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#035

断層イメージング技術

画像 断層イメージング技術
こちらは、
モノの中身を見ることができる新しい技術じゃ。
ここが便利!
セキュリティーゲートや、生産ラインのベルトコンベアで流れてくる製品の異物検査などいろいろな現場での活用が期待できるぞ。
ここがスゴい!
細かく鮮明な画像を数ミリメートル単位の任意の深さで見ることができるぞ。人体への影響も小さく安心じゃ。
研究生 エコちゃん

「断層イメージング技術」。。。何だか難しそうな感じですが、“イメージング(可視化)”ということは、何かを見るための技術ですか。

博士

モノの中身を見るための新しい技術じゃ。動いているモノの中を見ることができるということが大きなポイントじゃ。

研究生 エコちゃん

中身を見るっていうと、空港やスタジアムのようなセキュリティが厳重な場所での手荷物検査が思い浮かびます。

博士

そうじゃ。最近は公共の空間における安心や安全への関心が高まってきており、不審な所持品などを調べるスキャン装置の導入が進んでおる。しかしこれらに多く用いられている X 線検査装置は、主に手荷物検査などに用途が限定されておる。

研究生 エコちゃん

確かに上着のポケットに不審なものがないかを調べるために、手荷物検査とは別に、ボディチェックをされたりしますもんね。

画像 ボディチェック

博士

ボディチェックを自動でやってくれる設備もあるが、カプセルのようなものに入って腕を上げたりして大掛かりじゃ。それがこの新技術を使えば、セキュリティゲートを通過するだけじゃ。手荷物もポケットの中も不審な物をすぐに発見できる。

画像 セキュリティゲート

研究生 エコちゃん

すご~い😲! チェックのための手間も人手も削減できますね。あの~、例えば、スーツケースの中でいろいろなものがゴチャゴチャに入っていても、不審物をちゃんと見つけられるんですか?

博士

バッチリ、OKじゃ。そこが「断層イメージング技術」と呼んでいる所以(ゆえん)じゃ。例えば、外からは見えんが、不審物が重なっていても、手前から奥まで、任意の深さで様子を見ることができるぞ。画像も鮮明!。こんな感じじゃ。

画像 断層イメージング技術の詳細

音声なし。再生時間:28秒

研究生 エコちゃん

あら~! こんなにクッキリ見えるのですね。これなら安心です。でもここまで見えるってことは、何か体によくない強烈な電波を使っていたりしていないか心配です。。。😨

博士

その点もご安心あれ。本技術では、体への影響が小さい「300GHz帯テラヘルツ波」という電波を使っており、安心・安全な上に、数ミリメートルという精細な解像度の画像を実現しておるんじゃ。

研究生 エコちゃん

そこまでスゴイ技術であるのなら、セキュリティゲート以外にもいろいろ用途がありそうですね。

博士

もちろんじゃ。例えば、冒頭のイラストじゃ。このようなベルトコンベアの上を流れている製品の非破壊検査(=壊さずに中身を検査すること)での活用も期待できるぞ。カップ麺の容器の中にボルトが入っていると、こんな感じで見えるぞ。

画像 カップ麺の容器の中のボルトを検出しているテラヘルツ画像

研究生 エコちゃん

これまたハッキリ、見えますね~。製品検査の効率化がすごく進むのではないでしょうか。

博士

そうじゃ。製造現場では人手不足を背景に、生産や検査ラインの自動化や省力化のニーズが高まっておる。このカップ麺のように食品工場で容器の内部を検査する際は、今は抽出したサンプル品の蓋を開けて人手で調べる必要があるんじゃが、この技術が普及すればそのようなことをしなくても済む。

研究生 エコちゃん

この「断層イメージング技術」、もうどこかで使われているんですか? 使われている製品、見た~い。

博士

そうじゃの~。今は実現性を検証している段階で、今後もいろいろと開発が必要じゃが、この技術が搭載された製品の登場を楽しみに待とうではないか。このイメージング技術、もたらす効果はアメージング (“amazing” =驚くほど素晴らしい)じゃ。

研究生 エコちゃん

博士、、、寒い!? 😊。

隠れたものをミリメートル精度で可視化する断層イメージング技術を開発

 三菱電機株式会社は、300GHz 帯のテラヘルツ波を用いて、一方向から一回の照射により任意の深さで対象物の断層イメージングを行う業界初※1の技術を開発しました。生体への影響が小さく、移動する対象物も数ミリメートルの解像度で撮像します。
 近年、空港や駅、スタジアムなど公共空間における安心や安全への関心が高まり、セキュリティー対策の一つとして不審な所持品などを調べるスキャン装置の導入が進んでいます。しかしこれらに多く用いられている X 線検査装置は、主に手荷物検査などに用途が限定されています。また、ミリ波を用いたボディースキャン装置は、人物が静止した状態で周囲 180 度の測定が必要なことから、装置が大型化する傾向がありました。そのため、これらスキャン装置は空港以外の公共空間への導入はあまり進んでいませんでした。
 この他、製造現場では人手不足を背景に、生産や検査ラインの自動化・省力化のニーズが高まっています。しかし従来の光学カメラや赤外線カメラを用いた製品検査は、外観検査に用途が限られており、例えば、食品工場で容器の内部を検査する際は、抽出したサンプル品の蓋を開けて人手で調べる必要がありました。
 今回、当社が開発した技術は、生体への影響が小さいテラヘルツ波を用い、一方向から一回の照射で対象物の断層イメージングを行うバーチャルフォーカスイメージング技術と複数のイメージを合成し誤検出を低減するマルチモードビームフォーミング技術を組み合わせた技術です。移動する物体の撮像が可能で、ウォークスルー型のセキュリティーゲートや、ベルトコンベアなどで流れてくる生産ライン上での非破壊検査にも適用可能です。また、スキャン装置の小型化が可能で、さまざまな場所への導入にも貢献します。
 今後も当社は、実用化に向けた研究開発や技術開発を進めて、さまざまな場所での安全で安心な社会の実現に貢献していきます。

従来技術との比較

画像 従来技術との比較した図

今後の予定・将来展望

 今回開発した技術をウォークスルー型のセキュリティーゲートや、ベルトコンベアなどで流れてくる生産ライン上での非破壊検査など、さまざまな場所での実用化に向けた製品開発を進めて、早期の事業化とサービスの展開を目指します。

この技術のくわしい情報はこちらから

テラヘルツ波を用いた断層イメージング技術
取材協力
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三菱電機株式会社
情報技術総合研究所
平 明徳

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三菱電機株式会社
情報技術総合研究所
石岡 和明

研究生 エコちゃん

「平さん、石岡さん、断層イメージング技術の開発に携わって印象に残ったことを一言お願いします。」

写真
写真

電波を使って荷物の中身や、製品の中のキズが見えると便利そうだと考えて開発を始めました。最初に実験室で画像(イメージ)ができたときには、予想以上に高精細であり、開発者一同、皆で驚きました。私たちは無線通信が専門で、スマホの研究をしています。そこでは基地局からスマホに直接来る電波と、ビルに反射し距離が遠くなり少し到着が遅れる電波を分離して、きれいな信号に戻す技術が使われています。この技術をイメージングに適用すると、好きな深さのイメージだけを分離して取り出せるのではと考えて、今回の断層イメージングが実現しました。一つの技術があちこちに応用できることを改めて実感しました。