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ニュースリリース

開発No.0221
2002年5月29日

 リリース全文 
(PDFファイル:113KB)

第二世代X線リソグラフィーの技術実証に世界で初めて成功

― 新規レジストにより半導体の微細化に目途 ―







 三菱電機株式会社(社長:野間口 有)は、半導体の微細化を推進するための次世代リソグラフィー(NGL)技術の候補として35nmレベルの解像力が期待できる第二世代X線リソグラフィーの開発を進めてきましたが、この度、そのキーとなる新規レジストを用いた微細パターン形成に成功し、第二世代X線リソグラフィーの技術コンセプトを実証しました。
 今回の成果は米国で開催される微細加工関連の国際会議(The 46th International Conference on Electron, Ion and Photon Beam Technology & Nanofabrication:5月28日〜31日、米国アナハイム)で5月29日に発表する予定です。



【開発の背景と概要】

 半導体デバイスの高集積化・高速化・低消費電力化に対する要求はますます厳しくなり、年を追う毎に微細化ロードマップは加速される傾向にあり、半導体の微細な回路パターンをウエハ上に焼き付けるリソグラフィー技術はArFリソグラフィー以降不透明な状況であり、各種露光方式のNGLの検討が進められています。  X線リソグラフィーは薄膜の等倍マスクを使用するため、マスク精度の達成が困難であると考えられてきました。しかし、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託を受けた技術研究組合ASETによって、4G-DRAM相当のパターンを用いた露光実験で100nm世代に対する精度が実証されました。本技術は日本が国際的に大きくリードしており、その技術レベルはNGL候補中で最も高い完成度にあり、しかも露光装置、マスク、レジストなどの主要インフラはすべて国内で供給可能です。この成果を活用して、次世代半導体製造装置開発のためにパターン付き300mmウエハを半導体装置メーカに供給する微細パタン技術研究コンソーシアムが設立されています。X線リソグラフィーの解像限界は60nmレベルと考えられており、その採用が見送られてきました。
 このような課題に対して当社は、X線リソグラフィーの解像力とウエハ処理能力の向上が期待できる第二世代X線リソグラフィー技術を考案しました。本技術は露光システム構成要素であるX線ミラー、X線マスク、レジストの材料系を変更するだけで実現でき、従来の装置インフラがそのまま使用可能であるという特長を有しています。具体的にはX線ミラーのコーティング材の変更とダイアモンド基板を用いたX線マスクの適用により、レジスト上に到達するX線の短波長成分を増加させるとともに、特定波長に対して吸収の大きい元素をレジスト中に導入することで、吸収X線の波長を短波長・狭帯域化し、解像限界を35nmレベルにまで拡張させます。同時に特定元素導入によりレジストのX線吸収量も増加するため、スループット向上も期待できます。このコンセプトの有効性は米国Wisconsin大学でシミュレーションにより検証されています。
 第二世代X線リソグラフィーを実現するための課題はダイアモンド基板のX線マスクと特定元素含有レジストですが、特にレジストは樹脂中に特定元素を導入してもレジストとして機能する溶解特性をもつ樹脂が必要なため、その実現が不透明でした。
 今回、当社は特定元素として臭素(Br)を選択してレジスト開発を行い、臭素含有レジストでパターン形成が可能であることを確認し、ダイアモンド基板マスクの実現とあわせて、第二世代X線リソグラフィーの実現可能性を世界で初めて実証しました。



【主な特長と成果】

  1. 臭素含有レジストの実現
    レジスト樹脂中に臭素元素を導入するにあたり、レジストを構成する高分子中での臭素元素の配位まで考慮して、レジストとして機能する溶解特性を有した樹脂を見出しました。この樹脂に酸発生材と溶解抑止材を加えてレジスト化し、露光評価により臭素含有レジストでパターン形成可能であることが確認できました。(世界初)

  2. ダイアモンド基板マスク上に超微細パターン形成
    第二世代X線リソグラフィーの必要構成要素であるダイアモンド基板のX線マスクを実現するため、ダイアモンド基板の平滑化、吸収体成膜、エッチング条件の最適化を行い、35nmレベルのマスクパターンを達成しました。



【今後の展開】

 今後はレジスト材料の最適化を行ない、感度50mJ/cm2以下を実現させるとともに、第二世代X線リソグラフィー技術により、X線露光が35nmレベルにまで拡張できることを実証していきます。



