メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2017年 6月号(No.227)
  • イノベーション創出を促進する
    ロジカル×クリエイティブの
    ハイブリッド思考

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株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田 徹 氏

ビジネスのグローバル化やデジタル化などの急速な変化によって、現代のビジネスパーソンには、綿密な計画を立てて実行する能力だけでなく、変化し続ける状況に合わせてその時々の最善手を打ち続ける能力が求められます。他社との差別化やイノベーションに繋がる斬新な発想力も欠かせません。こうした時代の流れに対応するために、これまでビジネスの主流であったロジカル思考に加えて、クリエイティブな思考を導入する動きがあります。ここでは、ロジカル思考とクリエイティブ思考を組み合わせた思考法を提唱している株式会社アイディアポイントの代表取締役社長 岩田徹氏にお話を伺いました。

岩田 徹(いわた・とおる)氏プロフィール
東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。外資系コンサルティング会社(A.T.Kearney、Roland Berger)、外資系大手ソフトウエア会社(SAP Japan)を経て、セルムグループにて、株式会社ファーストキャリアの設立に参画。その後、同グループ内にて「企業とヒトの創造性開発」をテーマに株式会社アイディアポイントを設立、代表取締役に就任。企業の新規事業開発支援、新商品企画コンサルティングサービス提供と同時に、組織及び個人に対する創造性開発ワークショップを行う。http://www.ideapoint.co.jp/

現代のビジネスに要求される
2つの思考力

 岩田氏が代表を務めるアイディアポイントは、企業向けの事 業開発コンサルティングや研修などを提供しています。
 「当社は、企業が何か新しいことを始めるためのサポートを提供しています。例えば、新規事業開発の支援では、コンサルティングや人材育成を行うほか、実際に開発チームに参加してメンバーと一緒にアイデアを考えたり、ファシリテーターの役割を務めたりしています」
 同氏はまた、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)の研究員として、イノベーションを生む方法の研究も行っています。
 こうした活動の中で岩田氏は、現代のビジネスパーソンは、ロジカル思考とクリエイティブ思考の両方を身につけ、状況に応じて使い分ける能力を持つべきだと提唱しています。同氏は、このロジカル思考とクリエイティブ思考の組み合わせについて以下のように説明します。
 「ビジネスパーソンには、まずロジカルな思考が求められます。しかし、現実にはそれだけでは対処できないこともあります。そこで、ロジカル思考を身につけたうえで、もっと直感的な物の考え方や“あえて”ロジカルでない発想をしてみることが差別化の源泉となるというのが私の主張です」

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ロジカル思考の限界を
「直感」で打破する

 ここでまず、ロジカル思考とクリエイティブ思考とは何かを確認しておきましょう。ロジカル思考とは、事実や情報を収集、積み上げて法則を見出したり、情報を法則に当てはめて結論を導く思考法です。市場調査やマーケティング理論に基づいた製品開発、営業活動はこれに当たるでしょう。ロジカル思考は、問題提起から結論に至るまでの段階とその理由が明確です。
 一方、クリエイティブ思考では、問題の答えを理屈抜きに自由に導き出します。途中の思考経過はブラックボックスでもよく、どうなっているのかは本人にもわからないこともあります。岩田氏はこれを「直感」と表現します。直感で得られたアイデアや結論は、時にロジカル思考では越えられない壁を簡単に飛び越えるイノベーションをもたらします。
 「ロジカル思考は、ビジネスで基本となる思考法です。手順が決められているので、導入すれば効率よく一定の成果が得られます。その半面、他者も同じ結論に達することが多く、差別化が困難です。また、ロジカル思考では、全体を細かく分割してそれぞれの要素を改善することで全体が良くなるという考え方をしますが、要素同士が複雑に関連している複雑な問題など上手く解決できない場合もあります。そんな場面では、クリエイティブ思考による直感で、思考をジャンプさせる必要があるのです」(岩田氏)
 岩田氏は、ロジカル思考とクリエイティブ思考の違いについて、非常にわかりやすい例を挙げます。
 「例えば、トイレ清掃のコストを下げようとするとき、ロジカル思考では、清掃作業を細かなプロセスに分けて、それぞれのコストを削減するでしょう。全く異なるアプローチとして、男性の小便器に標的となる小さなマークを付けると、皆がそこを狙うため、そもそもトイレの床が汚れにくくなるという方法もあります。こうしたアイデアは、ロジカル思考ではなかなか生み出されません」

