メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2012年 11月号(No.181)
  • テキストマイニング活用による全体像の把握と気づきで
    顧客志向経営の強化を推進

人物写真

クオリカ株式会社
テキストマイニング室 エグゼクティブコンサルタント
石井 哲 氏

企業には、顧客の声を業務改善や品質向上、製品企画に活かすVOC(Voice of Customer)活動の継続的な推進が求められています。テキストマイニングツールは、その活動を支援する有効なツールと位置付けられますが、具体的にはどのような役割を果たすのでしょうか。また、有効活用のポイントはどこにあるのでしょうか。今回は、10年以上にわたりテキストマイニングツールの開発や導入コンサルティングに携わってきた石井氏に、テキストマイニングツールの有用性や活用のポイントを中心に伺いました。

石井哲(いしい・てつ)氏プロフィール
大阪大学基礎工学部卒。1972年コマツに入社。同社の研究本部にて動的構造解析、人工知能関連分野の研究に従事。1996年より、クオリカ(旧コマツソフト)にて、テキストマイニング技術の開発・事業化を主導し、現在に至る。これまでに、金融・製造・通信などの分野で、同技術を用いたソリューションを多数展開。著書に『テキストマイニング活用法』(リックテレコム)、『CRMからCREへ』(共著、日本能率協会マネジメントセンター)など。
URL:http://www.qualica.co.jp/ (新しいウインドウが開きます)

顧客の本音を引き出す情報の蓄積が
テキストマイニングツール活用の大前提

 「例えば、アンケート結果やコールセンターでの応対履歴からサンプル情報を抽出して分析するだけでは、顧客の声を業務改善や品質向上を図るうえで限界があります。ここでポイントになるのは、多数意見のみならず、少数意見を分析し、“わずかな予兆”や“気づき”を発見し、共有することです。テキストマイニングは、こうした少数意見も含めた全体像と兆候の把握を支援するツールです。結果として、企業は顧客の声に対して、きめ細かい対策を講じていくことが可能になります。特に、事業が拡大していく時期、顧客からの問い合わせも増大する急成長期には、不可欠のツールだといえるでしょう」
 石井氏はまず、テキストマイニングツールの有効性が、全体像と兆候の把握であることを強調します。多くの企業が、“顧客の声”を重視していますが、顧客の声から自社の課題を早期に発見し、早期に対応するためには、情報全体の分析が必要だということです。
 また、テキストマイニングツールを活用するうえで、蓄積する情報の“質”も重要なポイントとなります。石井氏は、顧客の本音を理解できる情報の蓄積が大前提になると指摘します。
 「お客様が何に困っているか、なぜ不満なのかといった本音を引き出すためには、例えばアンケートであれば、多面的な質問による自由記述形式という手法が有効です。また、コールセンターの応対履歴では、お客様の視点で、お客様の千差万別の言い方で素直に書き、記録することが原則といえるでしょう。ところが、こうしたテキスト情報すべてに目を通し、分析するという作業負担は非常に大きくなるため、集計の容易さを重視してしまう企業も少なくありません。結果として、“満足”や“不満足”の件数は容易に把握できるかもしれませんが、これでは区分しているだけあり、区分したデータを蓄積することには意味がありません。VOC活動では、次の改善につながるコンテンツを残すという考え方が、非常に重要です」
 石井氏によれば、分析に使える情報が蓄積されていない状況が、VOCを重視しない企業の共通項だといいます。もちろん企業にとって、集計を目的とした調査が不要だということではありませんが、VOC活動の基本は顧客の声を理解し、事業戦略に反映させることです。その実現のためには、顧客の本音を引き出せるテキスト情報の蓄積が不可欠だといえます。

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ソーシャルメディアの情報は、現状では
風評監視と状況把握にとどめる

 顧客の本音を引き出せるテキスト情報の蓄積と共有、蓄積した情報を分析・活用できる情報環境の整備が必要です。
 「VOC活動自体はマーケティング部門や品質管理部門など、実務担当者による草の根活動と位置づけることもできますが、情報環境の整備も含めて社内に定着させるためには、経営判断に基づくトップダウン活動として推進する必要があります。特に、企業としてVOCを受け止めた改善活動を継続していくモチベーションを社員に与えることが重要になります。VOCに基づいたPDCAサイクルを各部門、さらに各部門が連携した全社的な仕組みとして回していく“顧客志向経営”の重要性を認識させることにあります。経営トップは、各業界のトップ企業が、この顧客志向経営を推進していることにもっと着目すべきではないでしょうか」と石井氏は、その実現のためには経営トップの意思決定が必要だと指摘します。
 一方、経営トップとして着目すべき点の1つとして、インターネット上のコミュニティサイトやSNS(Social Networking Service)、ブログといったソーシャルメディアがあります。そこに書き込まれるテキスト情報は膨大な量に達し、企業としては製品やサービスに対する顧客の声として、無視できない存在となっていることは間違いありません。ここでテキストマイニングツールはどのような役割を果たすのでしょうか。
 「確かにソーシャルメディアの情報は急増していますが、VOC活動に活かす情報としては、無責任な発言も少なくありません。ただし、すべてを無視するわけにもいきません。そこで当社は現時点では、風評監視と状況把握というレベルでの活用にとどめるべきだという提案をしています。テキストマイニングツールを活用すれば、どのような苦情が寄せられているかを把握し、その発信者に回答を送付することも可能ですが、現状では火に油を注ぐ結果にもなりかねません。ソーシャルメディアをVOC活動に活かすには、企業と発信者のコミュニケーションがもう少し成熟する段階まで待つべきだと考えています」
 テキストマイニングツールを活用したVOC活動で石井氏が強調するのは、最終的に新たな課題を発見するのは“人”だということ。ここでカギを握るのが、業務への洞察力とツールを駆使する力を融合したマイニングスキルです。最後に石井氏は、マイニングスキルの育成が今後はさらに重要になると指摘したうえで、次のようにお話しいただきました。
 「全社的なVOC活動を継続していくためには、分析レポートとマネジメント、分析者・ツールをそれぞれスパイラルアップさせていくことが必要です。テキスト情報の“見える化”は経験がないため、躊躇してしまう人も多いようですが、実際にツールを導入した企業では、利用者の拡大によって、確実にスキルアップにつなげています。例えばテキストマイニングツールを活用して故障診断の情報を整理し、メンテナンス業務の知識として活かす活動を推進している企業があります。ソーシャルメディアの台頭も含め、最終的に恩恵を受ける人たちを増やすマイニングスキルは、今以上に脚光を浴びる時代がくると思います」

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フロー図

顧客志向経営の全体フロー
出典:クオリカ株式会社

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