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Project Story 06 アジア・米国間を結ぶ国際通信網を強化し、通信の未来を変えていけ。

山岡 寛和

山岡 寛和

Yamaoka Hirokazu

本社 通信システム事業部

渋谷 麻美子

渋谷 麻美子

Shibuya Mamiko

コミュニケーション・ネットワーク製作所
光通信システム部

日々、国内外でやり取りされているデータ通信のほとんどは、実は光海底ケーブルによってつながっている。2009年に敷設された、アジア7カ国(フィリピン、中国(香港)、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)と米国を結ぶ総延長約20,000kmの光海底ケーブルシステムAAG(Asia America Gateway Cable Network)は、スマートフォンなどの急激な普及による通信需要の急増によって、データ通信容量の増設が求められていた。海底ケーブルを新たに敷設することなく、当初の設計容量を上回る通信容量を実現することができるか。それが当プロジェクトに与えられたミッションだった。どのような経緯を経て、プロジェクトの実施にまで至ったのか。営業担当として、入札の接点を生み出した山岡が語る。
※海底に敷設または埋設された国際通信ネットワーク用の伝送路。

品質を落とすことなく、
最適な価格をいかに提示するか。
営業手腕が問われた。

「まず市場自体の常識を変えたことから、この仕事が生まれました。」と山岡は語りだした。これまで海底ケーブルのプロジェクトは、初期に建設した企業が増設に関しても担うことが常識とされてきた。しかし2008年に三菱電機はアジアの光海底ケーブル増設プロジェクトに参加し、受注。短期間で工事を完遂し、運用開始後も同装置の高品質を維持したことで高い評価を得た。このような三菱電機の海底ケーブル事業で築いてきた実績と、高い技術力が認められ、2011年に当プロジェクトへの入札参加の声がかかった。競争入札のクライアントは、世界中の名だたる企業8社だった。
「クライアントは、8カ国8社の通信事業者で構成する企業連合(コンソーシアム)。社名を見ても、その国を代表する企業ばかり。とにかく品質のよいシステムを構築することを一番の命題としてオーダーされました。」(山岡)
必要なシステムの概要や構成要件、調達条件が記述されている提案依頼書を受領してから、入札までの期間およそ一ヶ月。求められる高い技術力をいかにアピールするのか。緻密な戦略を立てることを山岡は求められた。
「海底ケーブルの場合の特殊な入札方法なのですが、最終決定までにいくつかステージが分かれています。選考が進み企業が絞られてくるとBAFO(Best And Final Offer)と呼ばれる価格などの提案内容の見直しを求められるのです。その時に価格を下げる余地がなくては戦えない。とはいえ、最初の価格が高ければ、そのステージに残ることはできない。価格を下げたとしても、品質は落とさずに納品することが可能な価格の最適解をいかに導き出すか。営業の手腕の見せ所です。そのためにクライアントとなる企業全社を巡回し、ニーズをくまなく聞き出し、課題を洗いだしてから提案に臨みました。」(山岡)


数千キロに及ぶ距離でも
安定的な通信を可能とする
高い技術力への信頼。

今回の入札において最も求められていたのは、大容量の通信を安定的に実現できる高い技術力。入社以来、海底ケーブル部門に身を置き、開発設計を担当してきている渋谷はその課題にどう応えたのか。
「今回の課題は海底に敷かれたケーブルを変更することなく、新技術を適用した陸上装置を導入し、当初の設計容量を上回るようにすること。当時、10GbpsだったAAGの容量を4倍の40Gbpsにする技術を提案しました。しかし、ただ容量増設するだけの提案では、他社との明確な差別化を図ることはできないかもしれない。そこでFEC(Forward Error Correction)と呼ばれる、長距離伝送時に発生する信号の変換エラーを修正する技術を強化し、同時にコヒーレントと呼ばれる均一にそろった光の位相に信号を乗せて伝送する技術を適用し、通信の精度を落とさずに大容量長距離伝送を可能にする技術を提案しました。」(渋谷)
米国は本土だけではなく、ハワイ州やグアムからも成り立っている。そのため国内通信とはいえ、数千キロにも及ぶ距離を結ぶことが要求される。その距離であっても精度を落とすことなく通信できる点が評価されて、最終選考にまで残る。2011年6月、最終選考の地はハワイだった。その胸に熱い想いを秘めながら、山岡は現地へ向かった。
「最終候補に残っていたのは3社でした。これまで万全の状態での提案を行った自信があったため、いい位置につけているはずとの確信を持ってはいたのですが、最終選考における質疑応答に出席しても一向に状況がつかめなかったです。でも考えてみると、世界の通信網を新しくする大プロジェクト。クライアントは慎重になり、最後の最後まで議論を重ねていたそうです。そんな状況を歯がゆくも感じながら、ホテルの部屋でドキドキしながら待つ日々を過ごしていました。」(山岡)
どのような審議がなされているのか状況がつかめないまま数日が経過し、突然「三菱電機に決めた」と連絡が入る。
「あの瞬間の嬉しさは今でも忘れられませんね。クライアントの想いにどうにか応えようとチームで臨み、勝ち取った勝利であること。そしてようやく製品を世の中に出すことができるといった感情が溢れてきました。」(山岡)
「プロジェクトを担当することが決まり、必ずプロジェクトを完遂させたい、させなければいけないという強い想いが湧いてきました。私の担当する設計チームはもちろん、研究所も含めて一丸となり、新しい技術を世の中に送り出していこう。そんな決意をしました。」(渋谷)