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あらゆる職種に求められる
クリエイティブな直感

 “クリエイティブ思考”というと、どうしてもデザインや画期的な新技術、新製品のアイデアを創出するため、というイメージがありますが、岩田氏はクリエイティブ思考による直感は職種に関係なく、あらゆる業務にも役立つと言います。
 「救急救命士の人達は現場に着いた時、何をすべきかがすぐにわかるそうです。将棋棋士も盤面をぱっと見ると、まず次の手が頭に浮かび、それから手の有効性を検討して指すといいます。どちらもロジカル思考とは逆で、先に結論が出てきます。物事を積み上げで考えるのは時間がかかりますから、短時間で決断しなければならない場面では直感はとても重要です」(岩田氏)
 こうした直感は、過去の知識や経験から脳が意識する間もなく結論を引き出すことによって得られるのだと、岩田氏は考えています。このため、職種に関係なく身につけることができ、年齢が高くなれば知識や経験が増えるので、より精度が高くなると言います。
 「ロジカルに考えなくても直感的にわかることは沢山あります。経営者が経理の数字をぱっと見るだけで、何かおかしいと気づいたり、プロジェクトマネージャーが計画書をざっと眺めた瞬間にトラブルが起こりそうな場所がわかることがあります。私はビジネスの現場でも、理詰めだけでなく、もっと直感的、感覚的でも良いと考えています。誰もが世界を変えるようなアイデアを思いつく必要はありませんが、営業マンなら、どうしたら売り上げが伸びるかを、まず直感的に考えてほしい。技術系の人であれば、その技術でどのようなことが実現できたら良いかを、直感的に考えてほしいのです。こうした直感は、当初は皆が持っていたはずです。ところが組織の中にいると客観的な意見を求められることが多く、直感的な発言がしにくい環境になっています。私どもの活動は、この状況を何とか変えていこうとしています」
 ただし、クリエイティブ思考だけでは、現実のビジネスに対応できないことも岩田氏は付け加えます。
 「クリエイティブ思考で導いた直感的なアイデアを実現するには、ロジカル思考を使って検証したり、説明する必要があります。また、デザイナーなど、クリエイティブな職種の人達の多くは、自分たちのアイデアを、周りの人に説明することが苦手です。こうした人達は、ロジカル思考を身につけ、自分の直感から得たアイデアを他人に対して論理的に説明できる能力が求められます。これからの時代はロジカルとクリエイティブの両方をうまく使い分けられるようになることが、ビジネスパーソンを幸せにすると思います」

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ロジカル思考とクリエイティブ思考の違い

ロジカル思考とクリエイティブ思考の違い。
状況に応じて使い分けることで、それぞれの良い所を利用する。

■ロジカル思考とクリエイティブ思考の違い
出典:株式会社アイディアポイント

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  • 日々、意識して考えることで
    ロジカルとクリエイティブの
    思考力は高められる

物事のなぜ?を考え続けることで
ロジカル思考が身につく

 ビジネスパーソンにとっては、まずロジカル思考が必要です。周りの人達と協力しながら業務プロセスを着実に進めて成果を出すには、誰もが理解できる論理的な考えが欠かせません。また、クリエイティブ思考による直感で得られたアイデアを実現するためにも、ロジカル思考は重要です。
 ロジカル思考を学ぶうえでは、すでに多くの優れた書籍がありますし、ビジネススクールをはじめ、研修やトレーニングの場も数多く存在します。しかし岩田氏は、一般のビジネスパーソンがロジカル思考を身につける簡単な方法として、日ごろから物事の“なぜ”を考え続けることを挙げました。
 「ロジカルな思考を鍛えるには、何かを見た時にこれはなぜだろうと考えることをひたすら繰り返すのが基本です。ニュースを見た時に、“これはなぜだろう”と必ず理由を考えてください。会社が合併したというニュースを耳にしたらなぜ合併したのかを考えます。ニュース以外でも、例えば新商品の広告を見たらなぜこれを買ってくださいと言っているのかを考えましょう。広告はメッセージが明確なので、最初のトレーニングに適しています。これを毎日やります。次に、本や記事を読んだ時に、その結論は何で、具体的にはどういうことを言っているのかをまとめます。コンビニや家電量販店に行って、常に世の中の何が新しいかを見てください。毎日歩いていると様々なことが変化していることに気がつくはずです」(岩田氏)
 日ごろから漫然と情報に接するのではなく、その情報を分析したり整理する習慣をつけることで、ロジカルな思考が身につくというわけです。
 ただ、ロジカル思考の使い方には、注意が必要だと言います。「ロジカル思考をネガティブな方向にばかり使うことは避けるべきです。他人の仕事やアイデアの良くない点や“実現できない理由”をロジカルに説明することはいくらでもできます。しかしそれでは、新しいことは何もできません。どうやったら実現できるのか、どうやったら上手くいくか、というポジティブな方向に思考を向けることが大切です」(岩田氏)

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クリエイティブ思考に求められる
土台となる絶対的な情報量

