伊丹地区の生きもの調査レポート

各事業所で、生きもの調査から始まる自然との共生を推進
希少種保全と工事に伴う代替環境の整備をテーマに
伊丹地区

伊丹地区では、2016年度に実施した生きもの調査の結果を踏まえ、外来生物の防除や希少種の保全に取り組んでいます。2019年には、生きものが暮らしやすい環境を整えるため、また、工事で失われた水路に生息していたトンボなどの生きものの代替環境として、ビオトープ(愛称:イタトープ)を新設しました。社員が職場で身近な自然との関係を構築できる場となるよう、生物多様性勉強会やビオトープの維持管理作業など、社員参加型の活動を積極的に展開しています。

また、同じ敷地内にある関係会社の菱彩テクニカ(株)も2020年3月にビオトープを造成し、4月から定期観測を進めています。

事業所所在地

〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町八丁目1番1号

主な取扱製品

<伊丹製作所>

交通システム・エンジニアリング(車両システム、交通情報通信システム)及び車両用電機品(主電動機、制御装置、電源装置、ブレーキ電機品、車上情報装置、車上保安装置ほか)

<系統変電システム製作所>

電力系統・変電システムエンジニアリング、ガス遮断器、ガス絶縁開閉装置

<通信機製作所>

情報通信システム、端末機器、電子応用機器および電子デバイスの設計、製造、試験

<コミュニケーション・ネットワーク製作所>

情報通信システム、機器の設計、製造、試験

<先端技術総合研究所>

電機、電子、産業、情報、環境等の関連技術の研究開発


主な取組テーマ

[三菱電機伊丹地区]

  • 生きもの調査で確認された外来生物の防除を検討 [A-1-(1)] [A-1-(2)]
  • 生きもの調査で発見した希少種を保全 [A-2-(2)]
  • 従来存在した水環境を回復するビオトープを造成 [A-1-(1)] [B-4-(1)] [B-4-(2)] [B-4-(3)] [B-4-(4)] [B-5-(1)]
  • 新道沿いでの緑地造成にてビオトープ拡大を狙う [B-4-(1)] [B-4-(2)] [B-4-(3)]
  • 社員のストレス低減にみどりを活用 [C-6-(1)]

[菱彩テクニカ(株)]

  • 社員のマインド育成と地域社会との接点としてビオトープを設置 [C-7-(1)] [C-7-(2)]

※ 取組テーマの分類については以下を参照ください。

取組の特徴

[三菱電機伊丹地区]

  • 敷地内で大規模な工事が続いていることから、「工事前後で生物や植物がどう変わるのか」というテーマを設定して生きもの調査を実施
  • 構内にある鎮守の森で希少な「ムクロジ」が発見されたことから、この保全を検討
  • 工事に伴い環境が大きく変わる場所もあることから、生きものが暮らしやすい環境を残すための工夫を検討。そのシンボルとして、水場を含み、地域在来の植物からなるビオトープを造成
  • 敷地内での緑地面積の回復に向けて、新ビオトープと連携する緑地帯造成を構想。圃場としての地域種苗導入を計画
  • 緑の持つストレス低減効果の活用の一環として、産業医室利用者の心理へ配慮した鉢植えの設置やオフィス内での鉢植えの机上設置を開始

[菱彩テクニカ(株)]

  • ビオトープを社員が手づくり

伊丹地区の活動テーマ

1. 大規模工事が敷地内の生きものに与える変化を調査

伊丹地区ではこの数年、敷地内で大規模な工事が続いています。こうした変化は生きものにも大きな影響を与えると考えられることから、まずは、「工事前後で生物や植物がどう変わるのか」を生きもの調査のテーマに設定し、外部の調査会社の協力のもと、2016年度に最初の調査を実施しました。

その後、大型工事のひとつである都市計画道路の敷設が進行中であること、並行して伊丹地区内にビオトープを設置したことから、2021年度に第2回調査(春・夏・秋・冬の各1回)を実施。第2回調査では、昆虫類などの状況の変化を確認するとともに、鳥類にも調査範囲を広げています。

