メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2012年 11月号(No.181)
  • 顧客の声を活かす情報環境の整備とマネジメントの推進に向けた
    テキストマイニング活用のポイント

顧客の声には、企業が直面する課題を解決するための様々なヒントが埋もれています。この、顧客の声を事業戦略に反映させ、顧客の満足と信頼を獲得していくVOC(Voice of Customer)活動でテキストマイニング技術が活用され、製品も進化を遂げてきました。今回は、VOC活動に焦点を当て、企業にとってのテキストマイニングの有効性や活用のポイントについて考えてみましょう。

新たな課題発見と分析により
VOC活動の推進を支援

 テキストマイニングとは、非定型データであるテキスト情報に対して、用語が使用される頻度や傾向などを分析し、全体の傾向や特徴を把握するための技術のことです。今回の巻頭特集にご協力いただいたクオリカ株式会社では、「大量のテキスト情報から全体像とわずかな予兆を効率的に把握する技術」と定義しています。
 企業における主な用途は、顧客の声をビジネスに活かすVOC活動の支援です。具体的に分析の対象となるテキスト情報は、市場調査やアンケート、コールセンターでの応対履歴、営業日報などです。テキストマイニングを利用し、これらのテキスト情報を分析することで、企業は自社が取り組むべき課題を明確にし、業務改善や品質向上、製品企画などに反映させていくVOC活動の推進が可能になります。
 もちろん、顧客の声の重要性には、以前から多くの企業が着目していました。顧客の声が最も反映された状態で蓄積されるのが、テキスト情報だといわれていますが、企業にとってこの分析が大きな負担になっていました。非定型であるテキスト情報の分析には、人が目を通すという作業が不可欠であり、情報量が増えるほど人手や時間を必要とします。現在、テキストマイニングが注目される背景には、こうした人手や時間を要する課題を解決し、意思決定を支援するツールとして使いやすくなったことがあげられます。すでに様々なベンダーがツールを提供していますが、求められる機能は主に次の2点です。
@新たな課題発見を支援できる
 分析の結果から導かれる課題は、“現象別”や“業務別”といった分類の切り口によって異なります。そこでテキストマイニングツールには、どれが最適な切り口かという判断を支援する機能が求められます。企業にとって有効なのは、ビジネスの変化に即した新たな切り口、すなわち新たな改善課題の発見を支援するツールだということです。
A臨機応変な分析を支援できる
 企業にとっては多数意見、マクロトレンドの把握が重要であることは間違いありませんが、一方では、少数意見の動向にも着目する必要があります。仮に全体の中では少数意見であっても、今月に入って急増傾向にあるという状況が生じれば、その背景にある実態を探ることに大きな意義があります。テキストマイニングツールには、こうしたわずかな兆候を発見する機能が求められます。

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類似話題の自動検出機能で
わずかな兆候の手がかりを見つける

 それでは、テキストマイニングツールのどのような機能を使って、“わずかな兆候”、例えばトラブルの予兆を発見するのでしょうか。ここで最近のテキストマイニングツールを例に、特徴的な機能を紹介しましょう。
 トラブルの予兆とは、“今後起きる可能性のあるトラブル”の兆しであり、予めどのようなトラブルが起きるかがわかっているわけではありません。したがって、検索語を使おうとしても、どのような用語が適当なのかを類推するのは困難です。一方で、出現頻度に着目しても、予兆の段階では、他の情報に埋もれてしまう可能性が高くなります。そこで使われているのが、類似する内容(類似話題)を抽出する機能です。
 特徴的な類似話題を抽出すれば全体像が容易になりますが、例えば類似する話題が2件以上あった際に抽出するという設定ができれば、時系列分析と合わせて、早い段階での予兆発見が可能になります。
 ただし、ここで認識しておく必要があるのは、ツールで抽出されるのは、あくまで“候補”であり、手がかりだということ。候補抽出の精度が高くても、最終的に予兆だと判断するのは人だということです。

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VOC活動自体の定着が
ツール導入の効果を高める

 機能が進化したとはいえ、テキストマイニングツールはあくまでツールです。VOC活動に活かすうえでは、利用者のスキルが重要になります。このスキルは、マイニングスキルと呼ばれるもので、大きく、ツールを駆使する力と業務への洞察力で構成されます。分析者と分析システムのコラボレーションが大きなカギを握るということです。
 テキストマイニングツールの導入にあたって重要なのは、ツールの操作習得のみならず、VOC活動自体を社内に定着させることだといえるでしょう。企業には、定着を図りながら、マイニングスキルを向上させる取り組みが求められます。
 定着に向けた第一歩は、利用者自身が効果を実感することにあります。例えば、導入パートナーの支援を受けて、実際のテキスト情報を基にした分析レポートを作成し、経営層に報告するといったプロセスを経験するのも有効な手段の1つです。また、コールセンターのオペレーターに対して、分析担当者が定期的に訪問し、効果を報告するといった対応も非常に効果的です。自分たちの記録した応対履歴が実際にどのような役に立ったのかを実感できれば、さらなる改善のために、どのような内容を記録すればいいかを考えるなど、社員のモチベーション向上や分析の対象となる情報の質的な向上が期待できます。
 一方で、企業はVOC活動が組織的横断的な取り組みであることを認識しておく必要があります。実際にテキストマイニングツールを利用するのはマーケティング部門や品質管理部門であっても、分析結果を活かすには、製品やサービスの企画部門や開発部門が情報を共有し、活用することが必要になります。
 つまりVOC活動とは、全社的な取り組みであり、顧客の声を起点としたマネジメントを推進することです。PDCAサイクルを確立し、継続的な改善活動を推進していくためには、分析レポートやマネジメント、分析者、ツールのすべてをスパイラルアップさせていくことが重要になります。

※本記事は、エキスパートインタビューにご登場いただいた石井哲氏への取材、クオリカ提供の資料をベースに構成しました。

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説明図

VOC活動におけるテキストマイニングツールの位置づけ
出典: クオリカ株式会社

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