メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2015年 6月号(No.207)
  • 多様な人材の能力を引き出し
    競争力強化の源泉となる
    ワークスタイル変革とは

ワークスタイル、すなわち人々の働き方を問い直す動きが日本でも活発になっています。人々の働き方は、社会環境の変化やテクノロジーの進歩に合わせてこれまでにも変わってきました。現在の日本は、社会環境の面では少子高齢化やグローバル化が進展、そしてテクノロジーの進歩によってモバイルデバイスの活用が進んでいます。これらの大きな環境変化の中、競争力を維持・強化するために、ワークスタイル変革が求められています。今回は、ワークスタイル変革の最新動向について考えてみましょう。

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少子高齢化、グローバル化時代に
求められる新たな働き方

 日本は、少子高齢化と経済のグローバル化に直面しています。これらが、ワークスタイル変革が求められる大きな要因となっています。少子高齢化によって就業人口が減少する中でも、企業は働き手を確保し、競争力を維持しなければなりません。そのためには、今の従業員の働く効率を今以上に上げるだけでなく、定年の延長や女性の活用など、様々な取り組みが求められています。しかし、従来の固定された働き方のままではそうした取り組みにも限界があります。様々な特性を持った従業員が、それぞれ能力を最大限に発揮できるようなビジネス環境を整えることが必要です。
 今回、エキスパートインタビューに登場していただいた日本ヒューレット・パッカード株式会社の岡隆史氏は、「国として企業として、人々が働く力をどこまで最大化できるかと考えた時に、今までと同じ働き方で良いのだろうかという考えがワークスタイル変革を推進する発端になっています」と語ります。
 多様な働き方の例として、海外では子供のいる従業員は、午後3時頃になると子供を迎えに行くために退社するケースが見受けられます。一見、就業時間が短いように思われますが、彼(彼女)らはその代わりに早朝に出社し、家族で夕食を済ませた後に,また自宅で仕事をするのです。日本でもこうした働き方が自然にできるようになる環境を整備することが必要でしょう。
 グローバル化は、海外に進出している企業だけの課題ではありません。顧客が国境を越えて自由に製品やサービスを選択できるようになったことで、国内市場だけに展開している企業も、海外との競争にさらされる時代になりました。新興国、先進国を問わず、海外企業の多くはグローバル市場を前提として品質やコスト、生産性の向上に努めています。
 欧米諸国などでは、すでにオフィスに皆が集まって働くというワークスタイルではなくなっています。特に国土の広い国では、各地の拠点がそれぞれのミッションを実現するために何が一番良いのかを自律的に判断して動いています。彼らと競争するためには、従業員がより高い生産性を持たなければなりません。
 日本はホワイトカラーの生産性の低いことが課題とされてきました。その理由のひとつに、オフィスの自分の机に座って仕事をするというワークスタイルが染みついている点があります。
 日本以外の多くの国では、以前からどこでも仕事をするのが当たり前でした。グローバル企業では、上司は海外に居ることも珍しくありません。距離と時差のある中で、同じオフィスに居るのと変わらずにビジネスを行うスキルが求められます。
 日本でも若い人を中心にこうしたスキルが育ってきているといいます。小さい頃からネットやモバイル端末に囲まれて育ったデジタルネイティブの今の若い世代は、直接、顔を合わせずにコミュニケーションを取ることに慣れていて、外出中にモバイル端末を使って作業をすることも当たり前になっています。徐々に、日本でも新しいワークスタイルが浸透する基盤ができているといえるでしょう。

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優秀な人材を確保するために不可欠な
自律的に働ける環境の整備

 優秀な人材を確保するためにも、ワークスタイル変革が求められます。日本でも人材の流動化が進んでおり、優秀な人材を確保するためには、企業が働きやすいような環境を積極的に構築する必要があります。
 海外ではすでに私物のスマートフォンで社内メールが確認できなかったり、オフィス外で仕事の環境が整っていない企業は、就職先の選択肢にならないことが増えてきました。特に欧米の従業員はキャリア意識、スキル意識が高いので、若くて優秀な人ほど、効率的な働き方ができて、自分の能力を高められる環境が整っている企業を選びます。従業員のロイヤルティーを高めることもワークスタイル変革の目的のひとつです。
 ワークスタイル変革は、社員が自律的に働ける環境の構築です。働く人の多くが、もっと仕事ができるようになりたい、様々な知見を深めたいと考えています。単純なルーチンワークにばかり多くの時間を取られると、「なぜこんな作業をやっているのだろう」とモチベーションが低下してしまいます。企業の側も、こうした作業はシステム化したり集約するなどして、社員には付加価値の高い仕事の比率を高め、お客様と緊密なコミュニケーションをとるなどの時間を増やすことが重要です。

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テクノロジーの進歩により
ワークスタイル変革が実現可能に

 ITの側面からワークスタイル変革を語る時に欠かせないのが、やはりモバイルデバイスの進化です。最近は、スマートフォンやタブレット端末、ノートPCといったモバイルデバイスの性能が飛躍的に向上したほか、接続に必要なネットワーク環境や情報漏えい対策も整備され、社会にモバイルワークが浸透してきました。
 「社会の要求にテクノロジーが追いついてきました。様々な種類のモバイルデバイスが発売されているので、今はその人の仕事に応じて最適なデバイスが選択できます。これにより、私どももワークスタイルの変革を実現性の高いものとしてお客様にご提案できるようになりました」(岡氏)
 実際にモバイルワークを実現するためには、安心して持ち歩けるデバイスを導入するだけでなく、情報を提供するシステムとの連携も必要になります。モバイルデバイスを持って顧客を訪問すれば、その場で在庫確認などの最新のデータを引き出して検討や提案を行うことが期待できます。そのためには、重要なデータをリアルタイムに、セキュリティーを確保しながらもスムーズに情報を提供できる環境が求められます。
 ワークスタイルの変革では、こうしたモバイルデバイスの活用ばかりに焦点が当てられますが、一要素に過ぎないと岡氏は強調します。
 「オフィスの外でも仕事ができるというのは、ひとつのコンポーネントに過ぎません。重要なことは、個人の能力をどれだけ引き出せるか、ビジネス環境の最適化をどうやって行うかです。個人も努力するし、企業も必要なものを提供していく。そのためのツールとしてITがあります」
 ワークスタイル変革によって十分成果をあげるためには、何のために変革を行うのかという目標をしっかりと見定めて、全体的な視点を持って取り組むことが大切だといえます。

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時間と場所、デバイスに依存しないコミュニケーション環境

時間と場所、デバイスに依存しないコミュニケーション環境
出典:日本ヒューレット・パッカード株式会社


生産性を高める新しい働き方

生産性を高める新しい働き方
出典:日本ヒューレット・パッカード株式会社


※本記事は、日本ヒューレット・パッカード株式会社の岡 隆史氏への取材を参考に構成しました。

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