メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2018年3月号(No.234)
  • 既存ビジネスを根底から揺さぶる
    「破壊的変化」の中で
    講じるべき対策を考える

情報通信技術の進化と普及は、時に既存のビジネスを根底から揺さぶる「破壊的変化」をもたらします。破壊的変化は、企業にとって事業を発展させる千載一遇のチャンスであると同時に、既存の事業がごく短期間に失われてしまうリスクにもなり得ます。破壊的変化にどう対処するかは、企業経営の大きな課題になっています。破壊的変化に対するマネジメント手法として、現在注目されているのが、米国の著名なコンサルタントであるジェフリー・ムーア氏の提唱する「ゾーンマネジメント」です。破壊的変化は、どのような影響を与えるか、それに対してどのような対応方法があるのかについて、紹介します。

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既存のビジネスモデルを覆す
「破壊的変化」とは

 「破壊的変化」とは、新しいテクノロジーやその応用によって、既存のビジネスモデルが根底から揺さぶられ、まったく異なる市場に置き換わるような現象を指します。通常、製品やサービスは既存路線の延長線上で持続的に変化していきますが、時には新しい技術やアイデアによって不連続な変化(=破壊的変化)が起きます。
 破壊的変化の代表的な例としては、フィルムカメラからデジタルカメラへの急速なシフトがあります。フィルムカメラで写真を撮るためには、まず銀塩フィルムを購入してカメラに装填して撮影し、撮影後にはフィルムを街のプリントサービスに持ち込み、有料で現像処理とプリントを依頼する必要がありました。一連の流れで有利なポジションにいたのが、フィルムメーカーです。フィルムメーカーは、銀塩フィルムを販売するだけでなく、現像・プリントサービスを世界中にチェーン展開していました。これは、どこの会社のカメラを使うかに関係なく、ユーザーが写真を撮れば最終的にはフィルムメーカーの利益になるという非常に強力なビジネスモデルでした。
 しかしこのビジネスモデルは、フィルムや現像処理が不要なデジタルカメラの登場によって崩壊します。デジタルカメラの普及が本格化すると、わずか数年の間に銀塩フィルムの市場は大幅に縮小してしまいました。
 写真市場に破壊的な変化をもたらしたデジタルカメラも、今ではその市場をスマートフォンのカメラ機能によって脅かされています。スマートフォンのカメラは、ソーシャルメディアと組み合わさって、機能面だけでなく、写真の楽しみ方そのものにも破壊的な変化をもたらしています。
 今後もインターネット、モバイル、クラウド、ソーシャルメディア、人工知能といったテクノロジーの発達と組み合わせにより、多くの予測不能の破壊的変化が起こると考えられます。

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企業全体を4つのゾーンに
分けてマネジメント

 このようなテクノロジーによる破壊的な変化は、変化を主導する攻撃側に回れば、新市場を制覇する千載一遇のチャンスとなりえますが、変化の影響を受ける防御側になれば大きな経営リスクとなります。特に、すでに一定の地位を築いた企業は、既存の事業が足かせとなって、自ら変化を起こすことが難しく、また外部からの破壊的な変化にも弱いと言われています。どのようにすれば市場に破壊的変化を起こせるか、逆に自社の既存ビジネスが破壊的変化の影響を受ける際にどのように対処すべきかは、現代の企業経営の重要なテーマとなっています。
 この問題に対する実践的な解答のひとつとして注目されているのが、米国の著名なコンサルタントであるジェフリー・ムーア氏が最新の著作で提唱している「ゾーンマネジメント」です。ジェフリー・ムーア氏は、ベストセラーとなった「キャズム」や「エスケープ・ベロシティ」など、これまでにも破壊的変化に関係する著作を数多く執筆してきました。
 「ゾーンマネジメント」でムーア氏は、破壊的変化が頻繁に起こる時代にあって、企業をどのようにマネジメントすべきかについて、具体的な提言を行っています。副題に「破壊的変化の中で生き残る策と手順」とあるように、新興企業ではなく、すでに一定の地位を築いた企業を対象にしている点が大きな特徴といえます。
 すでに一定の地位を築いた企業にとって重要なことは、既存ビジネスを維持しつつ新たなビジネスに参入したり、既存ビジネスに対する破壊的変化による攻撃をうまく対応することです。
 それを可能にするために、ゾーンマネジメントでは企業運営を、パフォーマンス・ゾーン、プロダクティビティ・ゾーン、インキュベーション・ゾーン、トランスフォーメーション・ゾーンの4 つのゾーンに分類することを提唱します。そして、それぞれの特性に合った独自の予算や目標、ポリシー、評価指標などにより運営します(下図参照)。
 パフォーマンス・ゾーンは、すでに実績のある既存の製品やサービスを提供するゾーンです。企業の収益を生み出すエンジンです。
 プロダクティビティ・ゾーンには、マーケティング、エンジニアリング、技術サポート、サプライチェーン、顧客サービス、人事、情報システム、法務、財務、総務などいわゆるコスト・センターが属します。合理化により企業の利益を確保する役割を担います。
 インキュベーション・ゾーンでは、大きな成長が期待される新規ビジネスを育成します。ただし、実験やプロトタイプレベルのものではなく、小規模ながらも事業化されています。パフォーマンス・ゾーンと切り離し、各事業を独立した企業のように運営することで、スタートアップ企業のような柔軟な運営を可能にします。

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■ 別々にマネジメントすべき「4つのゾーン」

ゾーンマネジメントでは、企業全体を特性の異なる4 つのゾーンに分割する。
それぞれのゾーンは、その特性にあった最適なルールの下で、独立しつつも連携を取りしながら運営される。
トランスフォーメーション・ゾーンは、破壊的変化に対応するときだけに作られる特殊なゾーン。
■ 別々にマネジメントすべき「4つのゾーン」
出典:栗原 潔 氏

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破壊的変化への対応を可能にする
トランスフォーメーション・ゾーン

 注目すべきは4 つめのトランスフォーメーション・ゾーンの存在です。このゾーンは、破壊的変化に対応する時にだけ登場するCEO 直轄の特殊なゾーンです。例えば、自らが破壊的変化を起こそうとする攻撃時には、インキュベーション・ゾーンから選択した有望な事業を、トランスフォーメーション・ゾーンに移して短期間に成長させます。既存ビジネスの運営に特化したパフォーマンス・ゾーンに、いきなり新規ビジネスを送り込んでもうまく成長させることはできないとムーア氏は指摘します。そこで、CEO が直轄するトランスフォーメーション・ゾーンで、新規ビジネスに最適なチームや方針で運営することで、素早くスケールアップさせます。もちろん、新規ビジネスが十分に成長した後はパフォーマンス・ゾーンに属する事業のひとつになります。また、破壊的変化への対応時、つまりトランスフォーメーション・ゾーンが稼働している際には、他の3 つのゾーンにも通常とは異なる運営が求められ、全社を挙げてトランスフォーメーションをサポートします。
 トランスフォーメーション・ゾーンの働きは、同書の内容のごく一部に過ぎません。同書では組織作りから年次計画、予算配分、人材、状況に応じた各ゾーンの運営方針など、多岐にわたるマネジメント手法が具体的に書かれています。そのすべてが、将来、自社のビジネスに対する破壊的変化が必ず訪れるという前提で作られており、これからの企業経営を考えるうえで、大いに参考となるでしょう。

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