三菱電機株式会社(執行役社長:野間口 有)は、次世代パワー半導体用材料として期待されているSiC(シリコンカーバイド)を用いた低抵抗のパワーMOSFET※1を開発しました。その性能値は耐圧1.2kV、電流1A級でオン抵抗率※2 12.9mΩcm2(ミリオーム平方センチメートル)で、SiCを用いた同容量クラスのパワーMOSFETでは世界最高水準の低い抵抗値です。パワー半導体製品への応用を想定した場合、現在の代表的なパワートランジスタであるSi(シリコン)を用いたIGBT※3 と比べると、インバーターの電力損失を50%以上、低減できます。
なお、本研究の一部は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)との共同研究として実施したものです。
| ※1: | MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) 金属/酸化膜/半導体電界効果トランジスタ |
| ※2: | オン抵抗率はMOSFETを導通状態(オン状態)にしたときの抵抗値の指標で、値が小さいほど 電力損失を小さくすることができる。パワー半導体の重要な性能値 |
| ※3: | IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) 絶縁ゲートバイポーラトランジスタ |
- 【開発の背景と概要】
SiCには、代表的なパワー半導体材料であるSiと比べ絶縁性能を表す絶縁破壊電界強度が約10倍の大きな値であるなどの特長があります。SiCを用いることで、より高耐圧で低損失な半導体素子を実現できることから、インバーターなどパワーエレクトロニクス機器のさらなる省エネ化・高性能化・ 小型化に貢献するものと期待されています。
各研究機関では、SiCを電力のスイッチ制御を行うMOSFETに応用する研究が進められてきましたが、素子を流れる電流量を制御する領域であるMOSチャネル部の抵抗が高いことなどから、これまで理論値と比較して非常に大きな電気抵抗値しか達成されていませんでした。
今回、当社は、MOSチャネル形成技術や、SiC基板上のMOSFET構造の最適化など、SiC本来の特性を発揮させるための技術開発をすすめ、それらを適用したSiC-MOSFETを試作しました。
- 【主な開発成果】
- 「チャネルエピタキシャル成長層形成技術」を確立し、高品質MOSチャネルを形成
MOSFET作製時に行われる、導電性を変えるためのイオン注入過程、およびその後の活性化熱処理で発生する素子内の欠陥の影響を抑えるため、イオン注入面上に結晶品質に優れるMOSチャネル層を形成する「チャネルエピタキシャル成長層形成技術」を開発し、MOSチャネルの低抵抗化を図りました。
- シミュレーションにより、MOSFET構造を最適化
要素実験のデータをもとにデバイス構造のシミュレーションを行い、高耐圧、低抵抗化に適したMOSFET構造を設計しました。今回、素子周囲の高電界部の終端は低濃度p型イオン注入による接合終端構造とし、素子の単位MOSFETセルは千鳥配置としました。
- 世界最高水準の低抵抗化(オン抵抗率 12.9mΩcm
2)を達成
SiC-MOSFETで、パワー半導体素子の主要な性能指数であるオン抵抗率が、同容量クラスのMOSFETでは世界最高水準となる12.9mΩcm2を達成しました。
(耐圧1.2kV、1A級ノーマリオフ型)
- 【今後の展開】
電流容量の増大、長期信頼性確保などさらに改善を行い、応用システムでの評価をすすめて、早期の製品化を目指します。
- 【特許件数】
国内 6件 海外 1件
|