先進レーダ衛星「だいち4号」
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人工衛星ですね。真ん中にある大きな板を地球の方に向けて飛んでいますが、何のための人工衛星ですか。
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これは「だいち4号」といって、従来機の「だいち2号」の後継機じゃ。2号同様にこの大きな板のようなものは「レーダ」*で、電波を発信して、地表から返ってきた電波の情報から地表の様子を把握、つまり「観測」するんじゃ。
* 電波を発信することにより、対象物の方向や距離を測る装置
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電波で観測するって、いまひとつピンとこないんですけど、ちゃんと物を見ることができるんですか。真っ暗な夜の時間帯でも見えるのでしょうか。
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人間の目で物を見るような「光学観測」とは異なり、「電波観測」は昼夜関係ナシじゃ。さらに上空に雲があっても、だいちから発信された電波は地面まで届いて、ちゃんとだいちに返ってくる。こんな感じで「観測」できるのじゃ。
電波観測
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すご~い😊、電波でこんなにクッキリ観測できるんですね。だいちもひまわりのように赤道上空から観測しているのですか。「ひまわり」はこちら
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地球全体を電波を使って観測するため、常に赤道上空にいるわけにはいかないんじゃ。だいちは上空約628kmの高さのところを秒速約7.5kmで飛行して、14日間で地球を207周して同じ場所の上空に戻ってくることになっておる。
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その速さでちゃんと観測して、そのデータを地上に送ってくるんですよね。どのくらいの範囲(広さ)の観測ができるんですか。
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だいちは、観測したい範囲とどのくらい細かく観測したいかによって、観測するモードが3つあり、目的に応じて選択できるのじゃ。こんな感じじゃ。
音声なし。再生時間:44秒
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だいち2号と4号の比較映像、わかりやすいです。4号になって観測範囲が大きく広がりましたね。だいち2号から引き継いでだいち4号が取り組んでいくミッションにはどのようなものがあるのですか。
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まずは、地殻変動の観測じゃ。観測した日時の異なる2つのデータを比べて、その違いから地表がどれだけ動いたかを計測することで、火山活動による微小な変化をとらえて事前の避難活動につなげることができるんじゃ。
「だいち2号」が観測した御嶽山噴火前後カラー合成画像
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すばらしい! 日本は火山が多いので、日々宇宙から観測してくれると安心です。
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続いて災害状況の把握も重要なミッションじゃ。夜間や悪天候下でも観測できるので、豪雨被害の迅速な把握にも役立つぞ。観測画像から浸水箇所を自動検出して、各防災機関、自治体による復旧活動や被害調査に役立てる取組みも進められているぞ。
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最近は以前に比べ、豪雨による被害が多くなってきているので、だいちからの情報が役立ちますね。
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さらに森林保全や農業といった分野でも活躍しておるぞ。だいちが観測した世界の森林分布やその変化、水田の作付面積等のデータが、森林に蓄積された炭素量の推定や、東南アジアの国を中心とした農業政策の改善等に役立っているのじゃ。
「だいち2号」が観測したブラジル熱帯雨林の様子
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だいちから観測された画像をもとに森林や農業に関係する深刻な課題への対策が進むといいですね。
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だいちからの観測では寒冷海域の流氷をとらえることもできる。流氷は船舶航行の障害物となり、船体の損傷の原因にもなるやっかい物じゃ。だいちからの流氷の情報は、海難事故の防止にも役立っているのじゃ。
「だいち2号」が観測した流氷
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あらためて、だいちってすご~い😊! 宇宙から地球を観測することで、災害対策や気候変動対策に地球規模で貢献しているんですね。
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そうじゃ。だいち2号からレーダの性能面でパワーアップしただいち4号が活躍の場をさらに広げていくことが期待されておる。三菱電機はレーダの高い技術を保有しており、優れたレーダを多く開発してきた。だいち4号に搭載されたレーダはその代表例だ。
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博士、、、寒い!? 😊
先進レーダ衛星「だいち4号」
だいち4号は、三菱電機が宇宙航空研究開発機構から受注し、2016年度にだいち4号の開発を開始し、鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)で全体の設計・製造・試験を担当してきました。広域観測と高分解能を両立させるために不可欠である「PALSAR-3*1」も、三菱電機が開発を担当しました。
PALSAR-3は、現在運用中の陸域観測技術衛星2号「だいち2号」に搭載されたレーダと同等の高分解能を維持しつつ、観測幅を拡大したもので、高度約628kmから全地球規模での高分解能観測を行います。だいち4号による広域の地殻・地盤変動の観測情報は、平時・災害時における地殻・地盤変動の監視、火山活動や地盤沈下、地滑り等の異変の早期発見、森林資源の管理等に活用されます。
1.新方式・新技術を採用した PALSAR-3 を開発、高分解能・広域観測を実現
- 世界初*2の帯域分割方式*3採用による高分解能化を実現
- だいち 2 号の優れた空間分解能(3m)を維持したまま、世界で初めて*2レーダ衛星にデジタルビームフォーミング技術*4を採用し、観測幅を世界トップレベルかつだいち2号の4倍にあたる200km まで拡大
- 1回の観測で取得できる画像の観測幅が広がるため、広域災害発生時の迅速な情報収集に貢献
- だいち2号でも採用・軌道上実証された世界トップレベルの高出力窒化ガリウム(GaN)増幅器(当社開発)によるレーダの出力向上で、観測幅を広げても高画質を維持
2.観測幅の拡大により日本全域での観測の高頻度化を実現、防災・減災に貢献
- 観測幅がだいち2号の4倍に拡大したことにより、日本全域において、同一地点の観測頻度がだいち2号での年4回からだいち4号では年20回の5倍に向上
- 災害発生時には、通常観測から緊急観測に切り替えることで、被災地の状況を迅速に把握。観測が高頻度化されることで得られる災害発生直前のデータと緊急観測のデータを比較し、変化を抽出・分析することで、より正確で迅速な被災状況の把握に貢献
- 平時においても地盤沈下や火山活動などの地盤・地殻変動監視やインフラの変位監視に活用され、高頻度観測が日本全域における多様な異変の早期発見に寄与
*1 電波を地球の表面に照射し、反射波の受信により地表面を観測するレーダ。PALSAR-3は、Phased Array type L-band Synthetic Aperture Radar-3の略称。だいち4号に搭載
*2 2024年8月6日時点、当社調べ。実用衛星として
*3 異なる周波数の信号を異なるアンテナから送信し、受信時に信号を合成する技術
*4 オンボードでの高速演算により、アンテナのビーム指向方向を任意に生成する技術
「だいち4号」による初観測画像 (2024年7月)
諸元