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ネットインフラを支える「UPS」を見に
データセンターの最奥部に行ってきた(後編)

シナジーコラム 「データセンター×UPS」後編シナジーコラム 「データセンター×UPS」後編

前編をお読みでない方は、
まず以下からご覧ください。

「データセンター×UPS」前編

顧客からの大事なデータを預かるデータセンター。何が起きても電力供給を途切れさせないために非常用発電装置、通称“ヒハツ”や無停電電源装置「UPS」を完備し、万が一の事態に備えている。普段は見られないこれらの装置を見学しに、某所にある三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(通称MIND)のデータセンターを訪れた。

INDEX

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  • ネットインフラを支える「UPS」を見にデータセンターの最奥部に行ってきた
  • 要塞のように頑丈なデータセンターの内部へ
  • ジェットエンジン並みの轟音が響く「ヒハツ室」
  • いよいよUPS室へ!
  • 冷気を効率よく循環させてシステムを冷却

ネットインフラを支える「UPS」を見に
データセンターの最奥部に行ってきた

要塞のように頑丈な
データセンターの内部へ

インターネットをスムーズかつ安全に利用するために、今や不可欠の存在であるデータセンター。それを運営する事業者がもっとも恐れるのが、電力供給の断絶だ。
どのような事故や災害が起きても充分な電力が維持できるよう、データセンター事業者は万全の設備を整えている。そのような設備の一つ、無停電電源装置UPS」を見せてもらうために、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社新しいウインドウが開きます(通称MIND)のデータセンターを訪問した。

取材のために向かったのは某所にある巨大な建物。顧客から預かったシステムを守るため、その場所は明らかにされていない。受付で身元を確認された後、施設課長の早野文孝さんにご案内いただき、渡されたIDカードでいくつもの認証ゲートを抜けてデータセンター内部へ向かった。

サーバーやそれを収めるラック、分電・配電装置など重量のある設備を運び込むため、データセンターには天井が高く奥行のある荷物用のエレベーターが取り付けられている。

早野:この建物は見た目通り、とても頑丈な作りになっています。耐震性も高く、震度6強まで対応していて、2011年の東日本大震災のときには多少の揺れは感じましたが、サーバーなどへの被害は一切ありませんでした。

ジェットエンジン並みの
轟音が響く「ヒハツ室」

まず、二重のドアを通って「発電機室」へ。ここには非常用発電装置、通称「ヒハツ」3台が設置されている。停電などが起きて電力会社からの受電が2秒間止まると、3台のヒハツが自動的に起動する。

この巨大な箱のなかに非常用発電装置(ヒハツ)が収められている。
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)クラウドプラットフォーム事業部 データセンターサービス部 施設課長の早野文孝さん。
どの設備もしっかりと鍵がかかる箱で厳重に守られているのが印象的。
これがヒハツの発電機部分。月に一度の定期点検では実際に起動して、いざというときに作動するかなどを確認する。

早野:ヒハツは重油を燃料に、1台あたり3000kVA(キロボルトアンペア)もの電力を生み出します。停電が続いても燃料がある限りはこのヒハツが動き続けて、すべてのシステムに電力を安定供給できます。
このエンジンはジェット機のエンジンとほぼ同じ仕組みで動くので、起動すると轟音が発生します。ですから、この部屋の壁には吸音材が貼ってあるんです。

ヒハツ室内の分電装置(フィーダ盤)。

早野:これはフィーダ盤といって、ブレーカーのお化けのようなものです。この装置がヒハツから6,600ボルトの電気をマシン室のあるフロアに送り込みます。

いよいよUPS室へ!

