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三菱電機グループ導入事例

IoTによる革新がもたらす、省エネと生産性の向上
~受配電システム製作所の新たな挑戦~

三菱電機受配電システム製作所 導入事例

三菱電機受配電システム製作所 導入事例

当社受配電システム製作所(香川県丸亀市)の新棟「真空バルブ・遮断器工場」が2018年8月、本格生産を開始した。この新工場は「e-F@ctory※」モデル工場として2025年までに売上高120億円以上をめざしている。
そのためには生産能力や生産性を従来工場に比して大幅に引き上げなければならない。この挑戦を支えているのが、IoTを活用した生産革新と、生産性や品質の向上にも寄与するPDCA省エネ改善サイクルの構築である。ここでは、新工場での施策を中心に、同製作所の様々な取り組みについて紹介したい。

e-F@ctoryのロゴ

FA技術とIT技術を活用し、開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減する当社のFA統合ソリューション

新工場では生産性30%アップと工期の半減に挑戦

受配電システム製作所の従来の工場では、真空バルブ(VST)と遮断器(VCB)を別々に生産し、生産管理も別に行っていた。新工場ではこれを統合化し、遮断器の生産計画に連動して真空バルブの生産計画も変える仕組みとした。その主な効果目標は、従来比①生産能力30%アップ②工期半減である。
これによって、エネルギーの増加抑制を狙っている。

VST・VCB一貫生産工場として生まれた新棟(E棟)

新工場の概要
【建築規模】
地上2階建、高さ約13m、南北約118m、東西約110m
建築面積約13,000m2(延床面積約14,200m2
【生産品目】
真空バルブ(VST)
遮断器(真空遮断器VCB、気中遮断器ACB、ガス遮断器GCB)
真空コンタクタ(VMC)
【効果目標】(既存工場に対して)
生産能力:約30%アップ
生産性:約30%向上
工期短縮:約50%短縮(量産VCB)
品質改善:直行率3ポイントアップ

1. IoTの「9領域」とe-F@ctory

新工場のウッドデッキ壁面に掲げられたPDCAサイクルの説明。
エネルギー管理システム(SA1-PD)と「四つのロス分析」が骨子となっている。

従来比①生産能力30%アップと②工期半減を目標に掲げる新工場。「環境先進工場」をめざすとともに、e-F@ctoryモデル工場として、「人とモノと設備の情報を一元化し、IoTで見える化し、さらにそれを省エネや生産効率の向上に活かす」ことが期待されている。

それを実現するためには、「生産現場にある数多くの情報」を、エッジ領域をハブとして、最上位のITシステムとつなぐ必要があった。これにより、現場やユーティリティの情報がきちんと活かされ、工場全体のシステム効率も高まることになる。省エネの見地からは、エネルギー管理システムと「四つのロス分析」が骨子となるPDCAサイクルが重要だが、ここではまず、新工場のIoT活用の全体像を俯瞰してみたい。

環境先進工場を目指す5つの柱
工場管理の9領域と、それぞれのIoT化の推進

新工場全体のIoT化は、生産管理・品質管理・設備管理からお客様のおもてなしまで、「工場管理」の視点から9領域に分け、それぞれにIoTをどう活用するか、まずはここからスタートした。実際に何を行ったかをまとめたのが下図である。見える化の対象を洗い出し、ねらいを定め改革する。その積み重ねがe-F@ctoryに結実するといえよう。

工場管理の視点から見た工場全体のIoT化
ムダ・ロスを顕在化して生産性向上、品質向上、納期短縮を実現(改善サイクルの高速化による生産革新の実現を追求)

2. 設備インフラ系IoTでロス分析

IoTを9領域で活用するというのは同製作所全体での取り組みだが、中でも新工場はe-F@ctoryのモデル工場としてIoTを全面的に活用している。それらの多くは、設備インフラ系と生産系(生産現場系)に大別できる。ここではまず、設備インフラ系でのIoT活用の全体像と、ロス分析から省エネを実現した代表的な具体例を紹介する。

