メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 10月号(No.170)
  • 身の丈に合ったBPM導入で個人依存の業務からの脱却と
    “見る化”の仕組み作りを推進

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日本BPM協会 事務局
松井 保憲 氏

業務や業務プロセスを可視化する手段として企業が注目するBPM(Business Process Management)。すでにBPM実践を支援するBPMS(Business Process Management Suite)も数多く登場していますが、機能だけに着目すると効果的な導入や継続的な改善は図れません。BPMの本質や基本的な考え方はどのようなものであり、企業は何を理解しておくべきなのでしょうか。今回は、BPMセミナーの講師をはじめ、BPM普及・啓発活動を推進している松井氏に、BPMの必要性やBPM導入を効果につなげるポイントについて伺いました。

松井保憲(まつい・やすのり)氏プロフィール
三菱電機、三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)にて衛星制御システム構築、地図情報システム開発、情報システム検証センターや金融リスクマネジメントの仕組み作りに従事。情報サービス産業協会(JISA)などで、技術検討部会のリーダーを歴任。現在は独立し、BPMおよびビジネスルールマネジメントの研究に従事する一方、数多くのBPM関連セミナーで講師を務める。常にビジネス視点からのシステム構築方法を研究している。日本BPM協会事務局所属。日本技術士会会員、技術士(情報処理部門)。

チームによる業務に転換し
段階的なレベルアップを推進する

 「BPM導入による最大の効果は、個人依存の業務からチームによる業務への転換です。そのための仕組み、仕掛けがプロセスを記述することであり、プロセスを運用して観測し、改善しながら一連のサイクルを継続的に回していく。ところが現状では、基本的なルールに基づいて業務を遂行していても、分業の中身は個人依存の状態であることが少なくありません。特に顧客接点プロセスやサポートプロセスは人が介在するため、基幹システムのように、常に決まった手順で業務を進めることが困難です。加えて、ガバナンスの確立や環境変化への対応も求められます。そこで人間が主役のプロセスを志向し、業務プロセスが定義・共有・実行・管理されている場を作ることが重要です」
 松井氏はまず、BPMの本質が、個人依存の業務から脱却した業務プロセスの記述とマネジメントの仕組みづくりにあることを強調します。ここでいう業務プロセスとは、分業における全体の構造のことを指します。個人が自らの業務のみに着目し、試行錯誤を繰り返すだけでは、業務プロセス全体で悪循環やボトルネックが生じるほか、伝達の不整合や欠損、情報の停滞といった課題に直面してしまいます。
 松井氏はBPMを活用するにあたり、業務プロセスの“見える化”にとどまらず、一歩進めた“見る化”にまで踏み込むことがポイントだと語ります。
 「多くの企業が業務プロセスの“見える化”を重視していますが、重要なことは、“見える化”してどうするかという方針を企業自らが議論し、実行していくことです。つまり、当事者が主体的、積極的に見に行く“見る化”の仕組みが必要です。そのためには当然、当事者が自らの業務だけではなく、業務プロセスに関わる担当者すべての業務を理解しておく必要があります。BPMの考え方は、“見える化”から一歩進めた“見る化”のために必須だといえるでしょう」
 BPMは、導入すればすぐに大きな効果が期待できるというものではありません。また、プロセスの可視化・実行・改善サイクルが確立されていなければ、ITツールのコントロール、オペレーション、モニタリングといった機能を生かすことも困難です。松井氏は、自社の“成熟度”を把握したうえで、“身の丈に合った”BPM導入を推進すべきだと語ります。
 「例えば、今まで業務プロセスが見えていない組織に、いきなり戦略的、差別的な魅力ある業務プロセスを定義しましょうといっても、現実的ではありません。こうした組織では、まず現状のプロセスを記述するところから始め、業務プロセスが反復されている、定義されているという状況にしていくことが第一歩となります。つまりBPM導入では、企業が自らの成熟度に応じた部分的、段階的なアプローチが有効です。段階的にマネジメントのやり方を変えていくオペレーションを実行し、レベルアップに必要な機能にITツールを活用していく。BPMは、そのマネジメントを支援する方法論であり、仕組みだということを十分に理解してほしいと思います」

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KPIを明確に設定し
ビジネスに貢献する仕組みを構築する

 チームによる業務で目指すのは、組織目標の達成であり、ビジネスへの貢献です。松井氏は、企業の成熟度がレベルアップするに従い、KPI(Key Performance Indicator)や改善点が明確になってくると語ります。
 「業務プロセスを“見える化”するだけでは、何をどうすべきかがわかりませんが、“見る化”することで、例えば受注から出荷までの時間を50%短縮する、品質を30%向上するといったKPIを設定できます。最初に、プロセスごとに分解して、これらのKPIを明確にすることで、ある業務のどこを改善すべきか把握できます。また、観測点を細かく設定することで、その評価・改善によって次のレベルにアップできます。結果的に、ビジネス・事業とIT・業務システムが一貫性と連動性を持ち、ビジネスに貢献する仕組み、仕掛けを構築できるということです」
 BPMは特定部門への導入も可能ながら、基本は全社的な取り組みであり、経営トップやCIOを責任者とした体制が求められます。松井氏によれば、この責任者のもとで、BPMの仕組み作りを推進する担当者が現場とのコミュニケーションを図りながら、サイクリックな改善活動を継続していくことが不可欠です。そこで情報システム部門はどのような役割を果たすべきなのでしょうか。松井氏は、能動的に動ける人材育成が急務と指摘し、最後に次のように話してくれました。
 「業務担当部門との橋渡しをする人材、“ビジネスエンジニア”を早急に育成する必要があります。これまでは、情報システムを開発したものの、実際には使われないケースも少なくありませんでした。理由は作る人と使う人の断絶があったためです。情報システム部門が業務担当者と話ができ、仕組みを一緒にデザインできるような集団になれば、企業にとっても大きなメリットになるはずです」

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説明図

BPMのターゲット(顧客接点プロセスとサポートプロセス)
出典:株式会社ワディット

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