メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 11月号(No.171)
  • あるべき姿を要員と共有し“業務とIT”“経営とIT”を融合させる
    活力ある情報システム部門を目指す

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社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
専務理事
金 修 氏

社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2011」によれば、グローバル化の進展、新たなITサービス(クラウドなど)の活用といった環境変化により、情報システム部門の体制整備と人材育成は新たな局面を迎えています。その取り組みには具体的にどのようなものが求められているのでしょうか。今回は、JUASが提言する人材育成策で中心的な役割を果たす金氏に、情報システム部門への期待やその役割を中心として、ユーザー企業が取り組むべきポイントを伺いました。

金 修(こん・おさむ)氏プロフィール
1970年 横河電機製作所(現横河電機株式会社)入社。制御用計算機の開発、鉄鋼プロセス向け制御システム、ファクトリオートメーション用コンピュータのSE。1990年 業務改革本部SIS推進部長として業務プロセス改善と並行して、社内情報システムのオープン化・ダウンサイジング化の企画推進。1992年 社団法人日本情報システム・ユーザー協会スタート時に企画担当部長として2年間出向。1994年帰任後、情報企画部長として社内の営業支援、生産管理システムの再構築、海外拠点とのEDI化を推進。1999年 横河ディジタルコンピュータ株式会社代表取締役社長、2001年株式会社ワイ・ディ・シー代表取締役副社長として、主に事業分割や再編に取り組む。2009年3月退任。2009年5月 社団法人日本情報システム・ユーザー協会 参与、2010年6月より現職。
URL:http://www.juas.or.jp (新しいウインドウが開きます)

ユーザー企業の優先課題は
上流工程の戦略立案機能の強化

 「JUASでは年間約150のセミナーを開催しており、受講者は2,000人以上にのぼりますが、近年開催しているテーマはファシリテーションやロジカルシンキング、文章作法など、話し方や聞き方、考え方、書き方といった基礎的なスキルに集中しています。これは、モノづくりだけでなく、利用部門同士や様々なステークホルダーを上手にコーディネーションする能力、上流工程の戦略・企画立案機能の強化をユーザー企業が重視していることにほかなりません。情報システム部門にとっては、その役割を自ら買って出る人材の育成が重要課題の1つだといえるでしょう」
 金氏はまず、情報システム部門に対する期待とその役割が、大きく変わってきた状況を認識すべきだと語ります。従来のプログラミング言語の習得といった開発環境から、マルチベンダー環境でのプロジェクトマネジメント、さらには事業戦略ともリンクするIT戦略・企画策定へシフトしてきました。“モノづくり”の重要性が低下したのではなく、求められる役割の範囲が確実に拡大しているということです。
 ユーザー企業が重要視すべきは、自社の事業戦略を反映した上流工程です。情報システム部門には、さらに全社的な視点から、積極的に他部門へ働きかける活動も求められます。
 「例えば、グローバルで業務プロセスの標準化を推進するプロジェクトでは、ガバナンスの確立を重視し、IT規定やマスターを整備していく必要があります。そこで主導的な役割を担うのが情報システム部門です。どう作るかではなく、何を作るかを考え、積極的に提案していかなければなりません。負担が増大したと悲観的に捉えるのではなく、仕事の面白さが確実に実感できるはずです」
 このように情報システム部門に対する期待、役割の変化に伴い、JUASでは、目指すべき新たなCIO像を提唱しています。具体的には、「これまでの情報システムの最適化の役割に加えて、組織や部門を超えて企業グループ全体を俯瞰した、経営の変革を強力に推進する主導的役割です」。金氏は、CIOが、情報システム部門長とは異なる“発想力”に磨きをかけるべきだといいます。
 「情報システム部門はこれまで、コストダウンや業務効率化という部分で努力をしてきており、成果を上げてきました。ところが財務指標で評価をすると、必ずしもその成果が明らかになっているわけでもありません。つまりITは、利益率や売上の向上にもっと貢献すべきという発想の転換が必要です。これこそがまさに、CIOの役割だといえます。これからのCIOには、全社横断のビジネス変革や蓄積された膨大な情報の活用を先導していくことが求められます」

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“今やるべきこと”に気づいてもらうことが
人材育成の第一歩

 JUASの実施した「企業IT動向調査2011」によれば、情報システム部門では、大幅な増員が見込めない状況下、能力不足解消に向けた取り組みはなかなか進んでいない現状だといいます。その理由の1つが、組織として目指すあるべき姿と要員個人の考え方とのギャップ。金氏は、例えば新人や配転者など、新たに情報システム部門へ配属された人材に対して、求められる役割が変化している現状を、うまく伝えられない企業が少なくないと指摘します。
 「新人や配転者には、情報システム部門の仕事に対して、いまだ従来のようなモノづくりというイメージを抱いているケースが多く、結果として、なぜ自分が配属されたのかと疑問を持ってしまいます。一方で、組織としては“IT戦略策定・IT企画”や“業務システムの改善提案”などの能力開発に対する関心が高いものの、To Beの部分を伝えることができません。当協会では、こうした状況に対して“情報システム部門 新人・配転者向けプログラム”を提供しています。要員個人に、今やるべきことに気づいてもらうのが、人材育成の第一歩だと考えているためです」
 また、組織と個人の考え方のギャップを埋めるうえで有効であるのが、情報システムユーザースキル標準(UISS:Users’ Information Systems Skill Standards)です。金氏によれば、JUASでは、その導入支援に向けたサービス強化を計画しているといいます。
 「UISSの導入はカスタマイズが前提であり、人材の配置や育成のPDCAを回していくには、ユーザー企業自身が工夫する必要があります。その点においてJUASでは、次のステップに進めるような情報やアドバイスをフィードバックできる仕組みを提供できると考え、準備を進めています。こうしたサービスも利用しながら、企業として必要なカスタマイズを実施し、最終的には情報システム部門にとどまらない、全社的な仕組み作りに発展させてほしいと考えています」
 情報システム部門として目指すべきは、業務とIT、経営とITを融合させる活力ある組織です。その原動力は、各要員のモチベーションだといっても過言ではありません。最後に金氏は、要員の1人ひとりに向け、次のようなメッセージを発信してくれました。
 「情報システム部門は、社内の業務プロセスを横串で見ることのできる部門です。特に若手の人材には、その魅力に気づいてほしいと思います。自社の業務プロセスをどう変えればいいか、蓄積された膨大な情報を活用してどう新たなビジネスにチャレンジしていくかを考え、提案できる立場にあります。面白い仕事にチャレンジできるという考え方で、他部門に働きかけながら取り組んでほしいですね」

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説明図

<JUASの見解>目指すべき新たなCIO像
出典:社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2011」

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