先端技術総合研究所と研究者の活動を紹介します。

2026年

【お知らせ】AIRoA主催「ロボット基盤モデル開発コンペティション」で産総研・ソフトバンク・三菱電機の合同チームが優勝

チームメンバー 斎藤 暁生さん

国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)、ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)との合同チームで、一般社団法人AIロボット協会が主催する「ロボット基盤モデル開発コンペティション」に出場し、優勝しました。

本コンペは、2025年4月15日から2026年2月16日にかけて開催され、国内外の大学・企業・研究開発機関などの組織が参加しました。産総研・ソフトバンク・三菱電機のメンバーによる「Group6」は、収集された各ロボットのデータの質を自動で評価・選別するデータキュレーション技術を強みに、絞り込まれた高品質なデータに基づくロボット基盤モデルの追加学習を行い課題に挑みました。その結果、ロボットの実作業成功率を基準とするスコアでトップを取り、優勝しました。

◆チームメンバー 斎藤 暁生さんから◆
今回、リモートでの参加となったため、実機検証はすべて産総研・ソフトバンクのチームメンバーの皆さまにお任せする形となりました。他のチームメンバーの尽力によって得られた優勝ではありましたが、データ処理の高速化など、自身の得意分野では貢献できたと考えています。今回のコンペを通じて得られた、ロボット基盤モデルやデータセットに関する知見や課題を今後に活かし、AIロボット開発をさらに推進していきます。

【広報発表】「世界初、環境価値取引の信頼性を確保するハイブリッドブロックチェーン技術を開発」の広報発表を行いました。

ハイブリッドBCを用いた価値取引の全体像 開発者

国立大学法人東京科学大学と共同で、水素、CO2、合成燃料などの変換価値※1と、その環境価値※2の履歴を正確に記録・管理し、改ざんが極めて困難な形で保存する、環境価値取引の信頼性を確保するハイブリッドブロックチェーン(BC)※3技術を世界で初めて※4開発しました。

本件は、「三菱電機エネルギー&カーボンマネジメント協働研究拠点」の成果です。
環境価値取引には、再生可能エネルギーの起源やCO2強度などの変換価値に関する膨大な量のデータ処理とトレーサビリティー確保の仕組みが不可欠で、証書発行時のタイムラグや手続きの不透明性、グリーンウォッシュなどの問題がありました。
ハイブリッドBCは、取引データと入出力データの管理により、取引価値と変換履歴の可視化・一元化を実現します。また、階層型BC構造により、トレーサビリティー用BCにおける膨大な計測データを高速で処理し、改ざんが極めて困難な形で安全に保存できます。

これにより、事業者や個人がエネルギーや合成燃料の取引に安心して参加できる「分散型価値取引市場※5」の構築と各地域社会への提供に貢献し、環境価値を地域内で循環させる地産地消型のカーボンニュートラル社会の実現に寄与します。

◆開発者 森 一之さんから◆
本技術は、東京科学大学との共同研究により得られた独自の成果です。三菱電機と東京科学大学の技術を結集し、他社との差別化にこだわって開発してきました。
今後は社会実装を見据え、標準化などのルールメーキングや地域社会での実証評価などを通じて、賛同者や協力者を着実に増やしていくことが不可欠です。
今回の成果を、これからの仲間づくりに活用していきます。

※1再生可能エネルギーや低炭素技術によって、ある形のエネルギーを電力・合成燃料など別の形に変換する際に生じる価値を、発生源や数量とともに記録・証明したもの

※2再生可能エネルギー由来電力や低炭素技術などによって得られる温室効果ガス削減効果や環境負荷低減効果を数値化し証明したもの

※3取引記録などの情報を「ブロック」と呼ばれる単位にまとめ、時系列で鎖のように繋げて保存する仕組み

※42026年3月16日現在、当社調べ

※5環境価値を、地域やコミュニティ単位で安全かつ透明に取引できる市場。BC技術により取引記録や価値の証明を分散管理し、価格は場所・時間・量に応じて決定される

MEMSセンシング&ネットワークシステム展2026に出展しました。

1月28日から1月30日まで東京ビッグサイトで開催されたMEMSセンシング&ネットワークシステム展に出展しました。この展示会は、車載・自動運転、ビッグデータ、AI、ロボット、健康・医療、環境・エネルギーの分野にわたり、次世代センサーに向けた要素技術が集結し、産学官・異分野融合のマッチングを加速させ、研究・開発/製造・設計者との質の高い商談を実現しています。

先端技術総合研究所からは、「MEMS超音波センサ技術」、「赤外線イメージセンサ技術」の技術をデモ機や紹介動画を交えて展示し、さらに情報技術総合研究所からも「高信頼な生体センシング技術と適用ソリューション」の展示をおこないました。
今年度も3日間多くの方にお越しいただき、たくさんの質問やご意見を伺うことができました。

