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#022

ビジュアル ハプティクス

画像 ビジュアル ハプティクス
こちらは、
遠隔で操作するロボットが物をつかむときの力の感覚をオペレータに色などの視覚情報で伝える技術じゃ。
ここが便利!
オペレータの装備が軽くなるので、負担を軽減できる上、遠隔ロボットが触る感覚を色で見ることにより、操作性が向上するぞ。
ここがスゴい!
オペレータの動きを学習して、部分的に自動で操作できるようになり、オペレータの作業負荷をさらに少なくすることができるようになるぞ。
博士

今回は、ロボットの「テレプレゼンス」のお話しじゃ。今後、この分野での事業やサービスがどんどん広まっていくことが期待されておるぞ。

研究生 エコちゃん

ロボットの「テレプレゼンス」って、オペレータの手の動きがネットワークを介して遠隔地にあるロボットにそのまま再現されて、あたかもその場にいるかのように作業ができるというものですよね。

博士

そうじゃ。従来は、遠隔地からは、ロボットが見ているもの(視覚)、ロボットが触っている感覚(触覚)、そして、どのくらいの強さで触っているか(力覚)が別々に送られてくる、というものじゃった。

画像 従来の方法

従来

画像 オペレータの装備。

オペレータの装備。
モータで動く。

研究生 エコちゃん

オペレータさん、動きにくそう。手が重そう。。。

博士

そのとおりじゃ。さらに設備が大がかりになる上に、どうしても「力覚」と「触覚」が、「視覚」から予測される感覚からずれてしまうので、違和感が大きく、オペレータの身体的・精神的負担が大きいことが課題じゃった。

研究生 エコちゃん

オペレータが快適に操作できるようにならないと、なかなか普及するのは難しいんじゃないですか。

博士

そうじゃ。そこで三菱電機が開発したのが、ビジュアル ハプティクス (Visual Haptics)じゃ。”Haptics”とは「触覚」のことじゃが、「力覚」も含め、ロボットが触っている感覚を目で見てわかるようにしたんじゃ。

画像 ビジュアル ハプティクス

ビジュアル ハプティクス

研究生 エコちゃん

触った感覚が見えるってどんな感じかしら。

博士

遠隔地のロボットが触っている指の部分がオペレータには光って見える。さらに触る強さによって光の強さが変わるんじゃ。こんな感じじゃ。

研究生 エコちゃん

わぁ~、光ってる~。遠隔地で触っているっていうことが、こんな風に見えて伝わるって、なんか不思議な感じ。。。

博士

遠隔地の「触覚」と「力覚」が「視覚」として目に伝わることにより、オペレータの身体的・精神的なストレスを軽減するということが、オペレータの脳波を分析した結果でも明らかになっておるのじゃ。操作のしやすさ、優しく物をつかめるかどうかという点でも、ビジュアル ハプティクスの効果は検証済じゃ。

研究生 エコちゃん

優しく物をつかむって、「生卵」みたいなデリケートな物もつかめちゃいますか?

博士

もちろん! ポテトチップス、シュークリーム...なんでもござれじゃ。今後は、オペレータが同じ動作を繰り返すうちに、その動作を学習して、自動化させることで効率化が進み、一人のオペレータが複数の遠隔ロボットを操作するということも可能になる予定じゃ。

研究生 エコちゃん

これからは、ビジュアル ハプティクスのおかげで、いろいろな場所や、いろいろな分野で、テレプレゼンスが活躍しそうですね。わくわくしますね~。

博士

この技術の開発を進めながら、テレプレゼンスの適用先や、サービスの事業化も同時に検討を進めておる。ゆくゆくは世界中で使われるようになり、例えば、人口減少が進む先進国の仕事を、途上国で行うということも可能になれば、先進国への出稼ぎで残された家族が寂しい思いをすることもなくなることになるぞ。

研究生 エコちゃん

すご~い! スケールの大きな社会課題の解決にビジュアル ハプティクスが役立っちゃうんですね。

博士

仕事場所への移動にかかる時間やそのためのエネルギー消費の削減にも貢献することになるのじゃ。あとはオペレータがちゃんと時間どおりに仕事を始めるだけじゃ。オペレータが遅れ~た、では済まんぞ。

研究生 エコちゃん

博士、、、寒い!? 。

人×機械の遠隔機械操作システム

遠隔にある観測施設の保守点検、頻発する自然災害対応、不発弾・即席爆弾処理、新型コロナウィルス除菌作業等の身体的・精神的な負担の高い作業に対して、遠隔機械操作システム技術は人の安全と安心を実現します。大型望遠鏡事業で培った機構設計・駆動制御技術を適用した人型遠隔操作ロボットは、安定した把持を可能にするセルフロック機能を搭載した多指ハンドと、ハイパワー出力を可能にする直動リンク機構を持っています。オペレータの操作負荷を最小限にするシンプルかつ直感的な操作インターフェースは、遠隔機械の力触覚情報を視覚的にフィードバックする視覚的力触覚技術を適用しています。視覚的力触覚フィードバックが脳内情報流の45%低減効果、及び視覚以外のモーダル(音と振動)フィードバックに対する優位性をもつことを脳波信号から確認しました。これらの技術を統合した小型遠隔操作ロボットは、6kgの硬く重いアルミニウム部材から壊れやすい生卵やポテトチップスまでをシンプルな操作インターフェースでありながら直感的に把持・運搬可能です。

画像 人×機械の遠隔機械操作システム

人×機械の遠隔融合システムが実現する、
“どこにいても、いつでも、“手”を取り合える共生の世界”(イメージ)

TMT(Thirty Meter Telescope)ロボット開発で培った要素技術群を適用したハイパワーな人型遠隔操作ロボット、及び視覚的力触覚を搭載したシンプルかつ直感的な捜査インターフェースの統合によって、人の身体的・精神的な負荷を解放し、さらに”拡張”への進化をめざします。遠隔機械操作システムは人の安心と安全、慣れ親しんだ地域で家族や友人との生活を維持できる遠隔労働を可能にし、どこにいて、いつでも”手”を取り合える共生社会の実現を目指して開発を推進してまいります。

◆「ビジュアル ハプティクス」をこちらでも紹介しています。

人の認知特性を活用した進化型遠隔操作サービスプラットフォーム

テレプレゼンスロボットによる新たな社会貢献の可能性

人×機械の遠隔機械操作システム

取材協力
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三菱電機株式会社
先端技術総合研究所 メカトロニクス技術部
春名 正樹

研究生 エコちゃん

「春名さん、ビジュアル ハプティクスの開発に携わって印象に残ったことを一言お願いします。」

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この開発の起点は途上国での活動を通して、シンプルな生活の中で家族や友人と過ごせる時間を幸せだという方との出会いでした。住み慣れた土地で、住みたい人と生活をしながら仕事が出来るようになればいいなと思い遠隔地から仕事ができる技術開発をスタートしました。そのため、誰もが使えるような直感的な操作性と、システムがシンプルであることが重要でした。機械やロボットだけに目を向けるのではなく、それを操作する人の理解を深めることで、このアイデアにたどり着きました。人を理解することで人に役立つ遠隔機械操作システムを早期に実現し、豊かな時間を多くの人が享受できる世界に貢献していきたいです。

◆「途上国での活動」をこちらでも紹介しています。

BOP層の暮らしに向けた研究開発の取組

small world project (動画)