直流モータの小型効率化のための
高密度集中巻線工法
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モーターの中にある部品のお話ね。どこがすごいのかしら。。。
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この写真こそが、令和 2年度の全国発明表彰の「発明賞」を受賞した画期的な発明じゃ。これにより、小さくて効率の良いモーターを以前よりも簡単に製造できるようになったんじゃ。
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あの~、そもそもモーターって何ですか。。。 小学校のときに、電池をつないでモーターに付けたプロペラを回して、台車を動かす実験をしたときのモーターと同じようなものですか。
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そうじゃ。電気がモーターの回転となって、”動作”に変わるんじゃ。つまり“動作”がある電気製品には、モーターが使われているといってもいい。自動車にもたくさん使われているぞ。電動のドアミラーやパワーウィンドウがその一例じゃ。
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CDプレーヤー、ドライヤー、プリンター. . .これらにもモーターが使われているってことね。でもどうして、電気を流すとモーターは回転するのかしら。
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鉄の棒にコイル(銅線)を巻き付けて、そのコイルに電気を流すと、鉄の棒が磁石になることを知っておるか。
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それは中学校のときに理科の実験でやりました。「電磁石」ですよね。コイルをたくさん巻くほうが磁石の力が強くなるんですよね。
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そうじゃ。その電磁石を普通の磁石(永久磁石)で囲んで、電気を流したり切ったりすると、電磁石と永久磁石が反発したり、引きつけ合ったりして、電磁石がくるくる回るようになる。これがモーターの仕組みじゃ。
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ということは、このモーターの中でコイルを巻いた棒がくるくる回っているんですね。
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実際のモーターは、棒よりも回転しやすくするように、上から見ると「T」のような形をしたものが中心から6つの方向に延びていて、一見、このような”雪”の結晶”ような形のものが回っているんじゃ。
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へぇ~そうなんですか。。。ということは、その「T」の字の縦棒の部分に、コイルを巻き付けることになるんですね。でも「T」の字の横棒と隣の横棒との間隔が狭くて、巻きにくそう。。。
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従来はこの“雪の結晶”が一つの部品だったんで、確かにコイルを巻く作業は大変じゃった。今回の大発明で、「T」の部分を6つ組み合わせて、“雪の結晶”ができるようにしたんじゃ。
そして「T」の部分を個別に引き出すことで銅線を巻きやすくしたんじゃ。
巻き終わったら、真ん中に押し込む。6つの「T」にコイルを巻けば一丁あがりじゃ。
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これ考えた人、すご~い。普段、見ることのない部品の細かい部分でも環境貢献につながる開発がなされていることがよくわかりました。
直流モータの小型効率化のための高密度集中巻線工法を発明
近年、自動車に搭載されるモーターの数は、自動車の高機能化に伴い増加傾向にあり、その多くは直流モーターが採用されています。直流モーターを小型効率化するためには、回転子に巻くコイルを高密度化する必要がありますが、従来の製造方法では巻線に時間がかかり、量産が難しい点が課題となっていました。当社は、シャフト周辺部を重ねた状態で各磁極を外側に引き出せる分割型の鉄心構造を考案しました。この鉄心を用いれば、コイル線を途中で切断することなく、一旦磁極を引き出して簡単に高密度かつ高速にコイルを巻くことができます。そして、全ての磁極に対して巻線した後に、シャフトを圧入するだけで容易に回転子を一体化することができます(図 1)。
本発明により、従来の一体型の鉄心に比べて、巻線の速度を 10倍以上に高められ、2倍以上の高密度化を達成することができました。本技術は当社製の燃料ポンプに適用されており、車載機器の小型化(従来比 40%減)やモーターの効率向上に大きく貢献しています(図 2)。