― 銀行ネットワークなど高度なセキュリティを必要とする長距離通信の実現にめど ―
三菱電機株式会社(社長:野間口 有)は、原理的に盗聴不可能である「量子暗号*1」を用いた通信システム(「情報技術総合研究所」内:神奈川県鎌倉市大船)で、87kmの実験に成功しました。これは現時点で世界最長の量子暗号通信であり、東京(23区内)―富士山頂間の直線距離に相当します。 今回の実験は実用システムを想定したもので、長距離通信に適した波長帯である1550nm(ナノメートル)の光ファイバー通信を使用して、絶対安全な「量子暗号」と高速性を特長とする「現代暗号」を組み合わせた「統合量子暗号システム」による暗号通信を行ないました。
「現代暗号」と呼ばれる現在の暗号技術(暗号アルゴリズム)は、解読するために膨大な計算量(時間)が必要であることを安全性の根拠にしています。このため将来、超高速な量子コンピューター等が出現した場合には、この前提が脅かされることになると指摘されています。 これに対して「量子暗号」は、盗聴されたことを検知できるという「現代暗号」には無い特長があることから、絶対に解読されない究極の暗号として実用化が期待されています。 現在までに世界で、数十kmの通信距離で光ファイバーを用いた量子暗号通信実験がいくつか実施されていますが、光損失が少なく光ファイバー通信に適した長波長帯(1300nmや1550nm)で使用できる光子検出器の性能向上などが課題とされていました。こうした中で当社は、短波長帯での量子暗号通信システム実験(2000年9月発表)に成功後、通信距離拡大などの研究開発に取り組んできました。
*2:暗計数/光が入射されていないにもかかわらず検出器が光子をカウントしてしまう数。
絶対安全な「量子暗号」と高速な「現代暗号」を組み合わせた「統合量子暗号システム」の開発 実用システムを想定した「統合量子暗号システム」を開発しました。このシステムでは「量子暗号通信」を利用して送受信者が「暗号鍵」を共有し、その鍵を用いて通信データを高速に暗号化します。
高度な安全性と高速性を兼ね備えた実用的な暗号通信の実現(図2) 既存の「現代暗号」による通信では、暗号化や解読のために用いる「暗号鍵」を送受信者双方が持っていることが必要です。今回の実験では、量子暗号通信で「暗号鍵」を送ることにより、高度な安全性と高速性を兼ね備えた暗号通信を実証しました。
なお、この研究は、総務省「量子情報通信技術の研究開発」の一環である通信・放送機構の委託研究「量子暗号技術の研究開発」として実施されたものです。
今回、開発した技術は、高度な安全性を必要とする銀行ネットワークや外交、防衛等の通信システムに幅広く適用することが可能です。今後、光子検出器のさらなる性能向上、量子暗号通信システムの通信速度向上および多機能化、利用者にとり使いやすい統合システムの開発を進めていきます。また既設の光ファイバー網を使用した実証実験を通じて量子暗号通信システムの小型化、製品化を目指します。
主な機能 鍵共有機能、盗聴検知機能、誤り訂正機能、プライバシー増幅機能
実験性能 ビットレート :7.2bps ビットエラーレート:7.6% 通信距離 :87km光ファイバ伝送(世界最長距離) 位相・偏光ゆらぎを補償する光学系を採用
統合量子暗号システムの概要
主な機能 ユーザの使用用途に応じて柔軟に選択できる暗号機能 ・ One Time Pad ・ 現代暗号(64bitブロック暗号MISTY、128bitブロック暗号Camellia)