1)3,000点の計測が可能なシステム構成

同製作所では、SA1-Ⅲ(三菱電機システムサービス製 工場向け監視・制御システム)を基に共同開発したSA1-PDを用いてエネルギー管理システムを新規構築。初期のEM※システムは計測点数が180点だったが、本システムでは3,000点の計測が可能になった。電気のみならず蒸気、エアー、水、環境情報等の計測追加や、空調・照明の管理を集約化したこと、さらにウェブ上で所員の誰もが閲覧できることも特筆できる。

EM: Energy Minimum
エネルギー管理システムの構成

計測項目:電気、エアー、蒸気、灯油、温度、湿度、CO2濃度、照度、差圧、ダスト量、ガス濃度、日射量、設備状態信号等

2)「エネルギーフロー図」から改善の優先順位を探る

省エネ改善を図る際に、対策の優先順位を決めることは投資対効果を上げるうえでも欠かせない。新工場の改善はこの「エネルギーフロー図」の作成から始まった。これは、工場内のエネルギーの流れをt-CO2/日ベースで見える化したものである。エネルギー多量消費設備がどれで、どこから改善するべきかをこれで探ることができる。

E棟 エネルギーフロー図

3)設備の運転状態の見える化と省エネ制御の導入

新工場においてはさまざまな設備がIoTの活用によって「SA1-PD」とつながり、計測・制御の対象となっている。その代表的な例として、工場内の空調・換気設備が挙げられる。真空バルブ/遮断器どちらのエリアも、運用ルールに則って運転がなされ、その運転状態は見える化によって正常・異常がすぐにわかる。こうして適正な使用が維持されているのはもちろん、「外気取込ファンのエンタルピー制御」など、IoTによる制御を組むことで空調負荷を軽減している。

E棟遮断器(VCB)エリア

空調・換気設備のモニタリングによる運転の合理化
真空バルブ(VST)エリア
室圧管理を部屋ごとに行い、自動でコントロール
めっき場やクリーンルームは外気差圧を監視
遮断器(VCB)エリア
エンタルピー制御を導入。室内と屋外のエンタルピー(熱含量)を比較し、外気取込量をコントロール
  • 室内のほうがエンタルピー小の場合は冷房運転を行う
  • 室内のほうがエンタルピー大の場合は外気導入(ファン起動)で冷房負荷を減らす
  • 基にするデータは温湿度で、とくに中間期の判断に役立つ

IoTによる外気取込ファンのエンタルピー制御導入

4)JITによる固定エネルギーの変動エネルギー化

~一定で動くものは省エネの対象になる~

新工場は2018年2月に竣工した。それから8月の本格稼働までの半年間、さまざまな準備や試験・試運転を行うなかで、省エネについてはIoTを活用したエネルギー管理システム「SA1-PD」を運用し、「JITの考え方を徹底」して結果を出すことに成功した。

そこであらためて認識されたのは「一定で動いているものは、常に省エネの対象になる」ということ。圧縮機であろうとファンであろうと、一定速でロスがあるならば、インバータ制御や台数制御で「必要な時に必要な所で必要な量だけ供給する」ことで省エネは実現できる。以下に示すPID制御※による省エネはその好例といえよう。

Proportional(比例)Integral(積分)Differential(微分)の組み合わせで制御する自動制御方式。
一つの目標値を設定すると、現在の値をセンサで読み取り、目標値に近づけるように操作量を自動調整する。
Case 1: クリーンルームの清浄度PID制御
改善前
除塵用循環ファンを全開運転
改善後
センサ及び制御システム(シーケンサ・インバータ)を設置。
ダスト量に応じて循環量を自動でインバータ制御。(ダスト量が少ないときは循環量を抑制)

品質管理と省エネを両立!

