試聴会の総論
ダイヤトーンの最新鋭センターユニット「NR-MZ300PREMI」を中心に、クラシック、ジャズ、ボーカル、アニソン等々まで多くのジャンルの楽曲を試聴した。
結論として「NR-MZ300PREMI」の再生音は、期待を大きく上回るものだった。筆者が感じた本機のアドバンテージは大きく4点ある。
まず1点目は、ライン出力、スピーカー出力、両者とも情報量が多いこと。2点目は聴感上のS/N比が高くノイズフロアが低い、つまり小レベルの音がスポイルされず、サウンドステージの表現に長けていること。3点目は内蔵アンプの音が良かったこと。4点目は、音色にクセが少なく音源が持つ音色や音調をアキュレイト（正確）に表現できていたことだ。
この特長は、筆者が出向くコンテストでエントラントの車を聴いていた時とある程度共通しており（もちろんインストーラーの個性が反映されるが）、今回の取材でも改めて実感した次第だ。
H ZETTRIO
「Journey」
H ZETTRIOは、H ZETT M エイチゼットエム（ピアノ・キーボード）、H ZETT NIRE エイチゼットニレ（ダブルベース）、H ZETT KOU エイチゼットコウ（ドラムス）によるピアノトリオである。
現代のジャズを代表する日本人グループとして知られ、「大人も子どもも“笑って踊れる”」をコンセプトに、キャッチーでノリの良い楽曲を矢継ぎ早に提供している。
無重力奏法と評される躍動感あるライブパフォーマンスが人気の、まさに現在進行形のジャズの伝道師なのである。2013年から活動を開始したH ZETTRIOは、4枚のアルバムをリリースしており、本タイトルは2019年の配信専用でリリースされた通算27枚目のシングルだ。
実際に再生してみると、ポップで軽やかなメロディーに気持ちがノッてくる。このシステムが、ただ良い音で出すだけではなく、音楽性豊かなグルーブ感を持っているからだ。
注意深く音質をチェックすると、まず感じるのはH ZETT NIREのベースやH ZETT KOUのドラムが立体的でリアリティが秀逸なこと。これは「NR-MZ300PREMI」の内蔵アンプの能力が高く、スピーカーをしっかりと駆動している何よりの証拠だ。
H ZETT Mのピアノも色彩感豊かに独特のメロディラインを奏でる。楽曲を通して感じたのは、情報量が多く聴感上のノイズフロアが低いので、トリオの奏でる3つの楽器が明瞭に聴こえてくること。
特に曲中盤のピアノ、ベース、ドラムが同時に鳴っているときの描き分けがしっかりと聴こえるので、3人の演奏技術や熱意までもが伝わってくる。
こんな良い音が車で楽しめたら、最高のドライブが楽しめるだろう。試聴ということを忘れて聴き惚れてしまった。
マーカス・ミラー
「7-T'S」
“帝王”の異名を持つアメリカ生まれの超絶ベーシスト、マーカス・ミラー。
1977年製のフェンダー・ジャズベースを抱えてのスラップ奏法をアイコンに、現代ジャズ・ベースシーンを牽引し、グラミー賞も受賞している。また音楽プロデューサーとしての評価も高く、昨年、今年とブルーノート東京で公演を行うなど日本での知名度も高い。
最近のマーカス・ミラーは、ジャズをルーツにしながらも、ブラック・ミュージックやR&Bとクロスオーバーした楽曲を多数発表している。2018年に発売された本作「レイド・ブラック」は、様々なジャンルの人気アーティストとコラボレーションした最新アルバムだ。
試聴した楽曲「7-T'S」はニューオリンズジャズをルーツに持つ人気トロンボーン・プレイヤー、トロンボーン・ショーティが演奏に加わる。マーカス・ミラーのアルバムを聴いていの一番に気になるのはベースのリアリティだが、低域の表現に力強さがあり、そこは難なくクリアーしていて、曲冒頭からリアルで伸びの良いベースサウンドが試聴室を包む。
また、弦を弾く音の立ち上がりが早く、解像度高く聴こえるのは、オーディオ部、アンプ部両者の性能が高いためと推測される。楽曲全体の情報量も豊かで、特に2:15から始まるトロンボーン・ショーティの演奏は生き生きと聴こえ、スピーカー中央に浮かび上がる。
この空間表現力の高さは、「NR-MZ300PREMI」の大きなアドバンテージ。また、ベースとトロンボーンが変幻自在に入り乱れる部分の描き分けも、ハイエンドのホームオーディオ用システムに準じる素晴らしい表現力である。
デジタル、アナログ回路とも音質を練り込まれた設計が、この情報量の高さと鮮度感を両立しているのだと大いに感心した。