メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2013年 10月号(No.190)
  • 超高齢社会への対応により生み出される新たなビジネスチャンスと
    IT活用のポイント

高齢化や少子化の流れは、労働力人口の減少に連動し、これによって成長率の低下などが懸念されます。一方、超高齢社会に対応する施策により、様々な分野で製品やサービス、インフラなど新たなビジネスチャンスが生まれてきます。そこでポイントとなっているのがITの活用です。今回は、日本が進めようとしている政策の全体像を中心に紹介しながら、超高齢社会におけるITの可能性や活用のポイントについて考えてみましょう。

超高齢社会で日本に期待される
フロントランナーの役割

 日本は2007年に世界最速で“超高齢社会”に突入しました。国連では、国の全人口に占める65歳以上人口の比率である高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と定義。総務省の「人口統計」によれば、2012年10月1日現在の日本の高齢化率は24.1%に達しています。高齢化比率は今後も上昇し、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が2013年3月に発表した「日本の地域別将来推計人口」(3月推計)では、2040年には36%を超えると見込まれています。
 この超高齢社会に伴い発生する様々な問題解決の手段として、世界中でITが注目されており、日本でもITの活用を前提とした政策や戦略の立案が相次いでいます。超高齢社会での積極的なIT活用というコンセプトが浸透し始めたきっかけは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授(電子政府・自治体研究所所長)の小尾敏夫氏が、2010年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)と経済協力開発機構(OECD)の会議で、21世紀に同時進行する超高齢社会と情報社会の流れを融合させて、様々な問題を包括的に解決すべきだと提唱したことです。すでに高齢化が進展している欧州や今後高齢化の進行が確実なアジアの加盟各国から大きな反響があり、2012年には日中韓の国際会議、早稲田大学とOECD、APEC共催の国際会議「超高齢社会と情報社会の融合」が開催されました。
 こうした流れを受け、日本では総務省がIT成長戦略の柱の1つとして、2012年12月から超高齢社会に対応するためのITのあり方を検討する「ICT超高齢社会構想会議」を開催。小尾氏(座長代理)を含めた産官学の有識者による議論を経て、2013年5月には政府への提言となる「ICT超高齢社会構想会議報告書−『スマートプラチナ社会』の実現−」が公表されました。
 ここでは、労働力の減少や医療費の増大といった課題に対して、「T.健康を長く維持して自立的に暮らす」、「U.生きがいを持って働き、社会参加する」、「V.超高齢社会に対応した新産業創出とグローバル展開」という3つのビジョンを明確化。これに基づき、「医療情報連携基盤の全国展開」や「新たなワークスタイルの実現」、「スマートプラチナ産業の創出」といった8つの提言とプロジェクトを、ロードマップも含めて示しました。
 同報告書の特徴は、高齢者のみならず、すべての世代を対象にした社会を想定し、健康寿命の延伸や高齢者の社会参加、さらには新産業創出を目指すなど、広い領域を想定する一方で実現の可能性を重視し、2020年頃を目途としたロードマップとともに具体的な施策を明確したことです。また、ITシステムの標準化や各国との共同実証・連携といったグローバル展開も重視するなど、日本がフロントランナーとして世界に貢献するという方針も示しています。

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今後のカギとなる政府CIOを司令塔とした
省庁横断的な取り組み

 ICT超高齢社会構想会議は今秋にも“構想会議”から“推進会議”へと移行する計画も検討されています。報告書に示されたプロジェクトは領域が広範囲に及び、省庁を横断した取り組みが不可欠となるため、政府や各省庁が打ち出しているこれまでの高齢社会対策やIT戦略との融合がカギを握ります。
 例えば、日本政府における高齢社会対策の基本的な枠組みでは、「高齢社会対策基本法」(平成7年12月施行)と同法を踏まえた「高齢社会対策大綱」が中長期対策の基本と位置付けられています。昨年閣議決定された大綱に示されているのは、高齢者の意欲と能力の活用、安全・安心な生活環境の実現といった基本的な考え方と、「就業・年金等分野」、「健康・介護・医療等分野」、「社会参加・学習等分野」、「生活環境等分野」、「高齢社会に対応した市場の活性化と調査研究推進」、「全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築」という6分野での基本的施策の指針。これらとICT超高齢社会構想会議報告書の内容が融合し、ITの役割を、より明確にした指針にする必要があります。
 IT戦略に関しては、2001年に設置されたIT戦略本部がIT総合戦略本部に名称変更され、内閣官房には司令塔として政府CIO(内閣情報通信政策監)が新設されました。また、2013年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」では、「特に、政府全体を横串で通す必要のあるIT施策を大きく前進させ、これまで政府CIO不在では成し得なかった政策課題に果敢に取り組んでいく」という方針を明記。目指すべき社会・姿として、次の3つが示されました。
 1. 革新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成長を促進する社会の実現
 2. 健康で安心して快適に生活できる、世界一安全で災害に強い社会
 3. 公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会

 すでに、こうした方針や戦略を踏まえ、政府の「新たな成長戦略(日本再興戦略)」では、「世界最高水準のIT社会の実現」や「国民の『健康寿命』の延伸」が重要な柱の1つに位置付けられるなど、超高齢社会に対応したIT活用を積極的に推進していく考え方が示されています。

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超高齢社会と情報社会の融合により
企業のビジネス機会が拡大

 政策面で進む超高齢社会と情報社会の融合というコンセプトや取り組みは、企業の事業戦略やIT戦略という面でも重要です。特に重要なことは、新たなビジネス機会が増大すること、高齢者の知恵や知見を活用できることの2点だといえるでしょう。
新たなビジネスの可能性が増大
 ICT超高齢社会構想会議報告書で示されたプロジェクトの「ライフサポートビジネス」1つだけでも、買い物や配食、身守り、オンデマンド交通、コミュニティーなど、様々なビジネスが考えられます。高齢者のニーズをいかに把握し、日常生活を支えるビジネスをいかに展開するか、ITを活用し、いかに低コストで質の高いサービスを提供するかなど、企業が異業種連携も視野に事業戦略やIT戦略を策定・遂行できれば、大きなビジネスチャンスとなります。
高齢者の知恵や知見を活用
 2013年4月に「改正高齢者雇用安定法」が施行されるなど、労働力人口が減少する中では、高齢者の活用が多くの企業に共通する課題となっています。ここではもちろん賃金面での改善も重要ですが、高齢者の社会参加という面では、テレワークの導入といった働き方の多様化につながる環境整備も重要です。具体的には、クラウドコンピューティングやスマートデバイスの活用、セキュリティーの確保などが求められます。少子高齢化と人口減が確実に進む中、高齢者と現役世代がともに活躍できる就労モデルは、企業自身も模索していく必要があります。

※本記事の一部は、エキスパートインタビューにご登場いただいた岩ア尚子氏への取材をベースに作成しました。
  参考文献:『シルバーICT革命が超高齢社会を救う』(小尾敏夫・岩ア尚子著/毎日新聞社)

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『スマートプラチナ社会』の実現の全体像

「ICT超高齢社会構想会議報告書−『スマートプラチナ社会』の実現−」の全体像
出典:総務省

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