伊丹地区では生きもの調査とともに、構内に緑を増やす取組も進めています。工事計画のなかに緑地の造成を組み込むほか、将来その緑地帯に植える地域種のための圃場を準備することも計画中です。こうした取組において、調査で得られたデータを活かし、より生きものに配慮した植栽を実現していきます。

第1回 2016年度の調査でわかったこと

水辺や樹林に豊かな生態系を確認
  • 水辺がトンボの繁殖場所に
  • 鎮守の森(樹林)に希少種「ムクロジ」を確認
  • 「兵庫県版レッドリスト2010」Cランク

主な施策

  • 工事で失われる水辺の代替環境として「イタトープ」を設置、モニタリング
  • 病害など万一の事態に備え、ムクロジの幼木の一部を鉢に移動し育成。育てた幼木は移植
  • 活動内容を社員に発信するほか、地域の方にもアピール
  • 構内の緑を社員のメンタルケアに役立てるなど、活用方法を検討
鉢で育てたムクロジの幼木を地面に植え替え
鉢で育てたムクロジの幼木を地面に植え替え

第2回 2021年度の調査での変化 ※2021年8月時点までの調査に基づく

多くのトンボ類がビオトープを利用していることが確認できた一方、環境変化の影響も

2021年8月時点までの調査(春・夏)で、新設したイタトープをはじめ、伊丹地区内の水辺と周辺の緑地で引き続き多くの昆虫類が確認できました。その一方で、工場北西部の竹やぶを伐採したことから、生物の生息状況が変化した可能性が指摘されています。2022年2月の全調査完了後に、再度状況を整理し、今後の緑地計画や生物多様性保全の施策を検討していく予定です。

また、今回は新たな試みとして、調査とあわせて動画撮影を実施しました。今後、この映像を活用して、環境教育用の動画コンテンツを作成することも計画しています。

調査の様子
調査の様子
アキアカネ(兵庫県版レッドリスト2012(昆虫類)要注目種)
アキアカネ
(兵庫県版レッドリスト2012(昆虫類)要注目種)

2. トンボなどの生きもの向けの代替環境としてビオトープを設置し、モニタリングを継続

伊丹地区内の水路に生息していたトンボ類の新しい繁殖地となるよう、2019年2月に新しくビオトープを設置しました。

規模は小さいながら、地域在来の植物を植えていることが大きな特徴です。このビオトープは、伊丹地区の生物多様性保全のシンボルとして、敷地内の各事業所が協力して管理しており、社員への啓発に役立てています。2020年1月には、より親しみを持ってもらえるよう、社内公募を経て愛称を「イタトープ」と決定しました。

伊丹地区の生物多様性保全活動推進担当者
伊丹地区の生物多様性保全活動推進担当者
地域の水辺から在来種を導入した「イタトープ」

伊丹地区の西端、門の近くに設置したビオトープが「イタトープ」です。尼崎市内には「猪名川」「武庫川」の2つの川が流れており、かつては繰り返し氾濫していたとされています。伊丹地区のある場所も氾濫域に含まれていることから、伊丹地区周辺に本来あるべき水辺の植生は、それらの川辺に近しいと考えられます。そこで「イタトープ」には、2016年度に生物調査を行った専門家の協力のもと、湿地の植物が多い猪名川べりで採取した在来種を植えています。また、水に流れをつけ、場所によって深さや流速が変わるように設計。より多くの種類のトンボなどが利用できるよう配慮しています。

「イタトープ」の管理にあたっては、他の外来種などが紛れ込んでいないか注意しながら、草取りなど必要な作業を行っています。秋に大量の種子をまくガマは夏のうちに穂を刈り取るなど、個々の植物の特性にも着目した管理を模索しています。こうした管理は、伊丹地区内で操業する8つの事業所が協力して行っています。

また、刈り取った穂を切り花として展示するなど、社員への情報発信に役立てる方法も検討しています。

イタトープ内に育ったガマ
イタトープ内に育ったガマ
  • ビオトープ内の植生
ビオトープ内の植生
  • 長期的な維持活用に向けた工夫
動力として太陽光発電と蓄電池を活用。水には工場排水を浄化した中水を用いる
動力として太陽光発電と蓄電池を活用。水には工場排水を浄化した中水を用いる
ビオトープに親しみをもってもらうため、説明付きの看板を設置(2021年1月)
ビオトープに親しみをもってもらうため、説明付きの看板を設置(2021年1月)

