メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2013年 1・2月号(No.183)
  • スマートデバイス活用によるワークスタイル変革と企業価値創出に向け
    重要性が高まる情報システム部門の役割

人物写真

デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 テクノロジー メディア テレコミュニケーションズ
グループ パートナー
八子 知礼 氏

企業がスマートデバイスの導入・活用を推進するうえで必要になるのが、モバイルコンピューティング環境で目指すべきワークスタイルの明確化とセキュリティーリスクの回避。情報システム部門は、どのような考え方でIT戦略やセキュリティー対策を見直していけばよいのでしょうか。今回は、2008年から“モバイルクラウド”というコンセプトを提唱し、企業での対応が不可欠だと提言してきた八子氏に、スマートデバイスの普及が企業にもたらすインパクトや導入・活用で求められる考え方、情報システム部門が果たすべき役割を中心に伺いました。

八子 知礼(やこ・とものり)氏プロフィール
1997年広島大学大学院卒業後、松下電工株式会社(パナソニック株式会社)、外資系コンサルティング会社などを経て、2007年にデロイト トーマツ コンサルティング株式会社に入社。2010年より現職。通信・メディア・ハイテク業界を中心に、新規事業戦略立案、CRM戦略やマーケティング戦略の策定、バリューチェーン再編などのプロジェクトを数多く手がけている。ITProの「八子・モバイルクラウド研究所」など、モバイルやクラウド関連の寄稿・講演も多数。著書に『モバイルクラウド』『図解 クラウド早わかり』(いずれも中経出版)など。
URL:http://www.tohmatsu.com/dtc/ (新しいウインドウが開きます)

“モバイル+クラウド”の活用が
スピード向上という大きな効果を創出

 「立ったまま、あるいは移動しながら操作できるという本当の意味でのモバイル環境が実現したことで、例えば、これまでのように、管理職の出張という理由だけで決裁や承認が大きく遅延する状況を回避できます。結果として、営業担当者がお客様からの要望を会社に持ち帰るのではなく、その場で申請処理をして上長の承認を取り、その場で受注契約を結ぶことが可能になります。訪問先であれ、社内であれ即決できる、決裁や承認のタームを短縮できるというメリットは、企業にとって非常に大きいはずです」
 八子氏はまず、スマートデバイスを利用したモバイル環境が企業にもたらす大きなメリットに、意思決定のスピード向上があると指摘します。ノートPCを端末としたモバイルコンピューティングの有効性は1990年代から多くの企業が着目していました。営業活動の支援を中心に、様々な活用方法が模索されてきましたが、現実にはネットワークの回線速度や接続環境の制約により、本格的な活用には至らなかった状況が多くありました。これを解消するのが、ここ数年で整備された高速無線通信のインフラと、タッチパネルにより操作性を格段に向上させたスマートデバイスの普及。八子氏は、本当の意味でのモバイル環境が、意思決定のみならず、業務スピードの向上にもつながると語ります。
 「会議室に集まらなくても、他の仕事をしながら会議に参加して意見交換することができます。また、コミュニケーションという非定型業務だけではなく、顧客管理や在庫管理、グループウェアなどの定型業務を同時に利用できる環境を提供すれば、非定型と定型の業務を取り混ぜた、スピーディで効率的なコラボレーションワークが可能になります。物理的に同じ場所にいる必要がない状況は、仕事の進み具合を確実に早めることにつながります」
 八子氏が強調するのは、従来の携帯電話からスマートフォンへ、ノートPCからタブレット端末へと、単にデバイスが置き換わるのではなく、それを支えるITインフラとして、クラウドコンピューティング環境の活用が前提になることです。いわゆる“モバイルワーク2.0”とも呼ぶべきワークスタイルの変革を実現できることです。
 「スマートデバイスを活用したモバイルコンピューティングは、まず特定部門での試行錯誤を経て全社的に展開するといった、できるだけ小さく始め、そこで効果を見極めて拡大していくアプローチが現実的だといえるでしょう。そのような方法で展開すると、ユーザー数は急増していきます。企業にとっては、サーバーの負荷に応じて迅速かつ柔軟にリソースを拡張できるクラウド環境が有効な選択肢になります」

▲ ページトップに戻る

情報システム部門に求められる
全社共通化からの発想転換

 では、ワークスタイルの変革による大きな効果を創出するために、情報システム部門は従来のIT戦略をどう見直せばよいのでしょうか。ここで八子氏は、全社的な基盤とユーザー部門のフロントエンドに対して、異なる発想で臨む必要があると語ります。
 「ガバナンスの強化や情報基盤の最適化、効果測定という観点では、全社での共通化や標準化という方針を維持すべきですが、デバイスやアプリケーションは各部門のニーズに応えるという考え方を重視すべきです。情報システム部門に求められるのは、そのバランスです。全社的な環境整備は情報システム部門が主導する一方、ユーザー部門のニーズに対しては、ユーザー自らが開発できる環境を整備する、あるいは請け負うなど、あくまで支援するという役割に徹するアプローチがこれまで以上に重要になるのではないでしょうか」
 企業にとって大きな効果が期待される一方で懸念されるのが、セキュリティーリスクの増大。八子氏はデバイスやサービスの“民主化”、社員個人のデバイス利用を認めるBYOD(Bring Your Own Device)の流れは止められないとしたうえで、情報システム部門は“持ち出し”を前提にした運用環境を整備すべきだと指摘します。
 「重要情報の流出は最大のリスクですが、最近は、暗号化通信や端末認証、個人認証を組み合わせたサービスや、端末の紛失・盗難時のリモートワイプ機能など、セキュリティー対策やデバイス制御、管理の効率化を実現するソリューションも登場しています。こうしたMDM(Mobile Device Management)を機能させれば、堅牢なセキュリティーレベルでデータを保護できます。逆に言えば、重要情報の流出を懸念して帰宅時の持ち出しやBYODを禁止するのであれば、スマートデバイスの導入を考えるべきではありません」
 社外での利用が重視されがちなモバイルコンピューティングですが、ネットワーク環境の整備という役割を担う情報システム部門は社内にも目を向ける必要があります。八子氏は最後に、情報システム部門の仕事は増大していると強調し、次のように話してくれました。
 「モバイルコンピューティングの活用が本格化すればトラフィックが増大するため、情報システム部門は、社内に戻るとパフォーマンスが低下するという状況を回避する必要があります。つまり、セキュリティーも含めて、ネットワークの最適化を早急に図る必要があります。また、会議室以外にも投影プロジェクターを設置するなど、ワークスタイルの変革支援を通じてビジネスに貢献する情報システム部門の役割が、これまで以上に重要になっていることは間違いありません」

▲ ページトップに戻る

説明図

モバイルワーク2.0
出典:デロイト トーマツ コンサルティング株式会社

▲ ページトップに戻る