メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

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  • 導入事例
  • 2016年 5月号(No.216)
  • ライオン株式会社
  • データセンター移転ソリューション
  • 「リスク軽減(1拠点)BCP」の選択により
    BCP対策費用の低減とインフラ運用費用の削減。
    緻密な計画でスケジュール通りDC移設を完遂

ハミガキや洗剤などの日用品をはじめ、医薬品などを手がけるライオン株式会社。同社は、これまで関東にある2ヵ所のデータセンター(DC)でIT基盤を運用していましたが、2011年3月の東日本大震災を機にBCP対策の強化に着手。三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)と綿密な計画を練り、テストを重ねることで、MIND 中国圏-新インターネットデータセンター(iDC)への大規模移設をスケジュール通りに完遂しました。2拠点による「リスク分散」でなく、1拠点による「リスク軽減」としたことで、事業継続計画(BCP)対策費用の低減とITインフラ運用費用の削減を実現しています。

東京都墨田区にあるライオン株式会社本社

東京都墨田区にあるライオン株式会社本社

人物写真

DC移設に携わったメンバー。
前列左より、統合システム部 野村有広氏、部長 宇都宮真利氏、吉澤朝子氏、
副主席部員 阪間勇一氏、副主任部員 久保 覚氏、
後列左より、寺嶋 優氏、椎名淳之氏、主任部員 足立幸弘氏、主任部員 木場迫栄一氏

東日本大震災をきっかけに
BCP対策の強化に着手

 「クリニカ」「システマ」「デントヘルス」などのハミガキや、衣料用洗剤の「トップ」シリーズなど日々の暮らしに役立つ付加価値の高い製品を提供するライオン。創業120周年を迎えた2011年には、新経営ビジョン「Vision2020」を発表し、「今日を愛する。」をスローガンに定めて新たな戦略を推進しています。現在、その成長戦略を踏まえてIT基盤のリニューアルプロジェクトが進められています。
 IT基盤リニューアルの第1ステップとして実施されたのが、約30年間にわたって使っていたメインフレームによる基幹業務システムを、オープン系に移行するプロジェクトです。第2ステップでは、BCP対策の強化が実施されました。ライオンは、会計、販売、生産管理などの基幹系システムを関東圏のDCで運用し、メール、Web、インターネットサービスなどのインターネット系システムをMIND 東京第1iDCで運用していました。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災により、課題が顕在化。そこでDCのBCP対策の強化に着手しました。
 統合システム部 部長の宇都宮真利氏は「東日本大震災ではDCに直接的な被害はなかったものの、震災後に輪番停電などもあり、電力供給の停止やネットワーク断絶といったリスクが高まりました。生活必需品や医薬品を扱っている当社の使命として、いかなる時でも商品供給を停滞させることはできません。そのためにもBCP対策のさらなる強化は不可欠でした」と振り返ります。

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災害リスクが低い地域の提案と
運用実績やサポート対応を評価

 ライオンはDCの移設方法として3つの方法を検討しました。ひとつめは、2つのDCで管理する現状の環境を維持しながら、遠隔地にディザスタリカバリー(DR)サイトを作ること。2つめは、関東にある2つのDCを1つのDCに集約してから、DRサイトを作ること。3つめは、2つのDCの環境を1つに集約して災害リスクの低い地域に移設すること(減災)です。
 様々な検討を重ねた結果、3つめの方法を採用。そして、移設のパートナーにMINDを選定しました。選定した理由を統合システム部 副主席部員の阪間勇一氏は次のように語ります。
 「MINDは当社のDC移設の要件に対する理解度が高いだけでなく、適切な提案をしていただけました。減災に対する考え方も明確で総合的なリスク軽減が図れる中国圏のDCを提案したのはMINDだけでした。また、これまでのDC運用に関する実績とサポート対応も選定の後押しになりました」

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移行専用L2延伸ネットワークで
業務に影響を与えず、確実に移行