3. 情報発信と社員教育に注力

ビオトープ管理を中心とする生物多様性への取組を広く伊丹地区内で共有するため、「生物多様性保全ニュースレター」を発行するほか、社内向けのメールマガジン「ビオトープ通信」も配信しています。2020年には新コーナー「ひとりごとシリーズ」を開設。伊丹地区内の生物多様性担当が、活動にかける思いを紹介するとともに、最新の環境ニュースの解説などを発信しています。

生物多様性ニュースレター
生物多様性ニュースレター

また、社員への環境教育も強化しています。2021年2月には、新型コロナウイルス感染症の拡大などを踏まえてリモート講座を開催し、61名が参加しました。参加者からは「生物多様性の重要性が理解できた」といった反応があり、引き続き開催を続けていく予定です。あわせて、生きもの調査で撮影した動画を活用し、教育用コンテンツの作成も進めています。完成したコンテンツはイントラサイトなどを通じて地区内に共有する予定です。

4. 緑を使ったメンタルケアを推進

緑の持つストレス軽減効果の活用にも取り組んでいます。2020年度には、伊丹製作所本館の屋上に花壇を設け、プランターで花を育てる取組を開始しました。現在は、産業医室に育てた花を飾っていますが、今後、オフィス内の他のエリアへも同様の取組を広げていきます。

伊丹製作所本館屋上の花壇
伊丹製作所本館屋上の花壇
産業医室
産業医室

伊丹地区内の水辺

伊丹地区内には「イタトープ」をはじめ、多くの水辺が存在しています。それぞれについて必要な管理を行っており、今後、社員によるかいぼりなども検討していきます。

    かいぼり:池などの水を抜き、底の泥をさらって天日に干す管理方法。外来生物の駆除にも用いられる

マネジメントの声
マネジメントの声

複数の事業所が一緒になって、啓発を進めていきたい。

三菱電機には、環境性能の高い製品を社会に提供していく使命があります。地球温暖化防止に限らず生物多様性保全も製品づくりに欠かせない観点があり、製品の出発点となる設計から意識していくことが重要だと考えています。伊丹地区は複数の事業所と関係会社で構成されており、それぞれ事業内容は異なりますが、生物多様性保全活動は合同で推進し、地区全体の啓発につなげていきたいと考えています。

生産システム部長 板野 康晴(右)

ビオトープへの期待を取組の推進力に。

正門前のビオトープの整備は、2016年度の専門家の生きもの調査を踏まえて計画しました。伊丹地区の敷地は2つの河川に囲まれたところにあることから、その川から採取した在来種を植えるほか、水の流れる速さや深さに変化を持たせることで、敷地内の旧水路にいたトンボが集まりやすいように工夫しました。地域本来の木を植え、地域の生きものを呼び込む。そのストーリーを考えるなかで、私たちのなかにあるビオトープの将来への期待、夢がどんどん膨らんできました。これを今後の取組への推進力にしたいと思います。

生産システム部 環境施設課 課長 吉田 武生(左)


菱彩テクニカ(株)の活動テーマ

ビオトープを自分たちでつくり、育てていく

菱彩テクニカ(株)は塗装・施設・物流事業などを展開し、伊丹地区にある三菱電機の伊丹製作所・系統変電システム製作所の製造を支援する関係会社です。都市計画道路の整備に伴う大規模工事を機会に、当社も生物多様性保全活動の一環としてビオトープを設置しました。

伊丹地区管理のビオトープと異なるのは、池の土台工事と電気工事以外は設計から区画の造成、製作、池植物の植付けまですべてが「手づくり」であることと、社員だけでなく地域住民も意識したものであること。2019年8月から7カ月をかけて整備を終え、2020年4月に社員向けの説明会を行いました。その後6月には目視で生きものの状況を確認するとともに雑草取りを実施。以降も四半期ごとに雑草取りと観察を続けています。

2021年8月時点の様子。ビオトープ内の植生などについて解説する看板を新たに設けた。
2021年8月時点の様子。ビオトープ内の植生などについて解説する看板を新たに設けた。

