神戸地区の生きもの調査レポート

各事業所で、生きもの調査から始まる自然との共生を推進
「自分たちの力でできる息の長い活動」をコンセプトに活動を継続
神戸地区

神戸地区のある和田崎町は、瀬戸内海上に突き出した和田岬の東寄りに位置します。人工的に埋め立てられている場所が多く、神戸地区の敷地も3分の2が埋立地。大型装置を扱うために緑地面積も多くは増やせないという中で、「自分たちの力でできる息の長い活動」をコンセプトに活動を続けています。体制の特徴は、環境施設課、総務課、緑地管理を行う関係会社・三菱電機ライフサービス(株)(MDライフ)でチームを結成していること。取組内容の検討から実施まで、全員で意見交換をしながら、少しずつ活動を前進させていこうとしています。

事業所所在地

〒652-8555 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町一丁目1番2号

主な取扱製品

<神戸製作所>
官公庁・地方公共団体、上下水道・電力・鉄道・道路等の社会インフラ事業者、ビル施設分野向けの情報通信技術を基盤としたソリューションの提供、及び監視制御システム、広域運用管理システム、通信ネットワークシステム、各種情報システム、オゾン応用装置、運行管理システム、電力管理システム、交通変電用監視制御装置などの開発・製造・保守サービス

<電力システム製作所>
発電プラント・システムのエンジニアリング及び監視・制御・保護装置、タービン発電機、水車発電機、超電導応用製品、電力系統制御システム、電力流通関連システム、配電自動化システム

主な取組テーマ

  • 外来種管理 [A-1-(2)]
  • 社員と関係会社・MDライフ(緑地管理担当者)による生きもの調査を実施 [A-2-(1)]
  • 「チガヤ保護エリア」を設定し管理 [B-4-(1)][B-4-(4)]

 取組テーマの分類については以下を参照ください。

取組の特徴

  • 社員が生きもの調査を実施。また緑地管理担当者が樹木などの詳細調査を行い、結果を共有
  • 環境施設課、総務課、緑地管理担当者で頻繁に話し合いを行い、活動内容を検討。
    外部有識者(兵庫県立人と自然の博物館)の意見も取り入れ
  • 上記の調査結果を地区のイントラサイトで逐次公開
  • チガヤ草地は定期的に刈り取りを行い、刈り取ったチガヤを近隣の三石神社の神事向けに提供

神戸地区の活動テーマと自然の特徴

社員による調査で見えた課題からチームを拡大

神戸地区の担当者
生産システム部 環境施設課
総務部 総務課
三菱電機ライフサービス株式会社
神戸地区の担当者生産システム部 環境施設課
総務部 総務課
三菱電機ライフサービス株式会社

神戸地区での活動は、2016年5月から7月にかけて環境施設課が実施した生きもの調査に始まります。このときは43種の動植物を確認できましたが、広い敷地内に緑地が分散していること、課内に生きものに詳しい社員がいないことなど、課題も浮上。調査にせよ緑地管理にせよ、この状況で取り組めることは限られるように感じられました。そこで、環境施設課と総務部総務課に加え、緑地管理を担当するMDライフとも連携したチームを結成し、活動を展開することにしました。

2017年3月以降は結成したチームが主体となって植物調査や、その結果に基づいた取組内容の検討を推進。地元の「兵庫県立人と自然の博物館」にも相談して、2018年1月にはある程度指針を固め、“手づくり”でできることから取組を進めています。

2020年3月からは、新たに策定された三菱電機の「生物多様性ガイドライン(チェックシート)」も活用しています。このチェックシートは事業所の活動実施レベルを評価するもので、生物多様性に関して企業が取り組むべき施策がチェック項目として網羅されています。今後の活動計画の目標をガイドラインの施策から定め、継続的なレベルアップに努めていきます。

調査結果を分かりやすくまとめて、イントラサイトで社員に公開

2016年5月から7月にかけて行った初めての調査では、35種の植物に加え、鳥類3種、虫5種も確認できました。渡り鳥が飛来する様子を目撃した社員もあり、樹木の実などを食べに来ている可能性があることが分かりました。

2回目は、敷地内にある樹木の位置と種類、本数を確認する植栽調査で、2017年1月から3月にかけて実施しました。この調査では敷地内全体で約80種、7,000本ほどの木が生えていることが分かったほか、埋立地とそれ以外の部分で樹種の傾向が異なるという特徴も確認できました。

3回目は、2017年4月から9月、2018年4月から10月と2年かけて野草の調査を実施し、140種が自生していることを確認しました。

神戸地区では、これら調査結果を「構内緑地植生マップ」として編集し、地区のイントラサイトで公開。9つに分割された敷地内の地図から各区画の生きものを参照できるようになっています。2018年12月に追加した「構内野草自生マップ」では、区画ごとの代表的な植物に加え、それらの開花時期も紹介するなど、社員の興味を喚起する工夫も施しています。このほかにも、取組の指針や、現在進めている取組について、最新情報を適宜追加しています。また、将来的には、イベントでの展示など、地域に向けた情報発信も検討していきたいと考えています。

