ディスカバリーキッズ科学実験館 ~コズミックカレッジ2015~ 東京会場レポート

コズミックカレッジとは

コズミックカレッジはディスカバリーチャンネルの迫力ある映像とJAXAならではの本物の体験プログラムで、「宇宙のふしぎ」を楽しく感じ、理解してもらおうという体験型サイエンス教室。2009年から開始され全国で約30,000名の親子が参加しています。

三菱電機は多くの人工衛星や大望遠鏡を作ってきた会社です。ガリレオ・ガリレイが初めて宇宙に望遠鏡を向けてから400年以上、望遠鏡はどんどん大きく進化し、宇宙の果て近くの天体の光をとらえるようになりました。大きな望遠鏡をぴったりと目的の天体に向けるのは、とても難しいことです。科学の発展は高度な技術が支えているのです。そんな望遠鏡のことを知ってもらい、宇宙を身近に感じてもらおうと取り組んでいます。

東京会場レポート 2015.09.20

『もう一つの地球』にたどり着くための6つのミッション

9月20日、コズミックカレッジ2015東京会場に集まった約500組の親子は元気いっぱい、やる気満々です。

毎年、ホットな話題をテーマにするコズミックカレッジ。2015年のテーマは「もうひとつの地球へ、大冒険!」です。最近、太陽系の外にたくさんの地球型惑星が発見されています。銀河系には約2000億個の星が集まっていると言われ、同じような銀河が宇宙には1千個以上あると考えられています。その中に地球のように文明をもつ星が、きっと見つかるはずです。近い将来、もう一つの地球を実際に探査する時代が訪れるでしょう。

では、地球を出発してはるか彼方にある「もう一つの地球」に無事にたどり着くためには、どうしたらいいのでしょうか?その訓練を体験できるのが「コズミックカレッジ2015」です。9月20日、東京会場の早稲田大学には約500名の親子が集まりました。地球を出発し、太陽系を超え、銀河を通過する壮大な旅を6段階のステージに分け、様々なミッション(実験や課題)が与えられます。全てのミッションをクリアし、スペーストラベラーになることができるのでしょうか? 

自分の手で「エネルギー」や「熱」を作り出す

手回し発電機を回して、自分の手で電気エネルギーを作り出し、豆電球を光らせます。

今年のコズミックカレッジは、自分の手を動かして、日頃漠然と感じていることについて体感してもらう実験がいっぱいです。たとえば「エネルギー」。遠い宇宙へ行くには莫大なエネルギーが必要です。身近なエネルギーと言えば電気ですが、電気は大きな発電所で作るものと思っている人も多いでしょう。そこで最初のミッションでは自分で電気を作ります。

手回し発電機を回すと、豆電球が光ります。早く回すと豆電球は明るく、ゆっくり回すと少し暗く光ります。どんな仕組みでしょう?手回し発電機をあけて、講師の先生が分解していくと、中からコイルと磁石が出てきました。磁石とコイルが近づいたり遠ざかったりすることで電流が流れるのです(詳しい解説は、コズミックカレッジのウェブサイトに載っているので、帰ってからじっくり学ぶことができます)。さらに、みんなが作った電気の力で、水から酸素と水素を作り、ロケットを発射させることに。日本のロケットH-IIA、H-IIBも水素と酸素を燃料に使っていると聞いて、子供たちは必死です。カウントダウンの後、勢いよく飛び出すロケットに大歓声があがります。

みんなで協力して水から酸素と水素を作り、水ロケットを発射させることにも成功しました!

熱を作る実験で、発砲スチールを好きな形にカットしていくお友達。どんな形にしようかな?

そして「熱を作る」ミッションも。銀河系を超えて遠くの宇宙へ行くためにNASAはワープ航法を研究しています。時空を縮めたり伸ばしたりするワープ航法には莫大なエネルギーが必要で、電磁波や熱について知る必要があります。そこでニクロム線に電気を通して熱を作ります。熱くなったニクロム線に発砲スチロールを近づけると、溶けていきます。発泡スチロールを溶かして思い思いの形にする子供たちは楽しそう!ニクロム線に電気が流れる理由は「電磁誘導」にありますが、同じ仕組みは家庭にあるIHクッキングヒーターにも使われています。そこで簡易版IHクッキングヒーターと、手のひらサイズの小さなフライパンで小学生のお友達が、卵焼きにチャレンジ。みごとできあがった時はみんなびっくりです。

簡易版IHクッキングヒーターで料理中。何をしているのでしょう?

手元を拡大すると、小さな小さなフライパンで卵焼きを作っていました!