これまでの観察で、導入した生きものが順調に生育・繁殖していることがわかっています。2020年10月には2本の藤の木を植えて自作の藤棚を設置し、2022年5月ごろには開花する見込みです。また、2020年4月に投入した魚たち(メダカ、ほか川魚)も2世代、3世代……と代を重ね、個体数を増やしています。目的としたトンボの飛来についても、種類、回数とも増えたことが確認できました。2021年の春からは伊丹地区で開催されている生物多様性勉強会にも正式参加しており、当社においても専門会社による生きもの調査を実施しています。あわせて相互にビオトープを見学し、活動へのアドバイスもいただきました。

今後は生きもの調査の結果を待ち、活動の方向性を定めていく予定です。トンボ以外の生きものの飛来なども確認されることを期待しています。

菱彩テクニカ敷地 ビオトープ設置場所
手づくりビオトープの特徴
  • 池の水には福利厚生棟屋根の雨水と屋上緑化の散水(雨天時センサー停止)を利用
  • 将来目的別に活用できるよう3つの池を設置
  • 3つの池はそれぞれ10cmの段差をつけて埋設管でつなぎ、雨水が行きわたるように工夫
  • 水が淀まないように一定時間は循環ポンプを稼動
  • 水辺植物は地域産(関西圏生息)の種を選択
  • 公道通行者、近隣住民の方々にも見ていただけるように配置や見た目を工夫
西池
西池
中池
中池
東池
東池
  • 3つの池がつながったビオトープの全体像
3つの池がつながったビオトープの全体像
マネジメントの声
マネジメントの声

「生物多様性の保全」に「敷地の緑化と美化推進」を加え活動も進化!

2020年4月から社内観測を開始し1年半が経過します。この間に社内・社外の方々へのプロモーションを行いながら、「手づくり活動」としてビオトープの管理と改善に取り組んできました。雨水の利用、地域産水辺植物の植付け、藤棚の新設、会社入口の緑化促進、従業員によるメンテナンスなどの活動により、池に棲息する生きもの、また外部から飛来する生きものも多様化しています。

従業員による生物多様性保全・近隣住民との融合という菱彩ビオトープのコンセプトを忘れず、進化・維持・継続してゆけるよう“チーム菱彩”で環境活動を推進していきます。

菱彩テクニカ(株)取締役社長 和田 昭二(中央)

小さな命をはぐくみ、そのいとなみを感じさせてくれる憩いの場に

2020年8月20日、ビオトープで尾の先が鮮やかに碧いイトトンボ1体を発見。体長わずか3.5cm。その後もその姿を観察するようになりました。翅は細く、飛翔能力は限られているようで、池の植物の先にとまっていることが多いことから、菱彩ビオトープに棲息している個体だと結論付けました。夏は過ぎて気温が下がり、10月29日(出会いから73日)を最後に姿は消えました。そして2021年7月6日、羽化直後でじっと葉にとまっている子孫らしき個体に遭遇しました。この個体は、本記事を書いている9月8日現在も棲息を確認できています。小さな命と出会い、その息吹を感じる。菱彩ビオトープは今、そのような場となっています。

菱彩テクニカ(株)常務取締役 生産システム部長 平野 良樹(右)

社内外の方々に予想以上に好評。今後も魅力あるビオトープに改善する活動を継続します。

2020年にビオトープの整備が完了してからは、本ページでその取組を公表しているほか、従業員説明会や顧客見学などの機会が数多くあり、そのつど好評をいただいています。また、フェンスのすぐ外を通る近隣住民の方、例えば通勤中の会社員の方や散歩中のご家族などが池を覗き込んでいる姿もよく目にするようになりました。ビオトープで作業していると、「池に何がいるのですか?」「ご苦労様です」などと声をかけていただき、ビオトープの意義や棲息・飛来する生きものについて説明することもあります。このようなコミュニケーションのたびに、苦労して整備した甲斐があったと感じています。もちろん、当初の目的であるトンボの飛来増加についても目に見えて効果が現れています。小さなスペースではありますが、興味を持ってくださった方のためにも、引き続き魅力ある場所に改善していきます。

菱彩テクニカ(株)生産システム部 環境施設統括 亀井 裕仁(左)

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環境への取組
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