 2014年3月にMIND 中国圏-新iDCへの移転を決定した後、負担を少しでも減らすために本番システム以外の検証機やテスト機、業務に影響の少ないシステムは先行して移行を実施。そして、本番システムは2015年5月のゴールデンウィーク(GW)期間に行いました。大量のサーバーを期間内に移設完了するために、様々な工夫が凝らされています。
 インフラについては、事前にサーバーの棚卸しを実施し、不要なサーバーを整理しました。統合システム部 主任部員の木場迫栄一氏は「仮想サーバー約350台について業務担当者に確認し、不要なものについては廃棄・集約を行いました。物理サーバーについては、担当者に仮想サーバーへの移行を促し、スリム化に努めました」と説明します。
 ネットワークについては、通常のWANとは別に移行専用のネットワークを敷設し、基幹システムを運用している移行元のDCと、移行先のMIND 中国圏-新iDCを1Gbpsの高速回線でつなぎました。さらに、移行専用ネットワークを「L2延伸ネットワーク」とすることでIPアドレスを変えることなく移行しています。
 統合システム部 主任部員の足立幸弘氏は「移行専用の回線を用意したことで、通常業務に影響を与えることなく移行することができました。L2延伸ネットワークにより、これまでのIPアドレスがそのまま使えるので、段階的に移行しながらも、ユーザーである社員は移設元と移設先の両方の環境にアクセスして日常業務を継続することもできました」と語ります。また、大量データの移行を円滑に進めるために、仮想化に特化したストレージを採用し、ストレージの重複排除や圧縮機能、さらにVMware独自のクローン作成機能を用いました。
 GWを利用して実施した本番システムの移行についても、事前に緻密な計画を策定したうえで、ライオンとMINDのチームが一体となって行いました。統合システム部の野村有広氏は次のように振り返ります。
 「本番移設では、関東のDCで使っていたサーバーやストレージなどのハードウェアを、MIND 中国圏-新iDCまでトラックで運ぶ物理的な作業と、移行専用ネットワークを使って仮想サーバーを移設先に設置した新仮想基盤にコピーする論理的な作業があり、そこに時間差が発生します。今回は、その時間的なズレを吸収しながら、GWの5日間で確実に実行する必要がありました。緻密な移行計画を立てたうえで堅実かつ慎重に進めるMINDの協力もあり、計画通りの予算とスケジュールで進めることができました」

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1拠点化とサーバー仮想化により
インフラコストを削減

 ライオンは今回、DC2拠点による「リスク分散」でなく、DC1拠点による「リスク軽減」としたことで、BCP対策のコスト削減と運用コストの軽減を実現しています。仮想サーバーが350台から250台へ、物理サーバーが23台から14台に減ったことで、ラックの本数も17本から9本に減り、DCの利用・管理コストの軽減にも貢献しました。
 「サーバーなどのインフラに関しては、物理的に半分は減っているので、コストも半減していると見ていいでしょう。合わせて、各種運用の見直しと標準化により、運用面でも負荷が軽減されました。その結果、大規模な機器リプレースも伴ったDC移設となりましたが、7年間ほどでコストを回収できる見込みです」(宇都宮氏)
 また、IT基盤の最新化により、CPU性能、メモリー容量、ファイルサーバーのディスク容量や速度なども強化され、システム全体のパフォーマンスも向上しました。

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次のフェーズではDR環境の構築と
運用のBCP対策が視野に

 ライオンのBCP対策は、今回の「減災」を第1フェーズと位置付けており、次のフェーズでは本格的なDR環境の構築を見据えています。
 インフラ面でのBCP対策を完了し、システム運用面でのBCP対策を進める計画で、次フェーズに向けて本格的な検討フェーズに移行しています。
 「自社で運用を行っている関係上、東京直下地震などで本社が被災すると、システム運用の対応ができなくなってしまいます。そこで、東京以外の場所にもバックアップの運用拠点を置き、人的なアウトソーシングも含めて、BCP対策を行うことが、今後10年先を見据えた課題です」(阪間氏)
 ライオンは、人々の「健康」「快適」「環境」を支えるビジネスを通して、これからも暮らしに役立つ製品・サービスを提供していきます。

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DC移設に向けた移行用ネットワークの構成イメージ

DC移設に向けた移行用ネットワークの構成イメージ

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