 もうひとつのクリエイティブな思考力や直感は、どのようにして身につけられるのでしょうか? 前述のように、会社組織の一員として活動するうちに、多くの人は客観的、ロジカルな発言しかできなくなっていきます。まず、そうした意識を変えることが重要です。そして、次の段階で必要になるのは、とにかく多くの情報に接することだと言います。
 「クリエイティブな思考を行うためには、まず、様々な情報を集めることが大切です。最近流行っているもの、自分の好きなものなど、何でも構いません。とにかく自分に様々な情報が入ってくるような環境を築いてください。もちろん、ブレインストーミングやブレインライティングといった発想法について知っておいて損はありません。しかし、発想をするためには、まず沢山の情報に接していることが重要です。なぜならば、クリエイティブな発想の多くは、違う分野の情報を利用したり、異質な情報を組み合わせることで生まれることが多いからです。自分の仕事に関係する情報を集めておくのはプロとして当たり前のことですが、仕事とは直接関係のない情報もしっかり身につけておくべきです」
 情報が入ってくるような環境作りとして、アイディアポイントでは、例えば、本はデジタルでなく紙で買う、そして書店に行ったら目的の本以外に、何でも良いのでもう一冊買ってくるといったことを心がけているとのことです。
 「本を紙で購入することの意味は、情報を共有するためです。同僚の買った本が机の上に置いてあれば、自然と目に入ります。そこで会話が生まれ、新しい何かが生まれる。書店でもう一冊買う本は、単に目的の本の隣にあった物でも良いのです。そうすると、今まで全く知らなかった分野の情報が得られます」(岩田氏)
 もうひとつ岩田氏が勧めるのが人と会うことです。
 「いわゆる“センスの良さ”というのは、ビジネスの世界では、持っている情報の質の良さだと言えます。自分のセンスを上げるための最も良い方法は、センスの良い友人を持つことです。自分と異なる考えを持った面白い人と繋がっておくと、その人がどういうセンスで情報を選んでいるかがわかります。また、学生時代の友人のように、直接利害関係のない友人は大切にしましょう。クリエイティブな思考力を上げる方法を、非常にシンプルにまとめられるなら、組織の内に閉じこもらず、外に出て多くの人に会ってくださいということになります」

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コミュニケーションにおける
ロジカルとクリエイティブの使い分け

 ロジカル思考とクリエイティブ思考の両方を身につけた人が能力を発揮するためには、組織もそれを生かせるようになっている必要があります。
 「組織としては、社員のクリエイティブな発想を生かすために、新しいことを思いついた人を受け入れる場を用意しておくことが必要です。その際には、会社が求めているアイデアの種類や、あらかじめここまで企画を練りあげておきなさい、という条件を先に示しておくと良いでしょう」
 さらに、組織内ではロジカルなコミュニケーションを徹底することが大切だと岩田氏は言います。まず、組織の中で素早く正確に情報が伝わらないと議論が進みません。
 「まず結論を話しなさいと、弊社の社員にもいつも話しています。それだけでロジカルな思考力は随分鍛えられます」
 前述のロジカル思考のトレーニングでは、物事のなぜを考えましたが、これはロジカルなコミュニケーションにおいても役立ちます、話の結論とその理由が自分の中で整理されていれば、相手にわかりやすく正確に伝えることが可能だからです。
 コミュニケーションをロジカルにすると、曖昧な言い方をすることがなくなります。これを日本の組織で行うのは一見難しそうですが、最終的には率直なやり取りによって、組織内の信頼関係が高まるそうです。そのうえで、論理的な思考だけでは越えられない壁を、クリエイティブな直感によって乗り越えます。
 「新規事業のプレゼンなどでは、ロジカルに説明すべきところと、クリエイティブに押しきった方が良いところがあります。相手から論理的な説明を求められたら、きちんとデータを示して説明する一方で、あるタイミングでは、相手の目を見て自分に任せて欲しいとアピールすべきです。すべての直感やクリエイティブなアイデアが、論理的に説明できるわけではありません。必ず、どこかで飛躍が必要な部分があります。そういうところを明るく乗り切れる力もビジネスパーソンには必要です」(岩田氏)
 また、クリエイティブな力を発揮するためには、組織内に楽しい雰囲気を作ることが大切だと岩田氏は言います。
 「楽しい気分はクリエイティブな発想を行うためにはとても大事です。自由な発言が許されないような雰囲気では、中々斬新なアイデアは生まれません。残念ながら、日本の会社は楽しい雰囲気の演出があまり上手ではありません。ただ、日本企業は新しいアイデアを長い目で育てることは上手です。その際には、担当者に完全に任せてしまうのではなく、組織として見守りながら必要なところを丁寧にフォローしていくことが大切です」

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組織のコミュニケーションにおけるロジカル思考とクリエイティブ思考(直感)の組み合わせ例。

組織のコミュニケーションにおけるロジカル思考とクリエイティブ思考(直感)の組み合わせ例。通常はロジカル思考で正確な情報交換を行い、時には直感を使って限界を打ち破る。

■強いチームのコミュニケーション
出典:株式会社アイディアポイント