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Interview Vol.03 医学博士・脳神経外科医 林 成之氏が語る、ビジネス脳・勝負脳 —自分流の勝負脳を鍛える—Interview Vol.03 医学博士・脳神経外科医 林 成之氏が語る、ビジネス脳・勝負脳 —自分流の勝負脳を鍛える—

01:必ず成功する「勝負脳」の法則

ここぞという場面で成功するか失敗するかは「脳」次第です。脳の機能を理解すれば、仕事の取り組み方、人間関係、リーダーシップの取り方も見えてきます。今回は林成之氏による"脳科学"という視点からのビジネス提言を4回にわたってご紹介します。

目的の達成には法則がある

スポーツでも仕事でも、目的の達成には「脳の機能」が深く関与しています。人間の能力には「達成の法則」というものがあり、この法則は北京オリンピックで日本代表水泳チームの金メダル獲得にも効果を発揮しました。

人間の才能は坂道のボールのようなもので、何もしなければ向上せずに坂を下っていくばかりですが、頑張って力をつければ坂道を登っていけます。ただ、頑張っても最後まで達成できない人と、やれば必ず達成する人がいます。その違いは何で決まるかというと、「脳」の働きで決まるのです。

たとえば、「金メダルをとります」と言っても、それだけでは何をどうやって金メダルをとるのかが不明確なため、脳は何をして良いのか分からず、具体的な達成へのアクションが起こせません。そればかりか、「金メダルをとれないかもしれない」という否定的な考えが生まれる可能性もあります。そうなると人間には自分を守りたいという自己保存の本能が働くため、成功しなかった場合のいい訳を考えだしたりするので、達成へ集中できず、脳は十分に能力を発揮できなくなります。

つまり「目的」を達成するには、そのために何をするのか、具体的な「目標」を決めることが必要です。目標をはっきりと決め、それに集中することで、脳はすごい力を発揮します。
特に大事なのは「達成の仕方」です。ただ単に目標を達成する、しないではなく、どういう達成の仕方をするかということに力を注がなければいけません。例えばスポーツでも勝ち負けではなく、「勝ち方」にこそ勝負を挑むのです。勝ち方に勝負をかけている人は、その勝ち方に納得いかなければ、勝っても満足しません。自分が勝ったとも思っていません。だから、次こそ納得のいく勝ち方をしようと、さらに大きな目標を達成していけます。

私はオリンピックの選手たちに対しても、「勝ち負けではなくて、勝ち方に勝負をかけるんだ。みんなが感動するような勝ち方をするんだ」と言ってきました。


目標に向かって全力投球で一気に駆け上がる

目的を達成する勝負脳の法則

仕事でもスポーツでも、「頑張ります」はダメです。ただ「頑張ります」とだけ言う人は、何を頑張るのか具体的な目標がないわけですから、できなくても平気でいます。

大切なのは、具体的な目標を決めたら、「損得抜きに全力投球する」ことです。人間は賢いですから、必ず損得勘定をしてしまいます。しかし、損得を考えると、自己保存の本能が働き、少しでも楽な方法、あるいは失敗しない方法をとろうと様子を見ながら動くので、自分の脳をフル回転できなくなります。ですから、目標を達成しようとする時は、損得抜きで全力投球しなければなりません。そうすれば人間の脳は大きな力を発揮するものなのです。

もうひとつ大切なのは、チャレンジするときは一歩一歩ではなく、コツコツでもなく、「一気にやる」ことです。人間は時間をかけてコツコツと取り組んでいると、「難しいかな」「失敗するんじゃないかな」などと否定的なことを考えてしまい、その迷いが達成を邪魔してしまいます。自分はここまでやると思ったら一気にやる、それが突破力になるのです。

北京オリンピックに向けて日本代表水泳チームは選考会後、アメリカ合宿をしたとき当初スポーツにおける常として、疲れた体を休ませる為に一時ペースダウンし、徐々に北京に向かって高めてゆく戦略を立てていました。しかし、人間の脳は上り調子のときに休みを入れてしまうと、元の状態に戻すのが大変です。たとえば仕事でも、頑張って調子よく仕事をこなすリズムが出来てきたところに1週間も休暇を取ったら、元の調子を取り戻すのに数カ月かかるのではないでしょうか。

ですから私は目標を決めたのだから、達成するまで一気に全力投球するようアドバイスし、練習中は目標達成の邪魔になる、『できない』『嫌だ』『無理だ』などの「否定語」を使わないように指導しました。


達成する脳・しない脳

医学博士・脳神経外科医 林 成之氏

人間の脳には「達成する脳」と「達成しない脳」があります。その違いは自己報酬神経群の機能によって決まります。この脳にとっての自己報酬、ご褒美は何かというと、「自分で考えたことを、自分でやり遂げた達成感」といえるでしょう。上司からあれをしろ、これをしろと言われてやったことには達成感がないので脳へのご褒美になりません。例えば上司はヒントだけ与え、自分の考えで行動・実行すると、自分で成し遂げた達成感が得られ、その達成感が快感となります。次からはその達成感を得るために自分から新しい発想をするようになるのです。

マニュアルに従って仕事をこなしていくのは効率的な方法かもしれませんが、他の人が決めたマニュアルに縛りつけると、自分から考える機能が低下してくるので、新しい発想を生み出す能力は落ちてきます。それを防ぐには、マニュアルにはこう書かれているけど自分ならこうする、と自分から発想する習慣をつけていくことです。

このような自己報酬神経群の達成する力は、日頃の「習慣」によって養われます。ものごとを「達成するための習慣」とは、次の4つです。

  • ① 自分から考え、行動・実行する
  • ② 目的より具体的な目標に集中する
  • ③ できた・できないではなく、達成の仕方にこだわる
  • ④ 期限付きで最後までやる

逆に「脳に悪い習慣」とは、次の4つです。

  • ① 言われないとしない
  • ② だいたいできた・まあ、いいか
  • ③ 素直に自分の失敗・弱点をいえない
  • ④ 様子を見ながらコツコツやる

何もしないよりはコツコツやる方がましですが、目標達成の壁を破るには、以下4つが重要です。

  • ① 自分が決めたことを自分の力でやる
  • ② 最後まで気を抜かない
  • ③ 達成の仕方に勝負をかける
  • ④ 期限・条件付きで一気にかけ上る

次回から、壁を破り、常に目標を達成する「勝負脳」を作り上げていくには、脳の働きに結びつく"仕組み"があるということをご説明していきます。

 

プロフィール

林 成之(はやし なりゆき)

医学博士・脳神経外科医・日本大学大学院 総合科学研究科教授

1993年、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター部長に就任。日本大学医学部教授、マイアミ大学脳神経外科生涯臨床教授を経て、2006年より日本大学大学院総合科学研究科教授。医療の最前線で数々の治療法を開発し、なかでも「脳低温療法」は多くの脳死寸前の患者の生命を救い、社会復帰まで可能にした。脳卒中で倒れたサッカー日本代表チームのオシム前監督の治療にもこの脳低温療法が用いられ、その世界的な評価から『ゴッドハンドを持つ男』の異名を持つ。また、北京オリンピックでは日本代表水泳チームの脳科学的戦略指導に参加し、北島康介選手の金メダル獲得に貢献した。著書に「勝負脳の鍛え方」(講談社)、「ビジネス〈勝負脳〉」(KKベストセラーズ)「脳に悪い7つの習慣」(幻冬舍)ほか多数。

 

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