メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2017年 7月号(No.228)
  • ブロックチェーンは
    組織のあり方を変える
    可能性を秘めています

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国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
研究部長 博士(学際情報学)
主幹研究員・准教授
高木 聡一郎 氏

多くのIT技術では、処理が速い・低コスト・コンパクトといったメリットが語られますが、ブロックチェーンはこうした単純な高性能化とは異なる特徴を持っています。果たしてブロックチェーンの優れた点や革新性はどのようなところにあるのか、その機能はビジネスや社会にどんな変化をもたらす可能性があるか、といった点について、ブロックチェーンに詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの主幹研究員・准教授 高木聡一郎氏に伺いました。

高木 聡一郎(たかぎ・そういちろう)氏プロフィール
東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。専門は情報経済学。2015年より、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授を務める。2016年、国際大学GLOCOMに「ブロックチェーン経済研究ラボ」を立ち上げ、代表を務める。経済産業省(三菱総合研究所受託)「ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸整備検討委員会」委員長などを務める。主な著書に「ブロックチェーン・エコノミクス」 (翔泳社)、「Reweaving the Economy」(東京大学出版会)など多数。

仲介者なしに価値の移転を実現する
ブロックチェーン

 高木氏は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターにおいて、情報経済学を専攻しています。
 「私はITが経済や社会にどういう影響を与えるかという研究を進めています。中でも長く研究してきたテーマがITと組織の問題です。現代は、ITの普及によって組織の形が変わってきており、それが国境を越えていろいろな形で再編成されていくところに関心を持っています」
 高木氏は、ブロックチェーンについても社会や経済に影響を与える新しい技術として、早くから注目してきました。
 「ブロックチェーンは、インターネットの上で"価値"を交換できる仕組みです。今までは、インターネット上で価値を交換するには仲介者が必要でした。しかし、ブロックチェーンを使えば仲介者がいなくても、Aさんの所有する価値をBさんに確実に送れます。よりインフラに近いレベルで価値の移転が正確に行える点が、ブロックチェーンの新規性です」
 高木氏は、組織のあり方という観点から見てもブロックチェーンには新しさがあると言います。
 「ブロックチェーンは、価値の正確な移転という難しい処理を、完全な分散型システムで実現しています。これを組織に置き換えると、中央で統括する会社や上司が居るわけでもなく、雇用契約を結んだわけでもないのに、皆が協力しあって資産の管理業務を行っている状態です。皆が協力するのは、新規発行通貨(トークン)を得るためです。何かの業務を分担してもらうためにトークンを発行し、それを皆で分かち合う形で組織が動いていく。こうした形で自立分散型組織を実現した点も、ブロックチェーンの革新的なところです」  

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世界各地で進められている
ブロックチェーン応用プロジェクト

 ブロックチェーンは、どのような用途に使われようとしているのでしょうか。高木氏は、現在進められているブロックチェーンの応用プロジェクトをいくつか紹介してくれました。
 「スウェーデンでは、土地の登記の仕組みをブロックチェーンで行う実験が行われています。面白いのは、最終的な登記だけでなく不動産取引全体の流れをブロックチェーン上で共有するという点です。また、貿易金融における情報共有に使おうとするプロジェクトもあります。貿易はステークホルダーが多くサプライチェーンが非常に複雑なため、荷物の不着や代金の未払いなどのトラブルが多発します。そこで、すべての関係者がブロックチェーン上で輸送や支払状況を共有することで、トラブルを減らそうというものです」
 これらは、取引の履歴を正確に記録でき、改ざんが難しい、内容がオープンという、ブロックチェーンの特徴を活かしたものです。
 「もうひとつは、自律分散型組織という性質を利用したものです。自家用車をタクシーのように配車するライドシェアリングというサービスがありますが、従来は特定の企業がシェアリングを管理・仲介していました。ブロックチェーンを使うことで、ユーザーとドライバーを直接結びつけるサービスがアメリカですでに始まっています。ほかにも、フリーマーケット的なサイトや、仕事を請け負うクラウドソーシング、ソーラーパネルの余剰電力の取引などがあります。これらは、従来のプラットフォーム的なビジネスを、分散型組織によって特定のプラットフォーマーなしに行おうとするものです」(高木氏)
 その他、将来的に期待されている分野にはIoTでの応用があります。例えば、現在はIoT機器がWi-Fiや携帯電話回線を利用するには、あらかじめ契約が必要でした。そこで、ブロックチェーンや仮想通貨を利用することで、事前の契約なしにIoT機器が自律的に回線などのリソースを調達し、協調動作するシステムが考えられています。これには自律分散に加えて、ごく小額の送金が可能な仮想通貨の特徴も利用できます。

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信頼性の高い情報共有の仕組みを
低コストで構築・運用

 新しいITシステムは、コスト削減の手段として期待されることが多いのですが、高木氏はブロックチェーンが、システム以上に組織のコストを下げる効果があると考えています。
 「ブロックチェーンの大きなポイントは、組織が信頼性を担保するのではなく、アルゴリズムそのもので情報の信頼性を担保できることです。まだしっかりとした組織や管理体制ができていない状態でも、ブロックチェーンで情報を管理すれば、一度登録されたあとは改ざんされていないことを確認できます。例えば、数多くのステークホルダーの間で情報を共有するために、従来は協議会や情報センターといった新しい組織を作る必要がありました。これには多額のコストが必要です。しかし、参加者が処理を分担して共同のブロックチェーンを動かせば、信頼性の高い情報共有の場が作れます。ブロックチェーンを使うことで、情報管理組織の構築や運用コストを下げられる可能性があります」

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課題は秘匿性・スピードと
分散性のバランス

 現在のブロックチェーンが抱える主な課題としては、スピードと秘匿性の低さがあります。ビジネスへの導入を考えた場合には、特に秘匿性の低さが問題となります。そこで現在は台帳管理への参加を制限するクローズドなブロックチェーンを採用する事例が多いそうです。
 「秘匿性やスピードといったブロックチェーンの抱える課題を解決する手段は、結局のところ分散性をどれくらい妥協できるかという点に行き着きます。システムをオープンにすればするほど分散性は高まりますが、それだけ合意形成が遅くなり、秘匿性も低くなっていきます。参加者を少なくすれば高速で秘匿性も高くなりますが、そもそも分散していないとブロックチェーンを使う意味がないというジレンマがあります。今は、限られたメンバーだけで運用するコンソーシアム型や、ブロックを作成する部分だけはクローズドにして、データはオープンにするなどの方法が考えられています。秘匿性やスピードと、分散性のトレードオフをどう解決していくかが重要な課題です」(高木氏)
 まだ未知数な部分が多いブロックチェーンですが、高木氏は今後の動向を次のように予測します。
 「ブロックチェーンは、まだ出てきたばかりの技術ですから、多くの課題を抱えています。今後は、ブロックチェーンが不得手とする部分を他のシステムと融合させることで解決するような製品が開発されていくのではないかと考えています」

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ブロックチェーンの要素と現在、運用・開発されているアプリケーション例

今後、ブロックチェーン技術が進歩するにつれて、ここには無い新しい用途が登場することが期待されている。

■ブロックチェーンの要素と現在、運用・開発されているアプリケーション例
出典:高木 聡一郎 氏

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