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CLUB DIATONE

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DIATONE®車載用スピーカー
DIATONE Car speakers

DIATONEの車載用スピーカー登場の経緯

DS-G500の開発経緯について教えてください。

寺本

DS-G500の前にDIATONEスピーカーについてのお話しをさせてください。DIATONEスピーカーは1946年に放送局のスタジオモニタースピーカーとして誕生しました。モニタースピーカーというのはプロの方がその音を聴いて判断するためのものですから、音に変なクセがあってはならず、細かな音の変化をキチンと捉え、コンテンツに含まれている情報を正確に伝達しなければいけません。その結果として、モニタースピーカーはコンテンツのジャンルを選ばず、何かのジャンルが得意で特定のジャンルが不得手といったことがないスピーカーになります。料理に例えるならば、素材のうま味をしっかり引き出し、調味料に頼らないコクのある味である、ということです。DIATONEの歴代スピーカーは、このモニタースピーカーと同様に、コンテンツに含まれている情報を余すことなく引き出すことをコンセプトに開発されています。

車載用DIATONEスピーカーも同じコンセプトなのですね。

寺本

DIATONEの車載用スピーカーは2006年にDS-SA3が登場し、その後にフラッグシップのDS-SA1が導入されました。DIATONEがカーオーディオ市場に参入したのは、世の中がスマートフォンなどを含むポータブルオーディオをヘッドフォンで聴くスタイルが圧倒的になりつつあるなか、クルマの中だけはオーディオ再生用にスピーカーが必要で、いわばスピーカーにとって最後の聖域だったからです。DS-SA3とDS-SA1は、DIATONEとして本格的にカーオーディオ市場に参入するということで、「60年以上にわたるDIATONEの歴史が培ってきた音をそのまま再現するスピーカー」をコンセプトとし、ホームオーディオと同じ音を出すことにこだわり開発されました。SRチタンやB4Cピュアボロン、アラミッドスキン・アルミハニカムコーンといったDIATONE伝統の技術を投入し、DIATONEの音を忠実に再現することを徹底的に追求しています。

取付による音の違いも考慮したDS-G50,DS-G20を導入

DS-SA1の後はDS-G50やDS-G20という違うシリーズが投入されました。

寺本

DS-SA3とDS-SA1を投入した後に市場の反響を調べたのですが、その中でカーオーディオには特有の解決しなければいけない問題があることが浮かび上がってきました。ひとつは、ほとんどのクルマではホームと違って低音域と高音域のスピーカーの取付位置が、かなり離れてしまうということです。そのこと自体は当然DS-SA3、DS-SA1開発当初からわかっていたのですが、ウーファーとトゥイーター間の距離による音への影響まではその時点では深くは掘り下げてはいませんでした。

どんな影響があるのか詳しく教えてください。

寺本

ホーム用スピーカーでは低音域と高音域の音色が違っていても物理的な距離が近いので、音色がきれいに混ざりやすく、さほど音色の違いは気になりません。しかしカーオーディオでは、車種によってはウーファーとトゥイーターがかなり離れた場所に設置されることがあり、その場合はホーム用スピーカーと違って音色の違いがわかってしまうことがあるのです。またホーム用スピーカーは、エンクロージャーと呼ばれるスピーカーボックスをメーカーが最適なサイズや形で、セットで作ります。そのため、ボックスを含めての完成した音作りというのができるわけですが、車載用スピーカーの場合はスピーカーユニットを販売して、後はショップやユーザーの方に取付をお任せすることになります。ここで問題なのは、クルマが違うとドアの形状や金属板の厚さ、内部の容積、ドア内側のサービスホールの大きさや場所、数など、条件があまりにも違うということ。腕のいいショップがドア内部を理想的なエンクロージャーとして仕立ててくれれば、素晴らしい音になる車載用スピーカーであっても、クルマや取付によって音が極端に違ってしまうのでは、車載用スピーカーという商品としては問題があるということを強く認識しました。もちろん取付条件が変われば音が変わってしまうのはある程度仕方ないことではありますが、マルチウェイの各スピーカーの音色を統一することで、スピーカー取付位置による影響をあまり受けないハイクォリティなスピーカー、DS-G50の開発が始まりました。