CO2削減効果

65%減

(25t-CO2減/年)

Case 2: 冷却水循環量のPID制御
改善前
一次ポンプを全開運転
改善後
センサ(温度計)及び制御システム(シーケンサ・インバータ)を設置。
電気炉冷却用クーリングタワーの冷却水循環量をコントロール。
夜間・中間期~冬期などの低負荷時期の過剰冷却運転を抑制し
過剰運転を避けることで、ポンプ・ファンの消費電力を抑制した。
CO2削減効果

40%減

(73.9t-CO2減/年)

5)IoTを活用したエネルギー管理システムでロス分析の精度向上

IoTを活用したエネルギー管理システムを運用し、JITの考え方を徹底して結果を出すことに成功した新工場。エネルギーのJITを実施する中で以下の「四つのロス」の削減に尽力している。

待機ロス:
設備待機によって生じるロス。待機時間の短縮や待機中の停止が改善のカギ。
漏洩ロス:
エアーや蒸気などで起こるモレによるロス。供給量と使用量の差分で判断し、閾値を設けてアラームで担当者に通知している。
劣化ロス:
機器劣化に伴って稼働時間が増え、エネルギー消費が増大するロス。
効率ロス:
インプットに比べてアウトプットが少ない場合に生じているロス。
動力源の複雑な流れをリアルタイムで閲覧できるようになりました。

生産システム部 製造管理課
寶城 崇(ほうじょう たかし)

新工場のエネルギー管理システムであるSA1-PDは、いわばMELSASの廉価版で、局所変電所の監視制御に加えてユーティリティ・生産設備のエネルギーロス状況を見える化することに優れています。設定やモニタ画面はユーザー側で変更しやすく、ユーティリティ設備から供給する動力源の複雑な流れや状況をリアルタイムで閲覧できるシステムを容易に構築することができました。

新工場で組んだシステムは様々な工場で省エネを図る際の好例になるのではないでしょうか。

3. IoTを生産現場の革新に活かす

設備インフラ系でのIoT活用と同様に、生産系(生産現場系)でもIoTを活用した現場の革新は行われている。生産系の場合は、作業効率の改善や品質アップを行うことが主目的であるが、これがエネルギーの増加抑制に大きく貢献している。生産系におけるIoT活用の具体的内容は、次の5項目が代表的なものとして挙げられる。注目点は、生産スケジューラの連携活用である。これにより、生産現場の課題だった「頭の中にしかなかった考え方のルール化」「個々の現場情報(人・モノ・設備)と生産管理システムのつながり」が解決した。

生産系におけるIoT活用の具体的内容
  1. 工場全体の見える化
  2. 生産スケジューラ活用による計画業務の効率化
  3. 在庫の見える化
  4. タブレットの活用、ナビ丸・Q丸など作業支援ツールの活用
  5. サプライヤ連携の強化
IoTを活用したe-F@ctoryコンセプトの施策実施 ①
ヒューマンエラーを抑制する作業支援システムの導入

「ヒューマンエラーをいかに抑えるか」は、生産現場の課題の一つである。そこで、新工場では新たに「作業支援システム」をつくり、導入した。従来型の作業支援システムと比べて大きく異なるのは、IoTを徹底活用している点。以下の二つがわかりやすい代表例である。

  1. ネジ締めはトルクレンチの締め付け回数を自動カウントし、タブレットでナビ丸システムと連携(規定の回数を締めないと次の工程に進めないように組まれている。)
  2. 部材キッティング時はウェラブル端末で誤収集を防止。組立作業開始時は、搬送パレット埋め込みRFIDで製番選択を自動化。

