開発NOTE

永年築き上げてきたPON技術を
5G時代に活かす

永年築き上げてきたPON技術を5G時代に活かす

情報技術総合研究所 長沢 明子情報技術総合研究所 長沢 明子

モバイル端末等の普及に伴って、今後も継続的な移動通信トラヒックの増加が予測されており、より高速・大容量な通信が求められています。そのために1子局当たりがカバーするエリアを少なくし、その分高密度に多数配置する方式が検討されています。

これらを低コストで実現するためには、複数の子局を1本の光ファイバーで収容するPONシステムが適しています。すでに国内ではFTTHサービス向けにPONシステムが広く導入されているため、このシステムを5Gシステムでも活用することで導入コストを抑えられると考えられます。

当社は永年にわたってPON技術の開発を行ってきました。そこで培った技術を活かし、PONシステムを5Gシステムへ適用するための技術開発に取り組みました。

抽象化モデルの表現、それは新たなフィールドへのチャレンジでした。

光アクセスネットワークの通信資源を抽象的なモデルとして表現する上で、どのくらいのレベルまで抽象化するか、というのが難しいところです。抽象化しすぎてしまうと、ネットワーク管理者へ与えられる情報が少なくなり、サービスに求められる要件に柔軟に対応することが難しくなります。

また反対に抽象度を下げすぎてしまうと、情報量が多くなり、ネットワーク管理者が物理装置や接続構成の詳細な情報を扱う必要があるため管理が煩雑になり、スライスを容易に構築することが難しくなります。

本技術は5Gシステムで想定されている特徴的な性能要件を抽象化モデルに表現している点を特長としています。通信資源の情報をネットワーク管理者が扱いやすいモデルにして与えることで容易にスライスを構築することができると考えています。

手探り状態からのスタート。仲間と何度も議論し、試行錯誤を重ねました。

情報技術総合研究所 坂元 彩乃情報技術総合研究所 坂元 彩乃

仮想化技術は当社がこれまで取り組んだことのない技術だったため、手探り状態での技術開発となりました。先行技術を調査したり、勉強会に参加したりして知識を増やし、課題がどこにあるのか、どこに当社の強みを活かせるかなど、一からの開発だったことが苦労した点です。

また本開発で開発した技術を他の研究機関で開発した技術と組み合わせて、ひとつのシステムとして実現するための試作機の開発を行ったのですが、連携方法や実装方式の検討に苦労しました。何度も議論を重ね、試作を繰り返しながら開発を進め、国内外の学会に参加して有識者とも議論をしてきました。

今後も通信のチカラで、より安心・安全・快適な毎日を多くの人に届けるため、研究開発に邁進していきます。

光アクセスシステム