【特許件数】

    国内9件、海外6件 出願中



【開発の内容】

第二世代X線リソグラフィー
 X線リソグラフィーの原理を図1に示します。シンクロトロン放射(SR)光源からのX線をミラーで集光してデバイスの回路パターンを有するX線マスクを透して、近接して設置されたレジスト塗布ウエハ上にパターン転写します。X線露光の解像性は(λ・g)1/2(λ;露光波長、g;マスクとウエハのギャップ間隔)に比例するため、解像性の向上には露光波長の短波長化が有効です。しかし短波長X線はエネルギーが大きいため、レジストや基板の原子に衝突して出てくる二次電子の拡散距離が長くなり、光学像がぼやけます。このため、従来は波長0.7〜0.8nmが最適露光波長と考えられ、露光システムはX線ミラーを炭化珪素(SiC)や白金(Pt)でコーティングし、上記波長範囲でX線強度が最大となるよう設計されていました。また、X線マスクのメンブレン基板にSiCを用いても十分な透過率が確保できていました。
 しかし、第二世代X線リソグラフィーでは上記定説を見直し、二次電子の影響を最小限にできる範囲で短波長露光を実現し得る条件をシミュレーションにより算定し、35nmレベルの高解像が可能との結果を得ています。具体的なシステム構成を図2に示します。ミラーコーティング材をルテニウム(Ru)やロジウム(Rh)に変更して短波長に対するミラーの反射率を高め、マスク面上に到達するX線の短波長成分を増加させます。さらに、マスクのメンブレン基板材料をダイアモンドに変更します。従来のSiCメンブレン基板ではシリコン原子によるX線吸収のため、0.7nm以下のX線はマスクを透過することできませんでしたが、ダイアモンドメンブレン基板に変更することで短波長X線もレジストに到達可能となります。ダイアモンド膜は剛性が高いため、マスク作製プロセス中で生じる歪みが小さくできるというメリットもあります。レジスト上に到達した短波長X線に対する吸収を高めるために、レジスト中にこのような波長域に対して吸収率の高い特定元素を導入することで短波長に対しても感度を持ったレジストが実現できます。この時、導入元素のX線吸収特性や原子量をうまく選択することでレジスト中での吸収波長の狭帯域化やレジスト中やウエハ基板から生じる二次電子の影響を抑制することも可能です。
 このように第二世代X線リソグラフィーでは、光源や露光装置などは実績ある従来装置インフラがそのまま使用可能で、解像力向上、ウエハ処理能力、マスク精度の向上が期待できるという特長を有しています。

  1. 臭素含有レジストの実現
    X線露光ではレジスト中に入射するX線のエネルギーをレジスト構成元素(通常は炭素、水素、酸素)が吸収することでレジストが感光します。第二世代X線リソグラフィーではレジスト中に特定元素を導入することで短波長領域のX線の吸収量を増やすことを目的としています。各元素に対するX線の吸収特性は、Henkeらによってデータブックとしてまとめられています。当社は、レジスト中に導入可能で、短波長領域まで大きな吸収特性をもち、露光波長の短波長化と狭帯域化が可能な元素として臭素を選択し、臭素含有レジスト中のX線吸収特性をシミュレーションした結果、レジスト中での吸収X線波長が短波長化・狭帯域化し、X線吸収量が増加することを確認しました(図2)。しかし、実際に臭素元素を導入してパターン形成可能なレジストを実現するためには、アルカリ現像液に対して良好な溶解特性を持った樹脂が必要となります。 今回、当社ではレジスト樹脂を構成する高分子中の臭素元素の置換配位まで考慮することで、アルカリ現像に対してレジストとして機能する適正な溶解特性をもつ樹脂を見出し、東京応化殿の協力を得てこの樹脂に酸発生材と溶解抑止材を加えてレジスト化しました。この臭素含有レジストをダイアモンドメンブレン基板のX線マスクを用いて露光した結果、従来のX線レジストよりも高感度でパターン形成が可能であることが確認できました(図3)。また、臭素の導入でレジスト密度が高くなったために従来レジストと比べて酸拡散が抑制されてラインエッジラフネスが改善され、X線吸収効率が高くなったために基板二次電子の影響によるパターン形状劣化も小さくなっていることも確認できました。

  2. ダイアモンド基板マスク上に超微細パターン形成
    従来のX線マスクのメンブレン基板はSiCで構成されており、シリコン原子による吸収で波長0.7nm以下のX線はほとんどレジスト上には到達していませんでした。第二世代X線リソグラフィーでは解像性向上のために露光波長を短波長化する必要があり、シリコン原子を含まないダイアモンドメンブレン基板のX線マスクの実現は必須条件です。従来のダイアモンド基板は、平坦性が不十分であったためX線吸収体をアモルファス状態に成膜することができず、吸収体エッチング時に結晶構造の影響を受け、超微細パターンを形成することが困難でしたが、クラスターイオンビームなどの平坦化技術の発展により平坦性が改善されてきました。 当社ではこのようなダイアモンドメンブレン基板を用い、結晶構造をもたない吸収体の成膜条件を明らかにし、超微細パターンが描画可能な電子ビーム描画装置を用いて吸収体上にレジストパターンを形成し、これをエッチングすることでマスク吸収体パターンとして35nmレベルを達成しました(図4)。



【お問い合わせ先】

    報道関係からのお問い合わせ先
     三菱電機株式会社 広 報 部
      電話(03)3218-2333/Fax(03)3218-2431


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