最先端の望遠鏡について学ぼう

望遠鏡についてのクイズに挑戦中。クイズを解くうちに望遠鏡のことに興味しんしん。

さて、宇宙で迷子にならないためには、宇宙望遠鏡で最新の宇宙データを入手する必要があります。そこで望遠鏡についてしっかり学ぶミッションもありました。三菱電機の望遠鏡のスペシャリストが2種類の望遠鏡について説明します。人間の目に見える光(可視光)を観測する光学望遠鏡と、目に見えない電波を観測する電波望遠鏡です。宇宙には可視光だけでなく電波を発している物質や元素がたくさんあるそうです。たとえば銀河の中心からは可視光は届きませんが電波なら観測できるというのです。光学望遠鏡ではハワイにある「すばる望遠鏡」や日本で一番大きな光学望遠鏡「なゆた」、電波望遠鏡では南米チリにある「ALMA(アルマ)望遠鏡」や野辺山天文台が紹介されました。

説明はクイズを中心に進められていきます。一番盛り上がったクイズは「ALMA望遠鏡で東京から大阪の、どのくらいの大きさのものを見分けることができる?」という問題。アルマは視力6000~13000とも言われます。驚異的な視力で東京から大阪にある1円玉が見分けられるのです!

アルマ望遠鏡について熱く語る、三菱電機アルマ望遠鏡プロジェクトマネージャ大島丈治さん。

アルマ望遠鏡の設計から製造、標高5000mの場所に設置した三菱電機アルマ望遠鏡プロジェクトマネージャ大島丈治さんが、ビデオ映像で参加者に語りかけます。「アルマは66台のパラボラアンテナを組み合わせて、一つの目のようにします。その大きさは東京の山の手線内ほどもあるのに、表面は髪の毛一本ほどもひずまないようにしています」「アルマを設置したのは富士山より高い場所で、地上と比べて空気は半分、日差しや風は強く、アンテナがひずむ条件がたくさんあります。1000人以上が力を合わせて作り上げたのです。天文学者の生き生きした目を見ると『役にたつものを作れて本当によかった』と思います」。ハイテク望遠鏡を作る技術者の生の声を参加者の皆さんは熱心に聞いています。

日本は世界と協力し2024年に口径30mのTMT望遠鏡を稼働させる予定です。宇宙最初の星、ファーストスターの観測などが期待されています。TMTには地震が起きても耐えられる免震構造が望遠鏡で初めて採用されています。また492枚の鏡を自動で交換するロボットなど、三菱電機のハイテク技術が様々なところに使われ世界から期待されています。

ハワイ島で建設が始まり、2024年に運用開始をめざす口径30mの超大型望遠鏡の映像を熱心に見る参加者の皆さん。

TMT望遠鏡は宇宙の一番星、ファーストスターの観測が期待されています。資料を見ながら想像が膨らみます。

最後はチームワーク!

初めて出会ったお友達とも手をつなぎ、電流を一緒に感じました。チームワークは抜群です!

宇宙飛行に必須のエネルギーや熱について実験から学び、宇宙船の方向を惑星の重力を利用して変える「スイングバイ」についても磁石を使って、実験してみました。また技術だけでなく、心身共に健康でいることも、長い宇宙飛行を続けるためには大事なこと。「宇宙医学」やストレスと「免疫」について学ぶミッションもありました。そして、最後に必要なのがチームワーク。会場で初めて出会ったお友達と手をつなぎ、強力なネオジム磁石から発せられる電流を、みんなで一緒に感じるというミッションも成功させました。すべてのミッションをクリアし、全員がスペーストラベラーに認定されたのです!

参加者の声

今年のコズミックカレッジは実験の数も多く、家族の協力が欠かせませんでした。イベント終了後は、楽しそうに感想を話し合うご家族の姿が印象的でした。「星に興味があったけど、実際に望遠鏡の話を聞けたのがよかった」という女の子はイベント後も熱心に望遠鏡の模型を見ていました。お母さんも宇宙イベント大好きなのだそう。
一家4人で参加されたご家族も。お兄ちゃんは制限時間2分のホワイトジグソーパズルを黒いファイルの上で組み立て見事完成。「いいアイデアだね」と聞くと「そこにあったから」と余裕の表情。弟君は「ニクロム線で発泡スチロールを切るのが面白かった」宇宙人を作ろうとしたそうだ。兄弟を笑顔で見守るお父さん・お母さんは「家族でわいわい楽しかったね」と話して下さった。展示では模型を見ながら、お父さんに人工衛星の解説をする小学生の姿もあり、宇宙の関心を高めつつ、家族のきずなも深まったようでした。

ディスカバリーキッズ科学実験館
~コズミックカレッジ2015~

開催スケジュール

下記会場でのイベントは終了しました。沢山のご来場ありがとうございました。
  • 東京会場 開催日時:2015年9月19日(土)、20日(日)
  • 九州会場 開催日時:2015年9月6日(日)
  • 関西会場 開催日時:2015年8月29日(土)、30日(日)
  • 北海道会場 開催日時:2015年8月9日(日)
  • 名古屋会場 開催日時:2015年7月26日(日)