第1回調査後に作成した「構内緑地植生マップ」。生きものの特徴や、樹木では開花時期などを掲載
第1回調査後に作成した「構内緑地植生マップ」。生きものの特徴や、樹木では開花時期などを掲載
第3回調査後に作成した「構内野草自生マップ」。月ごとにどんな花が咲くかを分かりやすく編集して掲載
第3回調査後に作成した「構内野草自生マップ」。月ごとにどんな花が咲くかを分かりやすく編集して掲載
在来種「チガヤ」の保全と活用に向けた取組を継続
神戸地区では、外部有識者(兵庫県立人と自然の博物館)の意見なども参考に、地域の在来種である「チガヤ」の草地を保全する取組を、種の「保全」と生態系サービスの「活用」という2つの観点から続けています。
保全
敷地内に保護エリアを設定 ~チガヤの生育場所を確保

チガヤの草地を保全する上での“難敵”となっているのが、外見も植生もよく似た外来種「メリケンカルカヤ」です。敷地内に設定したチガヤ保護エリアでは、チガヤのすぐ隣にメリケンカルカヤが群生しているため、2つの種の見分け方をまとめた資料を関係者で共有し、適切に管理できるようにしています。

チガヤの保全開始初年度は穂の出る時期の違い(チガヤ:春~初夏、メリケンカルカヤ:秋)に着目し、チガヤが種を落とした7月中旬以降、穂が出る前のメリケンカルカヤを刈り取っていましたが、今では出穂前の状態でも区別がつくようになり、日常的に手入れを行っています。

2020年度からは、刈り取ったチガヤを近隣の神社で活用いただくことを前提に(詳しくは次の記事をご覧ください)、チガヤの「育成」にも注力しています。2019年度に奉納したチガヤは「丈が短く、加工しにくい」といういまひとつの評価をいただいたため、水が不足して背が伸びなかったと仮説を立て、2020年度は自動散水機を設置するなどの対策を実施しました。その後も日照を調整するなど、より良い育成方法を検討しています。

チガヤ(左)とメリケンカルカヤ(右)。穂がないと判別が難しいが、茎の形状などに違いがある
チガヤの見られる場所やメリケンカルカヤとの見分け方を資料化
チガヤの見られる場所やメリケンカルカヤとの見分け方を資料化
穂を出したチガヤ
刈り取りの様子
穂を出したチガヤ(左)と、刈り取りの様子(右)。刈り取りはチガヤが穂を落とした後、三石神社『茅の輪くぐり』の日程にあわせて毎年7月中旬に実施
活用
三石神社へ「チガヤ」提供 ~地域の文化の保護に貢献

和田岬の三石神社では、毎年7月に「茅(ち)の輪くぐり」が行われます。これは国内各地で行われてきた神事のひとつで、チガヤやスゲなどの植物で大きな輪をつくり、その中を人がくぐることで病やケガレを祓うというものです。しかし、近年では輪の材料の調達に苦心しているとのお話を同社から伺いました。そこで2018年から神事の数日前に刈り取りを行い、得られたチガヤを提供しています。

地域の在来種は、ときとして伝統的な行事などにも活用されているケースがあります。環境に配慮した緑地管理を、文化の保護につなげる試みとして、今後もこの取組を継続していきます。

毎年7月に行われる三石神社での茅(ち)の輪くぐり
毎年7月に行われる三石神社での茅(ち)の輪くぐり。この輪の材料として、神戸地区で刈り取ったチガヤを提供
神事の参加者に配られる小さな茅(ち)の輪
神事の参加者に配られる小さな茅(ち)の輪
2020年7月に奉納したチガヤ
2020年7月に奉納したチガヤ
2020年7月に奉納したチガヤ。前年より丈が長く、葉柄も太くなったことから「すごく長くて丈夫だった。来年度もよろしく」と好評をいただいた。
生物多様性ガイドライン(チェックシート)に基づく取組を推進
三菱電機では2020年3月に、事業所の生物多様性への取組状況を定量評価する「生物多様性ガイドライン(チェックシート)」を策定しました。神戸地区ではこの施策から、2本の柱で取組を進めています。
(1)植栽されている外来種の管理ルールを設定・運用

構内にある外来の樹木のうち、ニセアカシアなど繁殖力の強いものについては管理ルールを設け、増えすぎすることがないよう、適宜、新芽(根萌芽)の剪定などを行っています。

(2)看板(樹名板)の設置を推進

社員にもっと生きものに興味をもってもらおうと、2020年度から、構内への看板(樹名板)の設置を始めました。より親しみやすいよう、デザインを明るく可愛らしいものとするなど工夫を凝らしています。

このうち看板については、海に隣接しているという土地柄を踏まえ、海風などにも配慮して素材や設置場所を検討しています。2021年2月には試作品となる看板10点が完成。これらを予め定めておいた研修所周辺の緑地内(試作エリア)に設置しました。現時点ではサザンカやサクラなど在来種に対象を絞っていますが、社員の反応も考慮しながら、徐々に拡大していく予定です。