◆開発者から◆
我々は、センシングデバイスを社会システムの高度化や新たな価値創出を支える中核技術と捉えています。これまでにない新しいデバイスを生み出すには、従来の発想や技術の延長にとらわれず、用途や社会課題を起点に技術を構想し、具体化していくことが重要です。そのため、製品化や社会実装を常に意識しながら、まだ世の中に存在しないものを形にする開発に取り組んでいます。さらに、この展示会での対話を通じて得られた、我々の新しい技術に対する期待感や気づきを今後の研究開発に活かし、新たな用途や市場を切り拓くデバイスの創出に挑戦するとともに、実社会で役立つ技術として届けていきます。

【広報発表】「世界初、高配向性熱分解グラファイトの自己復元特性を確認」の広報発表を行いました。

試験方法 試験中の電子顕微鏡観察像 開発メンバー

国立大学法人 京都大学との共同研究により、ファンデルワールス(vdW)積層材料※1の一種である高配向性熱分解グラファイト(HOPG)※2が、自己復元特性を持つことを世界で初めて※3確認しました。

本研究では、電子顕微鏡内でマイクロレベルの試験片に疲労負荷を与える独自試験を実施し、負荷によって軟化したHOPGが、負荷を停止して一定時間放置すると、機械的強度を回復することが明らかになりました。HOPGはvdW相互作用を介した積層構造により振動エネルギーを逃がす特性を持ちます。この特性をMEMSの振動吸収機構※4に応用することで、継続的な振動環境でも壊れにくく、長寿命で信頼性の高い機器の開発に寄与することが期待されます。

今後、HOPGの疲労特性に関する研究をさらに深化させ、振動吸収機構への実装に向けた開発を進めるとともに、他のvdW積層材料おける自己復元特性の検証も進めていきます。

◆開発者から◆
新しい材料特性の発見は、これまでにない発想のデバイス開発へとつながる可能性を秘めています。特に、自己復元材料は長期間にわたり性能を維持できるため、多様な分野での応用が期待されます。一方、実用化に向けては性能の再現性や量産技術の確立など、解決すべき課題が残されています。私たちは今後も挑戦を続け、基礎研究から応用開発まで一貫して取り組み、社会に役立つ革新的な製品の実現を目指します。

※1分子同士の弱い引力を利用して構造を形成する材料

※2個々のグラファイト微結晶の向きが一致している高純度で配向のよいグラファイト

※32026年1月27日現在、当社調べ

※4外部から加わる振動エネルギーを内部で吸収・分散させることで、対象物の振動や衝撃を軽減し、ダメージや疲労を抑制する仕組み

【広報発表】「シリコンに注入した水素が自由電子を生成するメカニズムを世界で初めて解明」の広報発表を行いました。

シリコンに注入した水素が自由電子を生成するメカニズム 開発者

シリコン半導体に注入した水素が特定の欠陥※1と結合する過程で自由電子を取り出せる電子状態が形成されることや、水素の持つ電子がこの状態を介して自由電子※2となるメカニズムを世界で初めて※3解明しました。
これは、国立大学法人東京科学大学、国立大学法人筑波大学、株式会社Quemixとの連携成果です。

Si ※4-IGBT ※5の量産では、水素イオンを注入して素子内部の電子濃度を制御していますが、この原理は半世紀以上も明らかにされていませんでした。
4者連携による今回のメカニズム解明により、電子濃度制御を高度化し、Si-IGBTの構造設計や製造方法を最適化することが可能となるため、電力損失のさらなる低減への貢献が期待できます。
また、電子濃度制御が非常に困難ながら、次々世代の材料と期待されるダイヤモンドに本メカニズムを適用できる可能性も示しました。

今後は、ダイヤモンドを含むUWBG ※6材料へ本理論を適用し、パワー半導体をはじめ高周波デバイスや量子センサーなどの設計や製造に活用することで、カーボンニュートラル社会の実現に資する半導体デバイスの創出を目指します。

なお、本成果の詳細は、Nature出版社が運営する学術誌のCommunications Materials誌に発表しました。

◆開発者 清井 明さんから◆
長年の謎であり、好奇心から研究が始まった「水素がシリコンで電子を生み出す仕組み」。半世紀以上にわたるこの謎を素晴らしい共同研究メンバーと力を合わせて解明し、学術的にも産業的にも意義のある成果に繋げることができました。
関係する皆さんに心から感謝するとともに、今後、この知見を活かして新しい半導体デバイスの可能性をいっそう拡げていきたいと考えています。

※1電子の移動や再結合に影響を与える構造的な不完全さ

※2シリコン結晶中で自由に動き回ることのできる電子で、添加する不純物量によって制御される

※32026年1月14日現在。三菱電機調べ

※4Silicon(シリコン)

※5Insulated Gate Bipolar Transistor(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)

※6Ultra Wide Band Gap(従来のSiやSiCよりも大きなバンドギャップを持つ半導体)