IoT対応トルクレンチ。セパレート型のRFIDリーダライタは作業台の下に設置され、情報をタブレットに送る。

「力覚センサやビジョンセンサをもつロボット」の導入による生産能力向上も、新工場の特長。

IoTを活用したe-F@ctoryコンセプトの施策実施 ②
人・モノ・設備の情報を繋ぎ、
工場全体をIoT化することが課題でした。

生産システム部 情報システム課長
中島 高裕

e-F@ctoryは、自動化設備の工場をイメージされる場合が多いですが、当製作所の中では組立作業の多くが人手で行われています。そこで、e-F@ctoryを導入するにあたっては、「人」「モノ」「設備」の情報を繋ぎ、工場全体をIoT化することが課題になりました。これを解決できたのは「生産スケジューラ連携」と「タブレット活用」の力が大きいといえます。

スケジューラとの連携で生産計画と現場情報を連動させることができました。また、自動化設備ならロボットの仕事はシーケンサでチェックできますが、生産を人手で行っている場合は人の作業をチェックしないといけないので、タブレットの活用は有用でした。

4. 自然エネルギーと高効率設備

新工場の建設によって、ユーティリティ設備など固定エネルギーの増加は不可避となったため、さまざまな省エネ対策を講じることで固定エネルギーの削減と変動エネルギーへのシフトを実施した。これにより、従来の建物仕様で設備導入する場合に比べ、280t-CO2/年のCO2排出量低減を実現。新工場は「自然との共生」もテーマであり、パッシブな手法を建築に採用したほか、ビオトープを整備・維持するなど、意欲的に環境共生を図っている。

新工場における省エネ型建築・設備の導入
(1)省エネ建材の採用
  • 屋根は二重折半、外壁はサンドイッチパネル(内側に断熱材)
  • 窓はLow-Eペアガラス

新工場2階に設けた光庭

(2)空調の最適制御と負荷抑制
  • 事務所エリアには温度調整と湿度調整を分離制御できる当社ビル用マルチエアコン「シティマルチ高顕熱タイプ」を採用し、空調負荷を削減
  • 天井裏からの放射空調(空気式)として、温度ムラやドラフト感を抑制
  • 生産エリアでの過剰な換気の抑制(CO2濃度センサの活用、クリーンルームのダスト量監視制御など)
  • ウッドデッキで反射熱を抑制
  • 緑化ルーバーで事務所内を遮光・遮熱
(3)照明の省エネ
  • 人の有無を高感度で検知する画像センサを用いて自動点灯
  • 2,000m2の事務所2階中央に光庭を設置し採光
(4)太陽光発電(PV)の活用
  • 200kWクラスの当社製PVを導入。二重折半屋根にパネルを載せることで遮熱効果も得る

新工場屋上の太陽光発電パネル。今後2年間で更に400kWを増設し、事業所内全体ではメガソーラに。

(5)直流配電ネットワークの導入

電力損失(AC-DCの変換ロス)を低減する直流配電ネットワーク「D-SMiree」を三菱電機の工場として初めて導入。DC380Vで供給し、照明とサイネージ、パーソナルファンの制御に使用。

エネルギー源であるPVと蓄電池、負荷側をシステム的に組み合わせ、直流配電でコントロール。直流配電は流れが複雑になるが、SA1-PDでリアルタイムに電気の流れを監視できるようにしている。直流配電は配線ケーブルの細径化や長距離化が可能で、設備コストを抑制できることも魅力。普及のカギは負荷側機器の拡大が握っている。

新エネルギー管理システムによって
従来までのEMシステムを更に進化させました。

生産システム部 製造管理課長
小林 衛彦

当製作所における省エネ活動は、原単位悪化箇所を調べて原因を追求し、現場の改革につなげるという基本姿勢は変わりません。ただ、構築時のEMシステムは「生産数量当たりの原単位を見える化する」ことからスタートしたのに対し、現在では新工場の建設に合わせて「設備劣化など、よりきめ細かく見るための4機能」を追加し、進化しました。

今後はさらに省エネと生産設備・プロセスの改善を加速化していきます。そのために重要なのは、①省エネと「安心・安全・快適性」の両立 ②ISO14001への展開 ③生産品質と省エネとのバランス ④生産プロセス・設備をよく知る工作技術スタッフとの連携、だと考えています。

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