メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2017年 7月号(No.228)
  • 注目を集める
    ブロックチェーンの
    基礎知識と可能性

現在、最も注目を集めているIT技術のひとつにブロックチェーンがあります。ブロックチェーンは、仮想通貨の発行・管理システムとして作られました。自律分散型システムとも呼ばれ、中央管理者がなくても動作する、システムトラブルやサイバー攻撃に強い、なりすましや改ざんが難しいといった特徴があります。従来のクライアントサーバーシステムにはない特徴から、次世代のインフラとしての期待が集まっています。ここでは、ブロックチェーンとはどのような技術なのか、基本的な仕組みとその可能性について解説します。

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ブロックチェーンは
仮想通貨を実現させた仕組み

 ブロックチェーンは、もともと仮想通貨「ビットコイン」を実現する仕組みとして登場しました。2009年に登場したビットコインは、2017年4月現在、日本円に換算して2兆円以上の時価総額があります。円やドルといった従来型の通貨は、紙幣や硬貨といった現物と、国や中央銀行など発行体の信用によって成り立っています。一方、ビットコインは、インターネット上で稼働するシステム上のデータとしてのみ存在し、現実の硬貨や紙幣はありません。また、国や中央銀行のように、通貨の発行や管理を行う特定の組織があるわけでもありません。ビットコインは、世界中に広がるネットワークとソフトウエアによって、自立分散的に維持・管理されています。これを可能にしている仕組みがブロックチェーンです。
 ブロックチェーンには、特定の中央管理者がいなくても運用できる、システムトラブルやサイバー攻撃に強い、なりすましやデータの改ざんが難しい、といった特徴があります。2009年の登場以来、ビットコインのブロックチェーンは、一度も停止することなくすべての取引履歴を正確に記録し続けてきました。この実績が新しいタイプのIT基盤として、ブロックチェーンが注目されている大きな要因となっています。

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P2Pネットワークによって
中央管理者不要の堅牢なシステムを実現

 ブロックチェーンの分かりやすい特徴として、ピア・ツー・ピア(P2P)ネットワークの採用が挙げられます。現在、インターネット上のサービスのほとんどは、中央にあるサーバーに多くのクライアントがぶら下がるクライアントサーバーシステムを採用しています。これに対しP2Pは、対等の関係にあるコンピューター(ノード)同士が直接やり取りをします。
 ブロックチェーンでは、P2Pの各ノードが同じ内容の台帳(データベース)を保持し、必要に応じて相互にやり取りしながら自律的に動作します。これにより、全体を管理する存在がなくても、システムを維持できるようになります。
 中央集権型のクライアントサーバーシステムでは、中央のサーバーに問題が発生すれば全体が止まってしまいますが、ブロックチェーンのような自律分散型システムでは、システムを構成するコンピューターのいずれかが壊れたとしても他のマシンが自動的に代替して稼働し続けます。このため、P2Pを構成するノードの数が多いほどシステムは堅牢になります。

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ブロック化したデータを連結することで
改ざんを困難に

 「ブロックチェーン」という名前の語源となったのが、独特のデータ記録方式です。ブロックチェーンは、すべての取引履歴(通貨の場合は送金情報)を、台帳(一種のデータベース)に記録していきます。その際、複数の取引を「ブロック」と呼ばれる塊にまとめて追加します。個々のブロックには取引の内容に加えて、ひとつ前のブロックの内容から算出した値(ハッシュ値)も一緒に格納します。ブロックは時系列でどんどん追加されていき、チェーンのように1列に繋がったデータ構造になります。ハッシュ値には、元のデータが少しでも変化すると異なる値になる特性があります。ですから過去の取引内容を改ざんするには、後続のブロックのハッシュ値をすべて書き換える必要があります。たとえ金額的な辻褄を合わせてもハッシュ値はごまかせません。台帳がひとつであれば、すべてのブロックを作り直すこともできるでしょう。しかし、ブロックチェーンは分散型システムです。P2Pネットワークを構成する他のノードも同じ台帳を所有していますから、まわりのノードからのチェックにより、すぐに改ざんが発覚してしまいます。
 また、ブロックチェーンで管理する通貨などの資産には、暗号技術を使った電子署名が施されています。この電子署名に対応する暗号鍵(秘密鍵)を持っている人だけが、資産の所有者となります。送金などの資産の移動は、この所有者しか行えません。これにより、なりすましや取引情報の改ざんを防止しています。
 ただし、ブロックチェーンには本人確認の機能はありません。システム上は暗号鍵を持っていれば、誰であろうと資産の所有者とみなされます。そのため、暗号鍵の管理には注意を払う必要があります。また通常、取引情報そのものは暗号化されず、第三者がその内容を見ることができます。特に、ビットコインのように誰でも参加できるオープンなブロックチェーンでは、データの秘匿性は高くありません。

 

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合意形成のための
ユニークなインセンティブ

 ブロックチェーンでは、P2Pネットを構成するすべてのノードに同じ台帳が保存されています。前述のように、台帳には次々と新しいブロックが追加されていきます。各ノードが勝手に台帳を書き換えると、ノード間で記録に矛盾が生じてしまいます。そこで台帳に追加する新しいブロックの内容を統一する仕組みが必要になります。これを「合意形成」と呼びます。合意形成には様々な手法があります。例えばビットコインでは、簡単に言うと、次のブロックの計算を最も早く終えたノードの内容が、他のノードによるチェックを経て採用されます。そして計算競争に勝ったノードには報酬として一定の新規発行通貨が与えられます。この通貨の入手がインセンティブとなって、多くの人がブロックチェーンのP2Pネットワークに参加し、結果的にシステムの分散性が高まる仕組みになっています。一方で、この合意形成に時間がかかる点が、ブロックチェーンの課題ともなっています。
 このように、ブロックチェーンはP2Pや暗号技術、ユニークなインセンティブ付与の仕組みなどを巧みに組み合わせることで、今までにない自律分散型台帳システムを実現しています。
 現在、インターネット上には数百種類の仮想通貨があると言われています。また、ビットコインの台帳の一部を他の目的に利用する試みや、より汎用性の高い新しいブロックチェーンシステムの運用も始まっています。ITベンチャー企業はもちろん、国内外の大手金融機関や中央銀行など多くの企業がブロックチェーン技術の実験や検証を行っています。これからは、仮想通貨だけでなく、様々な目的にブロックチェーンを活用しようとする動きがいっそう盛んになると考えられます。今後の動向から目が離せません。

ブロックチェーンの主な特徴

ブロックチェーンの主な特徴。P2Pネットワークや暗号技術などを組み合わせることで、管理者なしでも自律的に動作し続けるシステムを実現している。
■ブロックチェーンの主な特徴
出典:高木 聡一郎 氏

※ 本記事は、エキスパートインタビューにご登場いただいた高木聡一郎氏への取材をベースに作成しました。

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