メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2012年 4月号(No.175)
  • 情報システム部門主導で“業務とITの融合”や“全体最適”を
    踏まえてBCP策定を推進

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三菱電機株式会社
インフォメーションシステム事業推進本部 
BCPビジネス推進センター センター長
草場 信夫 氏

BCPの策定では、最適化の観点から情報システムのあるべき姿を追求する取り組みが求められますが、その一方で実現性にも目を向けなければ有効な対策とはいえません。情報システム部門では、コスト面などの制約を含め、現実的な施策や優先順位をどのように見極めればいいのでしょうか。今回は、BCPのコンサルティングや策定・運用支援を手掛ける三菱電機BCPビジネス推進センター センター長の草場氏に、業務とも深く連携する情報システムのBCP策定と運用のポイントについて伺いました。

草場信夫(くさば・のぶお)氏プロフィール
三菱電機株式会社、三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社(MDIT)にて、汎用機の基本S/W開発、データウェアハウス(DWH)/データ統合など全社データ基盤に関するシステムデザイン、システム構築に従事。
現在は、三菱電機自身の災害対策の経験、ノウハウを生かした、お客様企業向けのBCP策定やBCM構築の支援、システムの構築の支援を実施。
技術士(情報工学部門)、PMP(Project Management Professional)。

東日本大震災の影響から
IT資産を“持たない”選択が不可欠に

 「情報システムのBCPについては、IT資産を“持たない”という選択をどこまで実現できるか、従来の考え方を大きく転換できるかが、重要なポイントになります。身近な例では、バックアップのデータをどこに保管するかという問題があります。従来のバックアップは、どちらかといえば災害対策というより、“システムありきの復旧”に主眼が置かれていたケースも少なくありません。ところが東日本大震災では、洪水の被害により、サーバやバックアップデータ自体が使えなくなる状況が発生しました。単にバックアップを取るだけでは、復旧できない状況にもなりかねないということです。こうしたことから、震災後はシステムやデータを遠隔地のデータセンターなどに移設する対策が急速に加速しています」
 草場氏はまず、東日本大震災から学んだ教訓の1つとして、普及が拡大するIaaS(Infrastructure as a Service)やSaaS(Software as a Service)、クラウドコンピューティングなどのBCPに対する有効性が認識できたと語ります。企業がBCPを策定する際に必要なものは、単にデータセンターの耐震性が強いという特性にとどまらず、リソースベースでリスクを分散させるという考え方です。クラウドサービスはコスト削減の手段のみならず、IT資産を“持たない”という選択の現実的で有効な手段として実証されたといえます。
 しかし、草場氏によると、自然災害が企業経営に及ぼす影響の大きさ、BCPの重要性を再認識させた東日本大震災の教訓も、時間の経過とともに機運が低下しているといいます。コストを主な要因にBCP対策の策定に踏み切れない企業も少なくありません。逆に、震災をきっかけに、BCP策定をサプライチェーンの選別条件する企業は増加する傾向にあります。経営者がBCPを策定しないリスクの高さを十分に認識したうえで、BCPに取り組む価値を判断すべきだという点を草場氏は強調します。
 「事業が停止している間の利益損失だけではなく、サプライチェーンからの撤退といった事態もあり得るため、企業の持続可能性を高める手段としてBCPを捉えるべきだと思います。そのうえで、企業として全社的なBCPの方針や目標値を明確にし、価値ある情報システムへの投資を判断する必要があります。もちろん、すべて二重化するといった施策はコスト的に現実的ではありませんが、現時点では対応できない“残存リスク”を明確にし、対応方法を経営者と情報システム部門が共有しておくことには大きな意味があります」

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損失と対策コストの最適なバランスを取り
必要な対策を見極める

 価値ある情報システム投資を見極めるために必要なのは、まず企業として情報システム全体のあるべき姿を描くことです。草場氏は、今後も地震や電力不足が懸念される現状において、企業が情報システム全体を見直す好機になると指摘します。
 「BCP自体の重要性に加え、震災の被害により情報システムの重要性も確実に高まったことは間違いありません。また、BCPは一度策定すれば終わりではなく、マネジメントによって継続的に見直し、運用していくものです。つまり、情報システム部門の積年のテーマであった“業務とITの融合”や“全体最適”を追求することが実現のポイントになります。BCPを単なる保険と捉えるのではなく、能動的で戦略的な対応を目指す取り組み、リスクの観点から情報システム全体の最適解を目指す取り組みだという認識が重要だと思います」
 それでは、あるべき姿に向けた見直しとは、どのように進めるべきなのでしょうか。草場氏は、ハードウェアやソフトウェア、データを棚卸して“見える化”したうえで、3段階のステップを踏むべきだと語ります。
 「まず重要なのは、不要なものや重複するものを廃棄する“やめる”という判断です。本当に必要な機能に絞り込むためには、やめることが最大の対策になります。そのうえで、クラウドコンピューティング、サーバ統合・仮想化、データセンターといった最新の情報システム技術に“切り替える”という施策が有効となります。そして最後に、ハードウェア、ディザスタ・リカバリやバックアップを新規導入し、壊れたシステムを“直す”仕組みを考えます。また、判断の際には、やみくもにRTO (Recovery Time Objective 復旧時間目標) を短くするのではなく、業務中断による損失の大きさと対策コストとの間で最適なバランスを求めるという考え方がポイントです」
 BCPで見直す対象となるのは、複雑に絡み合った業務と、それを支える情報システム群。加えて各情報システムは、お互いに依存し合っています。草場氏は、BCPを考えるうえで情報システム部門の役割が非常に重要だと強調し、最後に次のように話してくれました。
 「もはや、社内のすべての業務プロセスを説明できるのは、データの流れを把握している情報システム部門です。したがってBCPの策定、運用では情報システム部門が主導的な役割を担うべきでしょう。例えば、情報システム部門だけではなく、事業部門での手順検討にも関与し、協力する。また、情報システムの災害対策が業務の再開にどのように寄与しているかを明確に報告することも重要です。トップマネジメントの理解度や納得感を高めながら、BCPへの取り組みを、情報システムのあるべき姿を実現するという長年の夢をかなえる好機にしてほしいと思います」

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説明図

社会・経済活動における企業システム間の広域相互依存

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