ソニーと本田技研工業。戦後生まれを代表するこの二つの企業には大きな共通点がある。人のやらないことをやる、世界に類のないものをつくるという創業の精神を掲げた点だ。「他社はこうするから、うちも」という発想はない。唯我独尊さが成長の原動力となった。そして、もうひとつの共通点が経営者にパートナーがいたことだ。
ソニーの場合は盛田昭夫と井深大。技術の井深に対して、盛田が営業面あるいは新規開拓を担い、海外市場も切り開いた。ホンダは本田宗一郎と藤沢武夫。本田は技術者として技術開発に明け暮れ、藤沢が経営戦略と財務の屋台骨となった。
興味深いのは一流の技術者同士のソニーの例だ。
盛田は井深との役割分担を明確にし、つくる人と売る人は別と考えた。盛田は造り酒屋の跡取りとして生まれた。酒屋は珍しい商売ではなく、どうやって売るかが大きな問題だった。いいモノをつくっても売れなければビジネスにならない。その重要性を肌身に感じて育った盛田は自分の役割を知っていた。
モノを売るとは、足を使って人の海に飛び込むこと、情報を集めること。技術屋でありながら盛田はビジネスの根幹を理解していた。常に先頭に立ち、摩擦を恐れないスタイルで、ソニーは世界中から注目されるようになった。
盛田と井深。どちらが凄いかではなく、2人がいなかったら、今日のソニーはなかった。ひとりではできなかった。
「井深・盛田のようなコンビは例外的であり、経営はひとりで責任を持つもの」という声もあるだろう。だが、現代の経営環境の変化は速く、大きい。経営者ひとりでは会社を動かせない時代になっている。経営者にとってパートナーや軍師のような黒子の存在がいて、会社も動く。
ひとりの人間の能力には限界がある。同じ目標を見据えたパートナーと組むことで、個人では想像できない化学変化を生みだせる。

