メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2013年 10月号(No.190)
  • 高齢社会対策の発想転換と異業種連携を前提にしたIT戦略策定が
    ビジネスチャンスを生かすカギ

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早稲田大学
電子政府・自治体研究所 准教授 国際CIO学会理事兼事務局長
岩ア 尚子 氏

医療・介護連携やスマートシティーなど、高齢化や少子化を前提にIT活用を推進する取り組みは、これまでも行われてきました。なぜそこで“超高齢社会と情報社会の融合”というコンセプトが必要なのでしょうか。また、企業のCIOや情報システム部門は、政府が進めようとしている政策や戦略のどこに着目すべきなのでしょうか。今回は、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授の小尾敏夫氏が所長を務める電子政府・自治体研究所で、超高齢社会におけるIT利活用の研究に従事する岩ア氏に、超高齢社会と情報社会の融合というコンセプトや同会議の意義、ビジネスチャンスを生かす企業のIT戦略の考え方などを伺いました。

岩ア 尚子(いわさき・なおこ)氏プロフィール
早稲田大学電子政府・自治体研究所准教授(博士)早稲田大学大学院修士、博士課程修了。早稲田大学大学院MBA、国際情報通信研究科、公共経営研究科等兼担教員。専門は超高齢社会におけるIT利活用(シルバーICT問題)、CIO、災害対策とBCPなど。総務省ICT超高齢社会構想会議WG構成員、国際CIO学会理事兼事務局長、日中高齢化問題共同委員会事務局長。著書に『シルバーICT革命が超高齢社会を救う』(毎日新聞社)、『CIOの新しい役割』(かんき出版)、『超高齢社会対策へのICT活用事例』(早稲田大学)など。

社会そのものを考える
超高齢社会対策の全体像を初めて提示

 「これまでの高齢社会対策で議論の中心になっていた、医療・介護や年金といった社会保障制度改革はもちろん重要ですが、これは超高齢社会対策の1つの側面にすぎません。今必要なのは、社会保障のみならず、超高齢社会に関連するビジネスも含め、社会そのものを考えていく視点です。そこで社会全体を考え、様々な問題を包括的に解決するために、超高齢社会と情報社会という2つの特性に着目し、うまく融合させていくべきだというコンセプトを提唱しました。超高齢社会といっても、高齢者のみならず、すべての世代を対象にした課題を、ITを駆使して解決していくという考え方が重要です」
 岩ア氏は、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授(電子政府・自治体研究所所長)の小尾敏夫氏が提唱した“超高齢社会と情報社会の融合”というコンセプトが、社会全体を視野に入れたものだという点を強調します。ICT超高齢社会構想会議で打ち出した“スマートプラチナ社会”にも、このコンセプトが受け継がれ、従来の高齢(シルバー)社会対策を超え、災害対策も含めて、すべての世代が活き活きと、安心・安全に暮らしていける社会を目指すことが基本的な考え方となっています。岩ア氏は、こうした考え方に基づく取り組みを推進すると同時に、海外への情報発信が重要な意味を持つと語ります。
 「APECとOECD共催の国際会議、日中韓高齢社会研究会議を開催した大きな理由の1つに、世界で最初に超高齢社会を迎えた日本の事例、特にITソリューションの事例に対する関心の高さがあります。ところが、これまでは英語版の資料が少なく、紹介できる事例も個別の企業や自治体の取り組みにとどまっていました。日本が世界のフロントランナーとしての存在感を示すには、市場規模も含めて関連ビジネスの全体像を示すなど、海外に向けたプロモーション活動が重要です。今回公表したICT超高齢社会構想会議報告書は、海外の期待に応える突破口と自負しており、総務省も英語版の公表を計画しています」
 ICT超高齢社会構想会議報告書でも明記された方針の1つが、ITシステムの標準化で日本がリーダーシップを取るグローバル展開です。岩ア氏は、高齢者が購入できる製品やサービスの価格を実現する上でも、グローバル展開が不可欠だと語ります。
 「高齢者でも使い勝手の良いモバイル端末やタッチパネルなど、アクセスビリティとユーザビリティの研究は先行していますが、私どもの調査では、アフォーダビリティ(適正価格)が購入の大きな判断基準になっています。つまり、高齢者のニーズを徹底的に調べた上で、価格を下げていかなければなりません。そのためには、グローバル展開による量産が必須になります」

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ITプラス異業種連携による
超高齢社会問題の解決策

 超高齢社会というと、労働力人口の減少による国際競争力の低下、医療・介護を中心とした社会保障費の増加といった負の側面が強調され、実際に日本でも、財政再建に向けて克服すべき大きな課題として認識されています。ただし、早稲田大学電子政府・自治体研究所の試算によれば、超高齢社会対応型のシルバー産業は80兆円強であり、そのうちIT分野は約14兆円に上ることがわかりました。岩崎氏は、この新しいビジネスチャンスを生かすためには、従来の発想を転換する必要があると語ります。
 「2020年には約8割の高齢者が介護不要で自立できるとされます。つまりアクティブシニアに対してどのようなビジネスを展開していくか、という発想の転換が必要です。最終的には労働力人口の減少を解消し、経済成長を牽引するという課題解決に繋がります。また、今後は増加する介護休職といった事態を回避する必要もあるでしょう。一例として、まだ大企業を中心に一部の導入に留まっているテレワークは、高齢者の社会参加に加え、介護・育児と仕事の両立、アベノミクスが提唱する女性活用にもワーク・ライフ・バランスの観点から有効な施策になると考えます。問題は働き方だけではなく、新しい高齢社会モデルを構築するための地域振興や規制改革を同時に進めることが肝要です」
 岩ア氏が理事兼事務局長を務める国際CIO学会*では、東日本大震災で実証されたスマートデバイスやソーシャルメディアの有用性が超高齢社会対応の重要テーマに位置づけられるようになったといいます。「自然災害による犠牲者の7割は高齢者。これらが彼らのライフラインになることは必至であり、デジタル・デバイドの解消が課題です」
 最後に岩ア氏は、企業のCIOに求められる役割について、話してくれました。
 「世界唯一の超高齢社会は日本の成長戦略の要。企業はクラウド、ビッグデータなどのITを駆使し新たな市場を創造することが求められるなか、CIOは社会の潮流を見据えたIT戦略を展開するスキルが重要なコア・コンピタンスになります」

※国際CIO学会:2006年1月に、CIOに関する研究を広く討議し研鑽する場として設立された産官学連携のコミュニティで、会長は早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授(電子政府・自治体研究所所長)の小尾敏夫氏。設立当初より国際連携を視野に入れ、ASEANや東アジア、米国、欧州など、現在は14か国に支部がある。

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説明図

超高齢社会の到来と多産業との融合による新産業の育成
出典:早稲田大学電子政府・自治体研究所

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