「検品の 目利きがすぎて 彼氏なし」。昨年末にオプテックス・エフエー(京都市下京区、中島達也社長)が募集した、“モノづくり現場”にまつわる川柳コンテスト。産業界で大きな話題となった部品不足問題や、世界中を沸かせたサッカーワールドカップにまつわる応募作品が多い中、栄えある大賞に選ばれたのは、いっちゃんさんの「我が工場 利休に負けぬ 詫びと錆び」。町工場の悲哀を如実に表現し、審査員をうならせた。
冒頭に記載したモコさんの作品は優秀賞に選ばれた。正しく製品を届けるために日々しっかりと検品を行うが故、人の見る目も厳しいのかもしれない。
検査や検品の仕事は、消費者に安心・安全な製品を届けるために必須である。表示ミスや製品不良を防ぐ外観検査は特に重要だ。2022年3月の「食品表示法」の改正に伴い、加工食品と添加物の栄養成分を表示することが義務化された。表記事項が増加し、より精密な外観検査が求められるようになった。外観検査にはいくつかの手法があるが、人間の目で良否判定を行う「目視検査」が一般的だ。しかし人間の目には限界があり、ヒューマンエラーが起こってしまう。食品の製品回収の約半数が表示ミスによるもので、命に危険を及ぼすアレルゲンに関する不適切表示の事例が全体の2割以上も占める。小さなミスでも命を左右するのだ。
そして人が口にするもので、最も命にかかわるのが医薬品。医薬品は法律によって、各容器に情報を印字しなければならないと定められている。食品や日用品よりも記載内容が多く印字が細かくなりやすい。印字のかすれや誤表記が発生することがあるが、字が細かいため外観検査での見落としが起こり得る。また、個包装の中にほこりなどの異物が混じったり、薬が欠けてしまったりすることがある。一つ一つが細かく、さらに大量生産だとヒューマンエラーの発生率がより高まる。命に直接かかわる医薬品において外観検査ミスは許されないが、一方で細かい過程が多くミスが発生してしまうことにも頷ける。
外観検査のミスを防ぐためにはどうしたらよいか_。“テクノロジーの目”に頼るのが有効だろう。HACARUS(京都市中京区、藤原健真社長)は部品メーカー向けにAI外観検査システムを展開している。1台のカメラで360度の外観を検査し、AIが画像を解析し良品・不良品を判定する。独自の技術により、不良品データを必要とせず、少量の良品データのみでAIを構築することができる。そのため少量多品種の外観検査が可能だ。導入企業には、第一工業製薬やBMWグループなどがある。細かいチェックを要する多業種で、テクノロジーの目が導入され始めている。
人の目で確認し判断をすることは大切である。しかし確実ではない。それは製品の検品・検査も恋人探しも同じなのかもしれない。

