高度水処理プロセス制御システム
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今回は下水処理のお話しですね。つまり。。私たちが使用して汚れた水を、再利用したり、川や海に戻すためにきれいにすることですね。
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そうじゃ。下水処理施設に入ってくる汚れた水は、いろいろな処理を経て、きれいな水に生まれ変わるのじゃが、その中でも重要な処理をしているのが「生物反応槽」じゃ。
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「生物反応槽」!? 汚れた水をきれいにすることと、生き物が何か関係するんですか?
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生物とは、微生物のことじゃ。微生物が汚れを食べて水をきれいにしてくれるんじゃ。こんなイメージじゃ。
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微生物が入った泥を入れて、空気を入れてかき回すんですね。空気なんて入れなくても微生物なんて生きていけそうな感じがするんですが。
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とんでもない!空気を入れないと微生物は死んでしまうぞ。国内の下水処理施設では、日本の年間消費量の約0.7%を占める約70億kWhの電力を使用しており、その中でもこの水槽に空気を入れるための送風機の消費電力量が全体の32%と最も多いんじゃ。
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下水処理施設で使用する電気が、汚れを食べてくれる微生物のために一番たくさん使われているとは。。。そこでAI(人工知能)の出番なわけですね。
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おぃ、おぃ。それは私に言わせてほしかったのぉ。
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それは、失礼しました!とはいえ、AIがどのように活用されるのか全然わかりません。。。
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送風機で生物反応槽に空気を入れるのは、金魚を飼っている水槽のようにいつも一定の空気を送っていればいいというものではなく、生物反応槽に入ってくる水の汚れや微生物の状況に応じて、空気の量を増やしたり減らしたりする必要があるんじゃ。その制御に、施設の監視制御システムに蓄積されてきたこれまでのデータとAIを活用するんじゃ。これにより、従来の水質を維持したままで、送風する空気の量を約10%削減できたんじゃ。
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その分、空気を送るのに必要な電気量を削減できるということですね。普段の生活では意識することのない下水処理の現場で、三菱電機のAIが活躍しているなんて、とてもすごいことですね。
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下水処理施設では、ベテラン操作員の運転ノウハウや、降雨データなどの様々なデータをAIで分析して、施設の最適な運転を支援するシステムの開発も進めておるぞ。普段、何気なく水が使えていることにもAIが関係しているということをもっと認識してほしいものじゃ。見ず(水)知らずではいかんぞ。
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博士、、、寒い!? 。
高度水処理プロセス制御システム
下水処理施設のプロセス制御での現状と課題
国内の下水処理施設では、日本の年間消費量の0.7%を占める約70億kWhの電力が消費されています。中でも、主ポンプから汚泥処理までの下水処理プロセスで、生物反応槽で有機物を分解する活性汚泥(微生物)に酸素を供給する、送風機の消費電力量が最も大きく、全体の約32%を占めます。生物反応槽では、下水に含まれる窒素を除去するため、アンモニア性窒素を硝酸に変換する硝化反応と、硝酸を窒素として大気へ放出する脱窒反応が行われています。窒素除去率とエネルギー消費にはトレードオフの関係があるため、目標とする処理水質を最小のエネルギー消費で実現する風量制御が求められています。
AIを活用した生物反応槽風量制御システム
図は、省エネルギーと水質向上の両立を実現する、AIを活用した生物反応槽風量制御システムです。このシステムは、生物反応槽の入り口と出口にそれぞれ設置された水質センサと、流入水質予測機能付きアンモニア制御を行うコントローラ、アンモニア制御目標値ガイダンスを行うガイダンス装置で構成されます。
流入水質予測機能付きアンモニア制御
従来のアンモニア制御は、処理水質である生物反応槽出口のアンモニア濃度が目標値と一致するよう送風量を制御するフィードバック(FB)制御が一般的です。さらに、近年では、FB制御と流入水質である生物反応槽入り口のアンモニア濃度の変動を補正するフィードフォワード(FF)制御を組み合わせたものが開発されています。しかし硝化反応は送風量に対する応答時間が長いため、生物反応槽入り口のアンモニア濃度変動が大きい場合には、FF制御による補正が間に合わず、FB制御の目標値に対する追従性が悪化する可能性があります。
そこで、当社は、生物反応槽入り口のアンモニア濃度の変動を予測したFF制御が行えるよう、AI技術“Maisart”を用いて、プラント監視制御システムに蓄積された過去のデータから、現在の状態に類似するデータ探索によって、生物反応槽入り口のアンモニア濃度を予測する機能を開発しました。これにより、生物反応槽入り口のアンモニア濃度が下降傾向の場合、早めに送風量を下げることによる消費エネルギーの削減や、上昇傾向の場合、早めに送風量を上げることによるFB制御の安定性向上が期待できます。