親しみやすさを重視した看板デザイン
親しみやすさを重視した看板デザイン
試作エリアに設置した看板
試作エリアに設置した看板
看板製作メンバー
看板製作メンバー

(左から)

生産システム部 環境施設課 担当 菜嶋 一樹

菱神テクニカ(株)神戸事業部 資材・製造課 名板係 係長 平本 真也

生産システム部 環境施設課 担当 二見 陽平

生産システム部 環境施設課 担当 林 由美

担当者コメント

担当者コメント

「活動を始めて1年半。『生物多様性って何だろう』というところからのスタートでしたが、人と自然との関係、共存の在り方について、少しずつ学びが深まってきました。2020年には看板の設置が実現し、人と自然とが共存する工場に向けて、一歩距離が縮まったと思っています。どんどん構内の自然を豊かにして、そこで働く人たちにも、自然と生きものへの興味を持ってもらいたい。そのための取組を続けていきたいです」

生産システム部 環境施設課 二見 陽平

「2020年は新型コロナウイルスの感染拡大もあり、神戸地区のチガヤの『晴れ舞台』である茅の輪潜りには私が代表として参加しました。活動開始からまだ1年半ですが、地区を取り巻く環境も、メンバーの顔触れも変化しています。そうした中でも生物多様性保全活動を継続していくため、今後も『背伸びをしない、特定のメンバーに頼りすぎない』を意識し、地道に取り組んでいきます」

総務部 総務課 専任 中島 栄吉

「2019年に三石神社に奉納したチガヤの丈は140センチほどで、茅の輪に使うには少し短かったと聞きました。陽当たりが良すぎて水不足になったことが原因とみて対策を進めた結果、より長く、丈夫な、良いチガヤを奉納できたのが2020年の収穫です。次は肥料などにも着目し、多方面から育成方法・環境を見直していきたいと思っています」

三菱電機ライフサービス(株)ビジネスサービス課長 森岡 克文

「普段は草木を『刈る』ことが多い私たちですが、事業所南側のエリアで、枝豆、ひまわり、キンギョソウ、落花生などの一年草を育てる取組を2019年から始めています。活き活きとした元気な緑を育てる、緑化管理の『品質向上』に向けて、試行錯誤はつきません」

三菱電機ライフサービス(株)ビジネスサービス課 GL 柳川 浩二

「ごみ収集エリアがある事業所南側を、お客様にも見ていただけるような、きれいな場所にするのが目下の目標です。少し先の話になりますが、生きものを優先した草地をつくることも検討しています。いわば『陸のビオトープ』というイメージ。実はもう、予定地は確保してあるんです」

生産システム部 環境施設課 専任 平尾 浩一

「2020年に設置した看板のデザインは、グループ会社の菱神テクニカ(株)の協力で完成したものです。少しでも社員の目に留まるようアイデアを出し合って、とても可愛い、素敵なデザインに仕上がりました。癒されるようなカラーリングがこだわりのポイント。少しでも多くの方に見ていただけたら嬉しいです」

生産システム部 環境施設課 林 由美

「私は2020年度に環境施設課に移動してきたのですが、生物多様性への取組に参加してから、それまで工場の中しか目に入っていなかった自分に気づかされました。今の課題は、『どうすれば、もっと良い取組になるか?』ということ。構内で働く人々がもっと生きものに興味を持ち、そのことが環境保全につながるという目標を常に念頭に置いて活動にあたっています」

生産システム部 環境施設課 菜嶋 一樹

管理職のコメント

生産システム部 部長 吉岡 詠進(左)
生産システム部 環境施設課 課長 井上 忠士(右)
生産システム部 部長 吉岡 詠進(左)
生産システム部 環境施設課 課長 井上 忠士(右)

「神戸地区では、自然共生社会実現のため、『野外教室』『里山保全プロジェクト』に加えて、『事業所の生物多様性保全』として、地区内に生息する在来種であるチガヤの保護などに地道に取り組んできました。今後は『環境ビジョン2050』の達成に向けて、『環境計画2023』の施策の一環として、事業所の生物多様性保全への取組レベル向上を目指します。

たくさんの従業員に、地区内に生息する樹木や植物、飛来する鳥などに興味を持ってもらうことをきっかけとして、生物多様性保全の取組の輪が更に広がるよう、工夫を凝らしていきます。さらに、地域の生態系ネットワーク構築にも貢献できるよう取り組んでいきます。」

生産システム部 部長 吉岡 詠進

「日本には自然の恵みに感謝するという風習があります。そこから自然信仰が生まれ、神々を祭る神社が生まれました。三石神社さんに自分たちのチガヤを奉納できるのは大きな喜びです。

本活動を通じて地域と共働した生物多様性活動が広まり、さらに地域とのつながりや愛着の向上につながればと思っております。これからも生物多様性の必要性について自身の理解を深めるとともに、周囲の人々にも広めて保全への取り組みを続けていきます。」

生産システム部 環境施設課 課長 井上 忠士

フォトギャラリー


このページを共有

環境への取組
カテゴリ内情報