受注後、プロジェクトは一気に稼働していく。AAGプロジェクトは8カ国に渡っているため、装置そのものの大きさや伝送性能自体は変わらなくても、装置の基板を動かすソフトはその国の運用方法に合わせて、オーダーメイドで製作していかなければならない。加えて現地では予期せぬトラブルが発生し、チームがより一丸となってプロジェクトに臨むことが不可欠となった。

海外で起こる予期せぬトラブル。
それを乗り越えたチームの力。

「海底ケーブルが他のビジネスと違うところは、作って納品して終わりではないところ。自分たちで据え付けて、試験を実施し、最終的にきちんと稼働するかを確かめて、初めてお客様に所有権が移るのです。当然その過程では、予期せぬトラブルも起こります。今回もその例に漏れず、トラブル解決に苦労しました。」(山岡)
例えばすでに敷かれている光海底ケーブルを、漁船が引っ掛けて切ってしまい、通信の試験をしようとしても回線が切れているので、試験を行うことができない、などといった問題が過去に起こったという事例もある。他にも、同プロジェクトの場合では2011年にタイで起こった大洪水の影響で、工業地帯が壊滅的な被害を受けたことにより、伝送装置を組み立てるための部品が納品されず、納期に影響が出るかもしれないといった事態に陥った。山岡は現地の通信事業者を相手に、トラブル対応のためにかさんでしまったコストをどちらが負担するのかといった点や納期における交渉を懸命に続けた。当初の計画通りに進めるのは不可能となった状況において、交渉の肝となるのは納期を守るための新たな提案。そこで渋谷たち製作チームが練り直した提案とはどのようなものだったのだろうか。
「洪水が起こったことによって、本当にいろんな部品に影響があり、焦ったことを記憶しています。しかし、あたふたしている訳にはいかない。間に合わせるにはどうしたらいいんだろうと、設計担当だけではなく、品質管理担当や製造現場全員で議論を重ねました。現地に届かないことが判明した部品には、新たな代替品で対応する方法を考察し、システムを構築していきました。交通インフラも壊滅的な状況の中、確実に部品を手にいれるために、関係各所と連携をとりました。そのような過程を経て、当初から予定していた出荷時期に何とか間に合わせることができました。」(渋谷)
営業、製作所、研究所、それぞれの部門がそれぞれの知見を持ち寄り、議論を重ね、ともに力を合わせながら、一つのゴールに向かう。関係者の力を結集させトラブルを乗り切り、最終的にすべての国に納品を達成した。クライアントからの評価も前よりも使いやすくなったと上々の評価を得ている。これは何とか課題を解決しようとチームで取り組み、総合力を持ってして成し遂げた結果である。太平洋における40Gbps波長増設という「世界初」の偉業を達成したチームの顔は、達成感に満ち溢れていた。


世界を見渡すと、
私たちができることは
まだまだある。

これからの時代ますます世界の通信は高速化・大容量化することになり、世界中の通信インフラを整備することが求められるだろう。プロジェクトを無事に終えて、より高い目標に向かって前進している二人に、これからのことを聞いてみた。
「私は去年1年間、研修でインドにいました。途上国に行くと、通信環境の違いに驚かされます。日本の携帯電話サービスは4Gが当たり前になっていますが、インドは3Gさえも普及していない地域がいくらでもあります。これはアフリカや南米などの地域でも同様で、世界規模で起こっている事象です。そういった通信格差を無くしていくことが私の目標です。」(山岡)
「当時は、40Gbpsの増設を可能とする技術が世界最先端だったのですが、数年経った現在では100Gbpsの伝送速度が可能となりました。これからは400Gbps、1Tbpsといったようなさらに大容量の通信を可能とする技術が生まれてくるでしょう。そんな最先端の技術を、いかに製品に落とし込めるかが私の仕事です。そのチャレンジがあってこそ、製品として形になり、世の中に送り出すことができるので、大変ではありますが非常にやりがいを持って仕事に臨んでいます。普段の生活でインターネットを使っていて、『お、速くなったな』と劇的に感じることは少ないかもしれませんが、縁の下の力持ちとして、社会を支えていきたいと思います。」(渋谷)


世界課題でもある通信インフラの整備。
多くの困難を乗り越えていくことで、
よりよい通信社会が訪れるだろう。
彼らの挑戦はまだまだ続く。

「通信格差をなくし、
より便利な通信社会を実現する。」

山岡 寛和

「世界の通信システムを支える
縁の下の力持ちでありたい。」

渋谷 麻美子

Project Outline

世界的なデータ通信需要に対応すべく、アジア7カ国と米国間の国際通信を支える光海底ケーブルシステム増設プロジェクトが発足。当初想定することもできなかったトラブルをもチームの総合力で乗り越えて、プロジェクトの成功に至った軌跡を追った。