲が広範囲に及ぶことが特徴の1つです。準備作業を進めるうえで重要となるのは、PMO(事務局)での実務に立脚したうえでの、IFRSに対する理解とグループへの適用にあたっての構想力、と永井氏は指摘します。親会社の経理部門が、インパクトアセスメントを実施するだけでも、課題リストは膨大な量になります。その課題に対してグループとしての観点から重要性を見極め、実務上での実現性を踏まえた適用方法を検討し、子会社も含め確認を進めていくというステップを踏まないと、効率的なプロジェクト運営にはなりません。
 「子会社に対して、単に保有有形固定資産の償却方法や耐用年数を問い合わせてもIFRS適用に向けた検討とはなりません。必要なのは、PMOでの十分な事前検討に基づいた実務レベルにブレークダウンした質問、時の経過とともに補修費用の増加がないか、といったIFRS適用方法集約に向けた具体的な質問です。こうした調査項目を用意することで、子会社の実態を集約できます。ここで初めて、実務的な負荷も踏まえた実現性やシステム的な対応負担が大きい、といった検討ができるようになります」

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IFRS導入で求められる
覚える会計から考える会計への転換

 IFRSの導入方針は各企業の経営方針によって左右されます。永井氏は、IFRSを経営方針にどう位置づけるかによって、企業の取り組みは変わるが、いずれにしろ経営管理面ではIFRSを意識する必要があると語ります。
 「IFRS対応を、あくまで投資家に向けた連結財務諸表の開示目的をメインと位置づける企業は、コストや負荷の軽減を重視し、連結決算時での組み替えを行うこととなるでしょう。この場合は、会計方針の統一に必要な見直しを実施し、ITの変更なども最低限にとどめることになります。一方、売上高の海外比率が大きい、資金調達もワールドワイドに行い、海外でのM&Aも積極的に進めているような企業は、IFRS移行を契機に、IFRSベースでの会計処理に統一し、業務プロセスや依拠するITもグローバルテンプレート化し各子会社に展開するという選択肢もあるでしょう」
 いずれの方式でIFRSに対応した場合でも、IFRSでの開示を行うこととなるので、十分な説明責任を果たすためにもIFRSを意識した経営管理が必要となるでしょう、と永井氏は指摘します。その場合、必ずしもIFRSに全面的に則ったマネジメントとする必要はないのではないか、と語ります。
 「例えば、個々のビジネスにおいて将来キャッシュフローがどの程度になるのか、というのは経営管理の1アイテムとしても十分価値があるといえますが、契約上等で確定された要素が少なく多分に見積り要素が大きい場合、どこまで経営管理レベルで活用するかは企業で判断すれば良いと思います。IFRSの良いところを経営にうまく活用するという考え方が重要だと思います」
 IFRSを導入することになれば、EUの実態調査からも、グループ企業間における円滑なコミュニケーションが重要になります。プロジェクト担当者のコミュニケーションスキルの育成は、企業にとって課題になります。永井氏は、IFRSの導入に伴い、経理部門や情報システム部門に求められるスキルが、従来とは異なる側面が出てくることを指摘し、次のように話してくれました。
 「青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科の橋本尚教授によれば、従来の会計研修では、“会計基準自体の知識”習得が80%を占めていましたが、IFRSの研修では、“基準適用の能力”を身につける研修が50%を占めます。つまり、子会社とのコミュニケーションでは、取引の実態はこうで、IFRSの基準に照らしこういうふうに考え、このように判断した、と基準適用のプロセスについてきちんと説明できるようなコミュニケーションスキルを身につけなければなりません。今後は覚える会計から考える会計へと、意識を転換する必要があると思います」

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説明図

IFRS時代の教育研修
出典:橋本尚著「わが国における国際財務報告基準(IFRS)教育の方向性」(『会計プロフェッション』2011年3月 第6号
青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究学会・刊)の内容をもとに、MDISで作成。

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