メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2014年 3月号(No.194)
  • 課題の明確化を出発点に
    組織の知恵を結集したデータ活用が
    新たな価値の創出につながる

人物写真

三菱電機株式会社
情報技術総合研究所 データマネージメント基盤技術部 主席技師長
郡 光則 氏

データ活用の前提となる、データの質的側面が大きく変化する中、企業のIT戦略にも変化への対応が求められます。様々な可能性や期待が議論される現状において、企業は目指すべきデータ活用のあり方をどのように考えていくべきなのでしょうか。今回は、長年データ活用を支える基盤技術の研究・開発に取り組んできた郡氏に、“ビッグデータ”に関わる技術や考え方で理解しておくべき特徴や、新たな価値創出につながるデータ活用のポイントを中心に伺いました。

郡 光則(こおり・みつのり)氏プロフィール
1984年東京大学工学部電子工学科卒業、1986年同大学院工学系研究科電子工学修士課程修了、同年三菱電機入社。汎用機、オフィスコンピューターの開発を経て、現在、同社情報技術総合研究所にて並列処理、データベース、情報検索・活用に関する研究開発に従事。データベース製品およびビジネスインテリジェンス、統合ログ管理、セキュリティー対策、エネルギー管理などの様々なデータ活用システムの開発にも取り組む。DEIM2011最優秀論文賞、DEIM2010優秀論文賞、情報処理学会大会奨励賞(第44回)、関東地方発明表彰発明奨励賞(平成19年、平成23年)など受賞。

技術は進歩しているものの
データ活用の難しさは残る

 「“ビッグデータ”という用語がここ数年で広く浸透しました。ここで企業が着目すべき大きな変化は、データのスケール(規模)の大幅な増大と処理速度の飛躍的な向上、コストの劇的な削減にあります。重要なことは、データを集めさえすれば課題が解決できる革新的な技術が突如出現したわけではないということです。つまり、データ活用にあたり、人間が考え、見極めるべき領域は残されたままだということを理解しておくべきです」
 郡氏はまず、ビッグデータに関連する技術や成功事例が数多く紹介されるようになったとはいえ、データ活用の難しさが解消されたわけではないと語ります。一方で、革新的な技術が登場したわけではないとはいえ、現状のベースとなる技術が10年以上に渡り着実に進化してきました。例えば三菱電機が提供する“高性能並列検索技術”も、現在注目される“NoSQL”に共通する考え方が採用され、非定型データの高速処理技術を実現しています。
 「圧縮率の高さを強調する圧縮技術は数多く開発されてきましたが、一般的には、圧縮率を高めると処理速度が低下してしまいます。これに対して、例えば当社のデータ分析フレームワーク“AnalyticMart(アナリティクマート)”に搭載したAQLでは、独自のアルゴリズムを開発することで、圧縮率を高めながら高速ロードと抽出処理を実現しています」
 こうした技術の進化では、ニーズの変化への対応という側面も見逃すことができません。具体的には、三菱電機グループの製品にも実装されている、テキストデータの高速検索技術が挙げられます。
 「例えば、10万キーワードといった規模の同時検索が可能なほか、スパムメール判定に使うスパムフィルターの技術を応用した“学習型フィルター”機能を搭載したことで、機密情報や個人情報だと判定するための複雑な条件にも対応することができます。この学習型フィルターは、元々スパムメール対策のニーズに対して開発されたものを、最近になり機密情報を検出したいというニーズに合わせてアルゴリズムを改良して開発した技術の一例です」

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技術用語に振り回されない
明確なIT戦略が不可欠

 NoSQLやCEP(Complex Event Processing)など、最近のビッグデータを巡る議論では、技術的なキーワードが強調されるのも大きな特徴の1つです。郡氏は、こうした“徐々に進化してきた”技術でデータ活用の新たな可能性が生まれていることは間違いないとしながら、キーワードに惑わされない導入が重要だという点を強調します。
 「例えばセンサーやGPSの普及、M2M通信サービスの拡大などで、従来は測定できなかったデータ、測定困難だったデータを“見える化”できるようになった現状は、“見える化”できない状況と比較すれば格段の進歩だといえるでしょう。ただし、データの“見える化”はデータ活用の入口ながら、出発点は自社のビジネスや業務の課題を明確化することにつきます。単に導入が容易になったからといって、データや技術を使わなければならないというアプローチで検討を進めることは避けるべきだと思います」
 郡氏が重視するのは、企業が新たな価値の創出や業務の効率化、コストの削減などによる競争力向上を目指すための出発点は課題の明確化にあり、データ活用はそのための一手段に過ぎないという、IT戦略の原点に回帰した考え方です。企業には、ビッグデータに関連した技術用語に振り回されない明確な方針策定が求められます。
 「“ビッグデータ”といっても、単純にデータ量を増やせばよいということではありません。例えばデータ量を増やした結果、価値のあるデータが埋もれてしまう可能性もあり、逆に量が少なくても多様性のあるデータの組み合わせ方で大きな価値を創出できるケースもあるからです。何を目的に、どのようなデータを自社の課題解決に生かすかという軸がぶれないように徹底することが重要です。そのためには、単に“データサイエンティスト”を探す、データサイエンティストがいないので無理といった判断ではなく、業務や情報システム、統計、分析など、それぞれに精通した人たちの知恵を結集していくアプローチが有効だと思います」

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説明図

三菱電機が提供する高性能情報検索技術とその応用分野

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