先端技術総合研究所と研究者の活動を紹介します。

2026年

【広報発表】「シリコンに注入した水素が自由電子を生成するメカニズムを世界で初めて解明」の広報発表を行いました。

シリコンに注入した水素が自由電子を生成するメカニズム 開発者

シリコン半導体に注入した水素が特定の欠陥※1と結合する過程で自由電子を取り出せる電子状態が形成されることや、水素の持つ電子がこの状態を介して自由電子※2となるメカニズムを世界で初めて※3解明しました。
これは、国立大学法人東京科学大学、国立大学法人筑波大学、株式会社Quemixとの連携成果です。

Si ※4-IGBT ※5の量産では、水素イオンを注入して素子内部の電子濃度を制御していますが、この原理は半世紀以上も明らかにされていませんでした。
4者連携による今回のメカニズム解明により、電子濃度制御を高度化し、Si-IGBTの構造設計や製造方法を最適化することが可能となるため、電力損失のさらなる低減への貢献が期待できます。
また、電子濃度制御が非常に困難ながら、次々世代の材料と期待されるダイヤモンドに本メカニズムを適用できる可能性も示しました。

今後は、ダイヤモンドを含むUWBG ※6材料へ本理論を適用し、パワー半導体をはじめ高周波デバイスや量子センサーなどの設計や製造に活用することで、カーボンニュートラル社会の実現に資する半導体デバイスの創出を目指します。

なお、本成果の詳細は、Nature出版社が運営する学術誌のCommunications Materials誌に発表しました。

◆開発者 清井 明さんから◆
長年の謎であり、好奇心から研究が始まった「水素がシリコンで電子を生み出す仕組み」。半世紀以上にわたるこの謎を素晴らしい共同研究メンバーと力を合わせて解明し、学術的にも産業的にも意義のある成果に繋げることができました。
関係する皆さんに心から感謝するとともに、今後、この知見を活かして新しい半導体デバイスの可能性をいっそう拡げていきたいと考えています。

※1電子の移動や再結合に影響を与える構造的な不完全さ

※2シリコン結晶中で自由に動き回ることのできる電子で、添加する不純物量によって制御される

※32026年1月14日現在。三菱電機調べ

※4Silicon(シリコン)

※5Insulated Gate Bipolar Transistor(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)

※6Ultra Wide Band Gap(従来のSiやSiCよりも大きなバンドギャップを持つ半導体)