DIATONE独創のNCV振動板が誕生

DS-G50ではDS-SA3、DS-SA1とは振動板素材が違いますね。

寺本

スピーカーはさほど多くないパーツで構成されていて、そのすべてのパーツが音質に影響を与えます。しかしながら一番音に大きな影響を与えるのは振動板です。DIATONEは常に理想の振動板素材について研究を続けていて、理想の振動板はふたつの要素を同時に満足させることが必要だと結論づけています。その要素のひとつは音の伝搬速度を速くすることです。伝搬速度が速いというのは、低音域から高音域に至るまで正確に追従できる能力が高いということを意味していて、正確な音楽再現における基本中の基本となります。伝搬速度というのは空気で約340m/s、水で約1600m/s、アルミニウムで約4700m/s、チタンで約5100m/sなのですが、カーボンナノチューブと数種類の樹脂を最適に配合することで生まれた新素材「NCV」振動板は、約5600m/sという伝搬速度を達成し金属チタンを凌ぐ速さとなっています。

樹脂でありながらその伝搬速度はすごい。

寺本

速ければそれだけでいいのかというと、ただ速いだけではダメで、もうひとつ重要な要素が絡んできます。それが適度な内部損失です。この「適度な」というのがポイントで、ありすぎてもなさ過ぎてもダメなのです。内部損失は音を消し込む力で、内部損失が少ない金属だとキンキンとかチンチンといった特有の響きを持ち、この固有音があると何を聴いてもその音がまとわりついてしまうことになります。逆に言うとスピーカー設計者は、その固有音を利用して音色を作っているわけです。ただしDIATONEの設計思想は、音源に対して「何も足さない、何も引かない」なので、この固有音をできるだけ排除し、あくまでも音色はコンテンツに含まれる音色をそのまま再現したいと考えています。そのときに必要なのが適度な内部損失なのです。内部損失に関しては、振動板素材用途では紙が最適で、固有音がほとんどありません。紙の伝搬速度は約1600m/sしかないのに、ペーパーコーンのスピーカーに名機といわれるものが多々あるのは、この内部損失の部分が非常に優れているからなのです。

NCV振動板の内部損失も優秀なのですね。

寺本

NCVはチタンを凌ぐ伝搬速度を持ちながら、紙に匹敵する程の適度な内部損失を持っていて、振動板の素材としてはこれまで存在しなかった理想的な素材といえます。さらに射出成形が可能なので、トゥイーター用の超小型の振動板からサブウーファー用の大型のものまで製作が可能です。そのため、必要とされる超低音域から超高音域までの広大な再生周波数帯域を同一素材で再生できることになり、音色の統一が図れたわけです。車載用マルチウェイスピーカーの設置場所は、ウーファーがドアの下側、トゥイーターはピラーに埋め込まれており、顔の高さの位置にあるといったこともあるわけですが、同一素材によって音色が統一されることで、スピーカー取付位置に関わらず非常にナチュラルで、マルチウェイスピーカーでありながらもフルレンジを聴いているような一体感のある音を楽しめるわけです。そのNCV振動板を採用した初めてのスピーカーが、2010年12月に発表したDS-G50で、それに続いてDS-G20が発売されました。

より音の完成度を高めたDS-G500

DS-G500のポジションを教えてください。

寺本

DS-G500は満を持してDS-G50の後継モデルとして4年ぶりに登場したスピーカーシステムです。DS-G50発表後もNCVについて先端技術研究所と共同で研究を続け、構造を初めてとするさまざま要素で振動解析をシミュレーションし、いくつかの試作を実施しながら特性を図り試聴して、よりレベルアップしたスピーカーの開発を進めていました。そしてその結果生まれた技術が、今回搭載した技術です。DS-G500の開発でもこれまでのスピーカーと同様に、あくまでもコンテンツに含まれている情報を最大限に引き出すため、余計なものをつけないようにして聴感上のS/N感を高めることを狙い、最終的には今まで以上に正確に音楽が伝わることを目的としています。私自身は、いい音というのは二律背反だと思っています。硬くて軟らかいとか、太くて繊細といった相反するものを具現化していくことがいい音の必要条件だと考えています。DS-G500はこの二律背反をかなり具現化したのではないかと自負しています。

DS-G50から大きく進化しているのですね。

寺本

型番が似ていたり振動板素材やフレームの造形が同じなので、あまり変わっていないのではないかと思われる方がいるかもしれませんが、そうではありません。音はほんのわずか聴き比べただけでその違いは明らかです。もっとも、ソースに忠実な再生をするというDIATONEのスピーカー作りのコンセプトは変わっておらず、これまでのワイドレンジ、ハイレスポンス、ナチュラルな再生に、よりダイナミックさが増し、さらに心地よい音楽再生を楽しめるようになっています。

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