UPS室への移動中、周囲を見回すとそこかしこに監視カメラが設置されていることに気づいた。セキュリティーにも充分に配慮されていることがわかる。

普段は人気のない発電機室やUPS室にも監視カメラがくまなく配備されている。監視カメラについて詳しくはこちら

IDカードで入室記録を済ませ、UPS室へ。

これが、三菱電機の無停電電源装置[UPS]UPSとは、停電や電圧低下などにより電力会社からの給電が停止した場合、搭載したバッテリーから重要な設備に電力を供給する電源システム。
中央のUPSに取り付けられたインテリジェント大型液晶表示パネルには、運転状態や計測値をわかりやすく表示されている。タッチパネル式で操作が簡単なのも特徴だ。

早野:これが三菱電機製のUPS「MELUPS」です。「MELUPS」はデータセンター業界でも評価が高く、顧客からも厚い信頼を寄せられています。ほかの多くのデータセンターでも「MELUPS」が使われているんですよ。

三菱無停電電源装置MELUPS

UPSの裏側に回り、内部を見せていただいた。

UPS1台あたり120個の蓄電池がついている。蓄電池の寿命は5~7年。
早野文孝さんが話をしている写真

早野:この蓄電池1個で、クルマの大容量のバッテリーの1~1.5台分の容量をもっています。つまり、このUPS1台にクルマ約150台分の蓄電池がついていることになります。その電力がいざというときに、出力されるのです。

三菱電機のUPSは省エネ性能が非常に高く、電力のロスがほとんどありません。データセンターではつねに大量の電力を消費していますから、無駄な電力消費が抑えられるのは評価できるポイントです。

UPSの定期点検は年1回。UPSをはじめ、ヒハツや受変電設備などの電力設備は三菱電機プラントエンジニアリング新しいウインドウが開きます(通称MPEC)、空調機監視カメラなどの保守管理全般を三菱電機ビルテクノサービス新しいウインドウが開きます(通称MELTEC)が担当している。

早野:MIND新しいウインドウが開きますのデータセンターでは設備のほとんどが三菱電機製ですから、機材同士の親和性が高い。さらに、保守管理のほぼすべてMPEC新しいウインドウが開きますMELTEC新しいウインドウが開きますにまとめて依頼できることも利点です。メーカーがバラバラだと、その分多くの業者を入れることになって整備が煩雑化しますから。また、24時間、365日いつでもかけつけてくれるので、何かトラブルがあった際も安心です。

三菱電機のUPSに対して、何か要望は?と尋ねてみた。

早野:そうですね……。よりコンパクトに、より効率よく、より高性能に、といったところでしょうか。コンパクトになればそれだけデータセンターの面積を有効活用できますから。

冷気を効率よく循環させてシステムを冷却

最後に、データセンター内の消費電力の3割を占めるという空調設備を見せていただいた。

サーバー室には左右両側の壁に巨大な空調機が7台ずつ、1室合計14台設置されている。

早野:サーバー室も室温25度以下にコントロールしています。ここでは、空調機から出る冷気を床下に通し、サーバーを収納するラックの底部から直接吹き入れ、上方に逃がしています。サーバーの熱気で温まった空気は天井で集めて、そこから空調機に流し込み、再び冷やして循環させるという仕組みです。

空調機で冷やされた空気は床下のパネルからラックへ。
天井には、温まった空気を吸収するためのメッシュのパネルが取り付けられていた。

データセンターの奥で、18年以上にわたって健気に動き続けるUPS。出番がないことが最善とされ、実働はないままに月に一度だけ轟音を響かせるヒハツ。こうした機器によって、私たちの暮らしに欠かせないインターネットインフラは支えられている。
この世界には、誰に知られることはなくとも確実に働いているものがある。普段ならまず入れないデータセンターを後にして、まるで月の裏側を見てきたかのような不思議な気分に陥った。

三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)新しいウインドウが開きます

市原淳子の写真
取材・文/市原淳子
雑誌の編集者・記者を経て独立。食やヘルスケア、医療・介護から最前線のビジネスフィールドまで幅広いジャンルにわたり、Webメディア、雑誌、新聞、また単行本の企画・構成などを手がける。企業人や職人、アーティストへのインタビュー多数。発信者と読者をつなぐ、わかりやすくて面白いメディア作りの達人。
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